キッチン/キッチン選びの基礎知識

ガスコンロの規制が変わります!(2ページ目)

ガスコンロによる住宅火災を防止する目的で、2008年10月から規制が強化されますが・・・。

執筆者:黒田 秀雄

2008年10月から
全口安全センサー付きガスコンロ以外は
製造と販売が禁止されます!!

住宅火災の主原因をなくすために、安全なガスコンロをメーカーが提供することには全く異論はないが、本当に「全口に安全センサー」は必要なのだろうか?そして全口にセンサーがつけば、本当に火災事故を防げるのだろうか?
250度でセンサーが働くために、調理できないメニューもいろいろ考えられるが、ハイカット温調やセンサー解除ボタンの利用によって、その問題も解決するという。しかし家庭料理を調理中に、あちらこちらのボタンを間違いなく操作しながらタイミングのいい料理ができるのだろうか?

(東京ガスエンジニアリング・カタログより)
東京ガスエンジニアリングでは、フランス・ロジエール社のガスレンジの輸入販売をおこなってきたが、当然外国メーカーは日本のこんな規制に対応しようとするところは皆無に等しい。


ユーザーの使い方に問題があると思われる、調理中に火元から離れたり、天ぷらを揚げながら電話に夢中になるということを、ガス機器側がすべて安全装置で解決することは、2~3万円というコスト高につながることを含めて、本当にユーザーの求めていることなんだろうか?そして肝心なことはこの安全センサーの信頼度はそんなに高いものなんだろうか?
ここ数年メーカーに対する信頼性に疑問を持つ消費者が増えているなか、「調理油温度過昇防止センサー」が生まれて18年が経つそうだが、今回推奨されている安全センサーが長期間の加熱に耐えるのに絶対的な信頼性を持っていると考えるのは安易すぎないだろうか?

(ツナシマ商事・カタログより)
戦後日本のキッチンにガスレンジを教えてくれたのが、アメリカMagicChefやTappanのガス機器だ。MagicChefも今回の規制に対応できるかツナシマ商事では検討中だそうだ。

 

ここ数年、キッチン熱源をガスにするのか電気にするかが話題となっているが、ガスのメリットはなんといっても裸火で様々な調理ができ、子供たちに裸火の怖さと楽しさを教える道具であることだ。有史以来人類は裸火を使いこなすことで文明を築いてきたのである。一方ガスのデメリットは新鮮空気の給気と、燃焼ガスの排気とが絶対に必要なことである。住宅火災を未然に防ぐ安全装置も必要だが、もっと必要なのはこのデメリットを解決する技術開発ではないだろうか?

任意安全装置の5番目には「鍋なし検知装置」という鍋をのせていないと点火できない安全装置があるが、ガスコンロの調理は必ずしも鍋をのせて加熱するだけでなく、「炙る(あぶる)」という調理法もある。こんな加熱をしたい時は、やはりセンサー解除をするのだろうか?次から次へと疑問の湧き出る規制である。

法律が施行されれば、このような規制を逃れようとする動きも出てくるだろう。今でも東京ガスエンジニアリングのように家庭用のキッチンに業務用コンロを使う例が見られ、安全面から見ても大きな問題だと指摘してきたが、今回の規制が当然のことながら業務用コンロにはないところにも大きな問題があることは明白である。


同じく、ツナシマ商事の輸入するアメリカViking社のハイエンドガスクッカー。このデザインのままセンサーを取付けると、ラインのゴトクに当ってしまう。(ヤマギワ・リビナ店で撮影)

もっと大きな問題は、今までキッチンデザインの先進化に役立ってきた「安全センサーの付いていない輸入ガス機器」の販売が2008年10月以降全面的に禁止されてしまうことにある。戦後進駐軍の住宅で使われてきたアメリカ製のガスレンジが、今のガス機器メーカーの基本となっていることを、もう一度あらためて見直してみる必要はないだろうか。


Mieleのシステムクッカーのハイカロリーバーナーは、このままではセンサーの取付は難しい。(ヤマギワ・リビナ店で撮影)


AEG・Electroluxのフロントラインシリーズも、このデザインのゴトクではセンサーの取付は難しい。(AEGカタログ写真より)

思いつくだけでも、ここに掲載したようにアメリカのMagic Chef、Tappan、VikingやドイツのAEG、Miele、Gaggenau、フランスのRosieres、イタリアのILVE、ALPES INOX、スウェーデンのASKOなどの魅力的なガスレンジの数々が世界各地から輸入されてきたが、すべてこれらのメーカーのガスコンロやガスレンジは展示も販売も使用も禁止されることになる訳だ。海外メーカーの基本スタンスは、日本のそのような規制に対応することはなく、非関税障壁のひとつとしてとらえることになるだろう。まさしく「ガスコンロの鎖国時代」が到来することになる。
長期間のプロジェクトとなる住宅設計の現場では、既にこの規制に対応するために、輸入ガス機器の採用を見送る計画変更が進みつつある。


Gaggenauのシステムクッカー のハイカロリーバーナーにも、センサーの取付は難しい。(ヤマギワ・リビナ店で撮影)

日本独自のこのような規制が、これからの世界の中で本当に通用するのだろうか?政府やガス機器メーカーは、安全のためと大上段に振りかぶっているけれど、こんな規制を強めて、ガス機器のデザインや機能が縛られてしまうなら、いっそのことIHクッキングヒーターのほうが安全性が高いし、デザイン的にもスマートに納まることから、今以上にガス機器市場のマーケットを自ら縮めててしまうことに気づかないのだろうか?
一般ユーザーの立場に立って、この規制内容を見ると、キッチンづくりのまず最初に考えるべきガス加熱調理機器の選択肢が、大幅に少なくなることに気づくだろう。端的にいえば、規制をクリアしたリンナイ、ハーマン、パロマの3社のガスコンロから限られた商品を選ぶしか余地が無くなる訳だ。

様々なライフスタイルに合わせた使いやすく、快適なキッチンづくりは、これからますますそのニーズが高まってくる。そのニーズをこの国産3社の製品からしか選べないというのでは、本末転倒と言わざるを得ない。「ガスコンロの鎖国時代」を、本当に喜ぶのは一体誰なんだろうか?
それ以上に、東京ガスでは2008年2月までにすべてのガスコンロを安全センサー付に切り替えるというが、それまでに販売するガスコンロはどう扱うのだろうか?そして日本国内で今まで製造販売され、使われてきた大量のガスコンロはどう扱うのだろうか?


(C)Nov. 2007 Copyright HIDEWO KURODA KITCHEN SYSTEM LABO.INC.

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