大切な人の死による悲しみを乗り越えるまで
私達が生きている上でどうしても避け難い悲しい事として大切な人を亡くしてしまう事があります。悲しい気持ちで打ちのめされてしまっても、やがて、私達はその人なしの新しい生活へ適応していく必要があります。今回は、大切な人を失った後、私達の心は通常どのように立ち直っていき、また、その過程で生じ得る問題や回復への重要なポイントをお話したいと思います。
<目次>
喪失体験からの回復過程
私達の心は通常以下のように、喪失後のショック状態、故人の事が頭から離れ難い時期を経て、回復期へと向かっていきます。ショック期
- 涙やため息が止まらない
- 喪失を認められない
- 感情が麻痺する
- 喉が締め付けられるような感覚
- 現実感の喪失
- 食欲が湧かない
- 何をしても楽しくない
- 内にこもってしまう
- 故人の事ばかり考える
- 気分は沈み、怒りが出やすくなる
- 不眠
- 体が弱く感じられ、疲れ易い
- 故人の夢を見る
- 罪の意識を感じる
- 辛さを覚えずに過去の事を思いめぐらす事ができる
- 物事への興味が戻ってくる
- 新しい人間関係を作れる
喪失体験後の回復過程で生じ得る問題点
喪失体験から回復するには半年~1年はかかりますが、通常1~2ヶ月後、日常生活は機能し始めます。その間、気持ちの落込み、興味が湧かないなどの抑うつ症状、亡くなった人の姿や声の幻覚、また、その人が亡くなった事をなかなか事実として認識できない事は比較的よくあり、正常範囲と見なせます。しかし、2ヶ月以上も日常生活が機能しない状態が続く時や以下のような時は回復過程が正常でない可能性があります。- 亡くなった人の声が複雑な会話を伴う
- その人が生きていると固く信じる
- 自分も同じ原因でまもなく死ぬと信じる
- 死にたい気持ちが生じる
自分の正直な感情を表出することは回復に必須
喪失体験からの回復では悲しみ、辛さ、怒りといった自分の正直な感情を表出し、心に葛藤が残らないようにする事が重要です。喪失体験からの回復の為の心理療法においても、自分の感情や故人に対する正直な気持ちを話す事が勧められています。私達の文化では周りの人への気配りを重んじ、なるだけ本音は出さないで置く事が美徳とされていますが、喪失体験からの回復にはマイナスです。喪失の悲しみを心に蓋をしたまま外に出さないでいると、故人に対する本当の思いや感情が見えないまま喪失を引きずり易くなります。また、孤立や孤独感を感じ易い喪失体験後はできるだけ他人とコンタクトを取るのが望ましく、身近に自分を支えてくれる人は確保しておきたいものです。【関連記事】