竹倉鉱泉 |
遥か昔(86年)に入浴して、赤い湯であった記憶と鄙びた温泉地であったのは覚えているのだが、ほとんど記憶が薄れていたので再訪した。その頃は美坂さんの「山のいでゆ行脚」(84年出版)が出た頃で、わたしも単なる温泉旅行者の一人であった。
現在では4050温泉地を越えたが、ここは358温泉地目の入浴と記録されている。3軒の宿でどこにしようか非常に迷ったが一番手前の水口荘にした。以前は伯日荘で入浴した。
薄い褐色濁りの湯(オレンジ色)で、少渋味、無臭と観察した。14.4度の単純鉄鉱泉でFeは21.6mgである。炭酸鉄鉱泉系ではなく緑礬泉系であるのが珍しい。ほかの成分はSO4 110mg CO2 41.8mgなどである。循環が残念である。
源泉井戸は浴室の隣にあり深さ2mほどの水位で自噴している。今回はポンプ稼動後で4mほどの井戸の底が見えていた。
▼箱根で正統な硫黄泉 きのくにや
三島からの箱根の登りは尾根道で明るく雄大である。箱根の坂を登り芦ノ湖のほとりを過ぎ、国道1号線の標高最高地点の脇が、芦の湯である。
良好な硫黄泉が自噴し素晴らしい温泉地である。松坂屋ばかり行って、きのくに屋は未湯になっているので今回行ってみた。分析表は2種類発見できたが、5本の源泉があるようだ。そのほかに高温の町有源泉も使っている。
離れにある正徳の湯は昔の温泉を再現した木造の浴槽で半地下になっていて木枠の浴槽が2連の素晴らしい風情である。37.9度の単純硫黄泉と町有源泉を混合して使っている。総計833mgであるが独自源泉のHS 11.9mg H2S 33.8mgと総硫黄45.7mgの濃厚な硫黄によって白濁している。
きのくにや 正徳の湯 |
屋外に無量の湯があり、ここにはこの37.9度の源泉が100%入れられていた。さすがに硫黄臭が多く、味覚も弱い苦味の中にまったりとしたたまご味が感じられ濃度を感知できた。別棟に枯淡の湯という小さな浴室もあるが硫黄分は少ないので町有源泉が多いのであろう。薄く白濁しているのみであった。
宿の母屋の浴室には34.7度の総計627mgの源泉が使われ、神遊風呂という露天の甕に加熱していない源泉が掛け流されている。母屋ではここが一番良い。HS21.2mg H2S 6.0mgで加熱前は透明である。内湯は少加熱して白濁しているが、露天風呂は白湯と思われるほど個性がなく透明、無味、無臭である。違う源泉なのか、または循環のために硫黄分が抜けたためであろうか?
▼ 宮ノ下温泉のすぐ隣、底倉温泉 函嶺
函嶺 露天風呂 |
底倉温泉は以前つたやに入浴したのみであったが、函嶺の古い医院のような洋館の外観の写真を見てそこに行きたいと思っていた。
太閤の岩風呂のある、小涌谷方面からの渓流に沿って位置した温泉で、谷が深く、下流の堂ヶ島の深く切れこんでいる谷の景観が絶景になっている。
宮ノ下温泉などと同じく、遥か対岸に明星ヶ岳の山腹が見える雄大な景色もあり、繊細な渓谷の流れと両方眺められる。
浴室は別棟の露天風呂にある施設で大量に掛け流しされている。総計1050mgの弱食塩泉で72.4度の清澄な湯である、透明、無味、微湯の香と観察した。掛け流しの量が多くどんどん溢れている。弱いすべすべもあり満足できた。