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過去最低の出生率“0.72”…少子化が進む韓国で今、「結婚しない」「出産しない」若者が増えているワケ(2ページ目)

今、韓国では結婚に対する意識が大きく変化している。あえて「非婚」「非出産」を選ぶ若者が増加しているのだ。韓国で行われた社会調査の結果とともに、若者の結婚感の変化を紹介する。

松田 カノン

執筆者:松田 カノン

韓国ガイド

お金がなくてはできない結婚

「お金がなくては結婚できない」事情がある……

「お金がなくては結婚できない」事情がある……

「お金がなくても結婚はできるじゃないか」という言い分は韓国ではあまり通用しない。

そもそも新婚生活に必須の新居を構えるのが大変だ。韓国の不動産価格の高騰ぶりはすさまじく、結婚適齢期の若者が両親の金銭的援助なしで、自力で新居を用意することはほぼ不可能なレベルだ。新居を用意するために借金することは珍しいことではない。
 
また、結婚するにあたり、新郎側が家を準備し、新婦側が家財道具を準備するという慣習がある。それゆえに新居を構えることに対する男性の負担は否応なく大きくなる。

それなら新婦側は新郎側よりは楽なのか、と思われるかもしれないが、そうはならない。結婚準備のために支払われる金額の差があまりに大きくなると、両家がもめて、結婚が破談になるというケースもあるし、その後の結婚生活に少なからず影響を与えることにもなる。
 
結婚準備、結婚生活にかかる費用、家事負担まで、全てを折半する「半々結婚」というスタイルも生まれた。結婚生活につきものの、あらゆる問題を解決すべく実践される結婚生活の在り方ではあるが、例えば、共働き夫婦の家事分担や子どもの教育費など、折半の線引きは難しく、「そこまでして結婚する意味は……?」という意見が少なくないことも事実である。
 

非婚、非出産という選択肢

先ほど触れた「結婚はしないと考える理由」の2番目に多かったのは、「結婚の必要性を感じない」であり、これは女性が23.7%、男性が13.3%だった。女性の経済的自立はもちろん、結婚に伴い発生するしがらみ、金銭的負担など、さまざまな理由が考えらえれるが、「結婚」が、より良い人生を実現するための選択肢と捉えない若者が増えていることが分かる。
 
さらに同調査内で、53.5%が「結婚後子どもを持つ必要なし」と回答している。

結婚したら子どもを持つのが当たり前という固定観念に縛られなくなったことや、自分の生活をより重視する若者が増加傾向にあることなども理由にあげられるが、 厳しい受験社会の韓国では、子どもの私教育にとにかくお金がかかる。そういった社会背景を考えたとき、子どもを持つことに慎重にならざるを得ない。

政府がいくら少子化対策で金銭的援助の政策を打ち出しても、良い大学に入り、一流企業に就職することが最大の幸せと考える国民の価値観にもなんらかの変化がない限り、現状打破は難しいかもしれない。
 
既婚で子育てをしている30~40代の韓国人女性たちと会うと、「非婚」「非出産」という生き方がしばしば話題に上がる。私たちが「結婚」と「出産」を選択したあの頃、もちろんそれによって直面する困難が存在することは予想しながらも、「私なら乗り越えられる」と信じていた慣習や社会構造。

しかし、それらの壁は予想以上に高く、「あれ? こんなはずじゃなかったのに」という気持ちにさせられることは少なくなかった。今日まで生きてきた日々を振り返ったとき、「非婚」や「非出産」という選択をする若者の事情は理解できるし、そういう結論にたどり着くことはなんら不自然なことではないように思える。 彼女たちとの会話は自ずとそこに落ち着く。

「社会調査から見る青年の意識変化(2023)」の「非婚・非同棲に同意する」という項目では、10年前61.8%だったのが、2023年には80.9%に。「非婚・非出産に同意する」の項目では、10年前29.8%だったのが、2023年には39.6%に上昇している。

今韓国は、「結婚」や「出産」という形にこだわらない、多様な在り方・価値観を内包する社会になりつつある。
 
参考
※1:調査対象は小学5年生~高校3年生
※2:調査対象は19~34歳

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