男のこだわりグッズ

紙にこだわるコクヨが挑む高級筆記具「WPシリーズ」!かつてない書き味とインクの“誕生秘話”を聞いた(2ページ目)

コクヨがMakuakeでの予約販売を通して8月下旬にお届け、一般販売も予定されている「WPシリーズ」は、樹脂製チップを搭載した「ファインライター」と、ゲルインクより粘度が低い水性染料インクを使った「ローラーボール」の2種類がラインアップされています。どちらも一般的なボールペンやサインペンとは少し違った個性を持つ製品です。その魅力と開発経緯をコクヨさんにお聞きしてきました。

納富 廉邦

執筆者:納富 廉邦

男のこだわりグッズガイド

スラスラ書けてヌルヌル感が味わえる「ローラーボール」

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コクヨ「WPシリーズ ローラーボール」4400円(税込)。軸色は画像のシルバーの他にブラックがある。インクは水性染料インク使用

「やっぱり、ファインライターだけではなく、ボールペンも出したいと考えたときに、単にゲルインクのボールペンでは、普及し過ぎていることもあって、あまりインパクトが無いと考えました。今回は“書くこと”にこだわった製品にしたかったので、低粘度油性やゲルよりも、よりスラスラと書けて、ヌルヌル感みたいなものも出せるローラーボール、つまり水性染料インクのボールペンを選択しました」と土岐さん。
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低粘度油性やゲルインクのボールペンに慣れていると、ローラーボールの滑らかさには驚くと思う。そのくらいスラスラとペンが走り、ヌルヌルと心地よい感触が指先に伝わる

「水性インク」といえば、実際のところ、ゲルインクもフリクションインキも水性インクなのですが、今回採用されている水性染料インクは、インクの性質が異なっています。ゲルインクは、ケチャップのようなドロッとしたインクで、ボールで攪拌されると滑らかになるという特殊な性質を持っています。一方で、今回使われているインクは、もともと醤油のようなシャバシャバな性質です。水性ボールペンは、主に誘導芯と呼ばれるものにインクをしみ込ませて、それがボールに伝わることで筆記する構造になっています。

海外では一般的に、ボールペンは油性ボールペンを指し、水性染料インクのボールペンはローラーボールと区別されています。
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「ローラーボール」での筆記例

「万年筆に近いボールペン、より軽い書き味を追求すると、ゲルよりもやはりこっちだなと思いました。そして、万年筆のようなペンを考えたとき、従来の製品に何を付加するかという議論があったんです。そのときに、“均一の線が書ける”というのがボールペンの特徴なのですが、そこに、『揺らぎ』を出したいという話になりました。万年筆だと、筆跡にインクの濃淡が出たり、線幅が変化したりしますよね。それを、WPシリーズの売りにしたいということになったんです。そういう筆記具を使うことで、気持ちが高まったり、発想が広がったりするのではないかと考えました」と粕谷さん。
 

インクの濃淡の変化を楽しむ「ローラーボール」と線の幅の揺らぎを味わう「ファインライター」

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「ファインライター」で書くと、こんな風に線幅の変化を楽しめる。

インクの濃淡と線幅の変化を表現できる筆記具というのが、WPシリーズが目指したところだったと、土岐さんは言います。ファインライターの樹脂芯だと、線幅の変化は比較的ラクに出すことができています。

一方で、ローラーボールはボールペンなので、線幅を変化させるのは難しいのです(三菱鉛筆の「ユニボール エア」という例外はありますが)。
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「ローラーボール」ではこのように、インクの濃淡の変化が味わえる

ただ、ローラーボールは使用しているインクが万年筆と同じなので、インクの濃淡は出しやすいのです。逆に、インクが潤沢に出るファインライターでは、インクの濃淡が出たとしても分かりにくくなっています。

「今回の製品では、ファインライターで線幅の変化を、ローラーボールでインクの濃淡の変化をといった形で、万年筆の特徴的な部分を、2つに分けたという感じです。実際は、議論の中で、線幅やインクの濃淡の変化なら、筆ペンがターゲットになってくるのではないかという話も出ました。しかし、筆ペンほど大きな変化を求めるのではなくて、本当にちょっとした、表情が少しだけつくよ、くらいの感じが欲しいと思ったんです。日常的に使う筆記具なのに、表情がつき過ぎると、逆に文字や内容が分かりにくくなってしまいます」と土岐さん。
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「ローラーボール」とブルーブラックのリフィルの組み合わせは、かなりインクの濃淡が表現できる

インクの濃淡をボールペンで出すということを考えれば、水性インクがたっぷりと出るローラーボールという選択は最良です。

実は、ファインライターでもインクの濃淡が出ないかと、さまざまな調整を試みたのだそう。ただ、よく見たら多少の濃淡は出ていたのだけど、ハッキリ分かるほどではなかったということでした。
 

万年筆的な高級感とオフィスで使える軽快さの両立を図ったデザイン

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グリップや口金の形状も、重要な品質である機密性を確保するために、寸法や角度の調整を繰り返しながら試作を重ねたそうだ。

「『WPシリーズ』の2種類のペンは、どちらも同じデザインになっています。元々はファインライター用に考えていたデザインでしたが、結果的に同じ形にすることになりました。この形も万年筆を意識していて、一般的な万年筆の紡錘形のフォルムを元に、シャープに現代風にしてみました。実際、細部もかなり万年筆を意識していて、ペン先の口金の形と、三角形のグリップのつながりが、万年筆のペン先のようなシルエットになるように作っています。もちろん、グリップの三角は、持ちやすくするためでもあるのですが、平たい面が、万年筆のニブ(ペン先)のように見えるデザインになっているんです」と土岐さん。
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「ファインライター」と「ローラーボール」では、クリップの仕上げが違う。手前のマットなクリップが「ファインライター」で、上のツヤがあるクリップが「ローラーボール」

「ファインライター」も「ローラーボール」もパッと見には見分けがつかないのですが、実はクリップがつや消しになっているのが「ファインライター」で、クリップが光沢仕上げになっているのが「ローラーボール」です。クリップがかなり長いのも、デザイン上の特徴になっています。しかも、よくある角が丸い形状ではなく、シャープにエッジが立っています。これは、「クリップは筆記具の顔じゃないですか」と言う土岐さんならではのこだわりでしょう。

「オフィスで普通に使う筆記具というイメージで作っています。なので、なるべくシンプルながらもボリューム感やインパクトを出すために、このクリップの長さがあるんです」と土岐さん。
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上の四角が並ぶリフィルが「ローラーボール」用、下の三角が印刷されているのが「ファインライター」用。この模様が、三角形の透明グリップの向こうに見える。しかも角度によって見え方が変わる

実際、さりげないところに、さりげなくデザイン上の遊びが仕掛けられています。

例えば、リフィルの先の方に、ファインライター用には三角形、ローラーボール用には四角形で構成された模様が印刷されています。この模様が、透明のグリップを通して見えるのです。しかも、グリップが三角なので、見る角度によって形の見え方が変わります。そして、リフィルはどちらも同じ形なので、実は、リフィルを変えれば、同じ軸でファインライターにもローラーボールにもなるわけです。
 

とにかく軽い書き味に加えて、新しい体験も感じられる「WPシリーズ」

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きちんと高級感がありながら、シックなただずまい。そして、書いてみるととても軽い書き味。良いバランスのペンだと思う

また、今や手書きは文字をたくさん書くというよりも、メモやラフアイデア、図やイラストなどを複合的に書くことの方が多いという状況を踏まえて、ペンを立てても寝せても書きやすいように作っているのも、「WPシリーズ」の特徴といえそうです。

そのため、どこをどう持っても持ちやすいようにデザインして、重心もほぼ中央に置くといった作り方がされています。「バランス的には、キャップを後ろに差し込まないで書く方をおすすめします」と粕谷さん。

「ファインライター」の樹脂チップにしても、「ローラーボール」の水性染料インクにしても、現在のボールペン中心の筆記具としては、あまり広く使われてはいないものです。その意味で、「WPシリーズ」は、筆記具の見直しとか、新しいスタイルの提案といった意味も含んだ、面白い試みだと思いました。言葉通り、“書くという体験”を新鮮に感じられる筆記具です。
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