食生活・栄養知識

Q. 揚げ物などを食べると胃もたれするのはなぜ? 改善法はありますか?

【薬学博士・大学教授が解説】揚げ物やお肉など、油っこい食事のあとで「胃がもたれる」ことがあります。「胃もたれ」とはそもそも何なのか、予防法・対策法とあわせて、解説します。

阿部 和穂

執筆者:阿部 和穂

脳科学・医薬ガイド

Q. 油の多い食事で胃がもたれるのはなぜ? 早く治す方法はありますか?

揚げ物・とんかつ

おいしい揚げ物。でも、量や時間帯によっては「胃もたれ」になることも……


Q. 「油の多い食事で胃がもたれるのはなぜですか? 油で胃の内側がダメージを受けるのでしょうか? 胃もたれを早く治したいときの、いい改善法があれば教えてください」
 

A. 胃の動きや筋肉のはたらきの問題です。肝臓をいたわるのも対策法の一つです

脂身の多い揚げ物やお肉などを食べると、「胃がもたれる」ことがありますね。たしかにその理由をきちんと説明できる方は少ないかもしれません。そのメカニズムを、わかりやすく解説します。

食べ物に含まれる脂肪は、ほとんど分解されずに食道や胃を通って、胃につながった「十二指腸」まで達します。十二指腸は、肝臓や膵臓とも管でつながっていて、さまざまな酵素などを含んだ消化液が分泌されて、食べ物に含まれる栄養分を吸収しやすい形に分解するのに重要な役割を果たしています。

脂肪が胃から十二指腸に送られてくると、十二指腸粘膜の細胞から「コレシストキニン」というホルモンが分泌されます。ホルモン名のうち、「コレシスト」は「胆のう」を、「キニン」は「平滑筋を収縮させるもの」を意味するので、その通り、コレシストキニンは、脂肪を分解するのに必要な胆汁を貯蔵してある胆のうを収縮させ、十二指腸への胆汁の排出量を増やします。また、コレシストキニンは膵臓にも働きかけ、脂肪分解酵素のリパーゼなどの分泌を促します。

コレシストキニンは胃にも働きかけ、胃の運動を抑制します。十二指腸では、しっかりと脂肪を分解する必要がありますが、次から次へと食べ物が十二指腸に送られてくると追いつかなくなります。そのため、脂肪が十二指腸に到達したときには、一時的に胃の動きを抑えて、次の食べ物が十二指腸に送られてこないように止める合理的な仕組みが働きます。

しかし、脂肪分が非常に多いときは、消化に時間がかかり、その間にコレシストキニンが分泌され続け、胃の動きが止まったままになります。これが、いわゆる「胃のもたれ」を感じているときの状態です。また、コレシストキニンには、食道と胃の境目にあり、胃内容物が食道に逆流するのを防いでいる「下部食道括約筋」を緩める働きもあるため、「むかつき」も感じるようになるのです。

では、こうした胃のもたれやむかつきをなくすには、どうすればいいのでしょうか。

予防法としてもっとも簡単なのは、脂っこいものを食べ過ぎないことに尽きます。普段から胃のもたれを感じやすい方は、気をつけましょう。

もう一つは、脂肪を早く分解できるようにすることです。十二指腸に脂肪が残っている時間が短くなれば、コレシストキニンの分泌も短くなり、胃の運動が再開されるのが早くなります。そして、脂肪の消化を助ける胆汁酸を作るのは肝臓ですから、肝臓の機能を維持もしくは高めるように心がけることが大切です。

年を重ねるにつれて、肝臓の機能がだんだん衰えていきますから、普段から肝臓に負担をかけないように飲酒を控えたり、肝臓に良い食生活をこころがけるのも一つの方法です。豆腐や納豆などの大豆製品や、カキやシジミなどの貝類はいいと言われていますし、肝臓で胆汁酸が作られるのにはビタミンCが必要になるので、ビタミンCが豊富な野菜や果物類もお勧めです。ただし、これらの食べ物を天ぷらや焼き肉と一緒に食べ合わせれば胃のもたれやむかつきが消えるというものではありません。日常的に不足しないように摂っておくことが必要だと心得ておきましょう。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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