アジア東部のおすすめ世界遺産
カンボジアの世界遺産「アンコール」のアンコールワット。アンコールには観光できるものだけでも50以上の遺跡がある
長江、メコン川、サルウィンの3つの川(江)が平行して走る「雲南三江併流の保護地域群」。写真は長江の虎跳峡 ©牧哲雄
一方東南アジアはほぼ熱帯に属し、降水量も多い。特に雨量が多いインドネシアなどの島々には深いジャングルが広がり、比較的雨量が少ないインドシナ半島などには森林や草原が多く見られる。ジャングルの世界遺産にはインドネシアの「スマトラの熱帯雨林遺産」、森林の世界遺産ではタイの「ドン・パヤーイェン - カオ・ヤイ森林群」などがあり、マレーシアの世界遺産「キナバル自然公園」などは双方の特徴を併せ持つ。
海や島に関連した世界遺産も数多く、東南アジア最大級のサンゴ礁を誇るフィリピンの「トゥバタハ岩礁海中公園」、火山島からなる「済州火山島と溶岩洞窟群窟群」などがあげられる。
人類の活動では、中国の世界遺産「周口店の北京原人遺跡」の北京原人や、インドネシアの世界遺産「サンギラン初期人類遺跡」のジャワ原人のように、古くからヒト属が住んでいた。1万数千年前から長江で稲作が行われ、やがて長江や黄河河岸に大文明が誕生した。稲作はアジア全域に広まり、メコンなどの大河周辺に多くの文化が生まれた。稲作に関係した世界遺産には中国の「青城山と都江堰灌漑施設」やフィリピンの「フィリピン・コルディリエラの棚田群」がある。
中国の世界遺産「秦の始皇陵」。地下には大宮殿があるといわれており、近くには兵馬俑坑もある
宗教的には、中国から日本にかけては仏教や道教、儒教の影響が見られ、東南アジアでは仏教とヒンドゥー教、マレー半島からインドネシアにかけてはイスラム教色が強い。世界遺産では仏教関連が韓国の「八萬大蔵経の納められた伽耶山海印寺」やインドネシアの「ボロブドゥール寺院遺跡群」、チベット仏教では「ラサのポタラ宮歴史地区」、道教関係では中国の「泰山」「武当山の古代建築物群」、ヒンドゥー教関係ではカンボジアの「アンコール」やベトナムの「ミーソン聖域」などがある。
では、アジア東部の代表的な世界遺産を紹介しよう。
ボロブドゥール寺院遺跡群
一辺約120mの基壇を底辺に、200万個に及ぶブロックを積み上げた高さ33.5mの階段ピラミッド、ボロブドゥール
ミャンマーのバガン、カンボジアのアンコールと並ぶ世界三大仏教遺跡のひとつ。大乗仏教の巨大な遺跡で、欲界を表す基壇の上に、色界を表す5層の方形壇と、無色界を示す3層の円壇が乗る3界9層の階段ピラミッドだ。ピラミッド上はシッダールタ(釈迦)や善財童子が悟りを開く様子を描いた1,460面のレリーフや、釈迦如来坐像を中心とした504体の仏像で彩られており、全体を通して仏教の世界観や悟りへの道程が描き出している。そういう意味で、この遺跡は寺院というよりも曼荼羅であり、経典なのかもしれない。
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プランバナン寺院遺跡群
ロロ・ジョングラン寺院。右がシヴァ堂で、左がシヴァの乗り物である雄牛ナンディーを祀ったナンディー堂
ボロブドゥールから35kmほどの位置にあるヒンドゥー教と仏教の寺院群。ハイライトはロロ・ジョングラン寺院で、一辺110mの正方形のプラットフォーム上に8基の巨大なお堂が連なっている。お堂はシヴァ、ブラフマー、ビシュヌのヒンドゥー3最高神やその乗り物となる神々を祀っている。他に仏教寺院であるセウー寺院、ルンブン寺院、ブブラ寺院が世界遺産に登録されている。
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