ペットロス「悲しみの温度差」にもう悩まない!世代別の特徴と対処法

ペットロスの悲しみは想像をはるかに超えたものになることが多いです。ペットを見送られた方が安心してペットロスの過程を歩めるように、また、周囲も安心して寄り添えるように「世代ごとで違うペットロスの特徴と対処法」をペットロスカウンセラーの川崎恵がお伝えします。

川崎 恵

執筆者:川崎 恵

犬ガイド

ペットロス世代別の特徴と対処法……「悲しみの温度差」で悩まない

ペットロス世代別の特徴と対処法

ペットは家族の一員。でもペットロスの反応はみんな違う?

ペットを飼う多くの方が「ペットは大切な家族の一員」と表現します。そしてペットを囲み、家族はそれぞれがパパになり、ママになり、おじいちゃまになり、おばあちゃまになり、お兄ちゃんになり、お姉ちゃんになります。

家族皆でペットに愛情を注ぎ、喜びも悲しみも共に過ごしたはずなのにペットが旅立った途端、思いもよらないことが起こります。それは、家族間で悲しみの表現方法が違うということです。筆者が行なっているペットロス専門のカウンセリングサロンでも「家族の中で悲しみに温度差があり辛い」と訴えられる方が非常に多いです。「皆で同じように愛してきたのになぜ?」「夫がこれほどまでに冷たい人間とは思わなかった」「悲しみにくれる妻に異常さを感じる」と多くの方が言われます。

大前提として、ペットロスには個人差があります。悲しみの表現方法も違えば、回復までの期間も異なります。違って当たり前なのですが、共に愛してきたペットとなると「違うことが許せない」と、また誰かの悲しみがご自身の想定範囲を超えた時に「異常」と感じることもあるのでしょう。これは家族内に限ったことではありません。ペットを見送った方とその周囲の間でも「悲しみの温度差」で不協和音が生じることも多々あります。

ペットを見送った方が周囲を気にせず安心してペットロスの過程を歩めるように、また、ペットロスの人を見守る周囲も安心して寄り添えるように「世代ごとで違うペットロスの特徴と対処法」についてお伝えします。
 

<目次>
 

そもそもペットロスとは何か?

最愛のペットが旅立った後に起こる心身の反応をペットロスといいます。家族の一員であり、我が子同然のペットを亡くすことは想像を絶するものであり、押し潰されそうな喪失感、後悔、罪悪感、やり場のない怒りや絶望を感じ、止めどなく溢れる涙のみならず、時に幻聴幻覚、不眠、摂食障害、パニック、過呼吸、倦怠感、脱力感、記憶力の低下、持病の悪化、希死念慮を抱くこともあります。

これらの反応には個人差がありますが、ペットロスは病気ではなく、誰もが感じる心と体の自然な反応なのです。不思議に感じられるかもしれませんが、ペットロスとは目の前で起こっているペットの死だけが影響しているのでなく、様々なことが絡み合い、悲しみ、苦しみとなって現れています。例えば、ご自身の性格、価値観、育った環境、これまでのペットの飼育歴、ペットとの関係性、生活環境、お別れの仕方、死生観などが一例です。

様々な要素が影響しているからこそ、ひとつ屋根のもと家族でペットを愛していてもペットロスの反応が違うのです。違って当然のものだからこそ、誰かと比べて落ち込んだり、自分を責めたり、他人を責めたりする必要はないのです。
 

ペットロスの特徴……子どもの場合

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子どものペットロス。それは毎日一緒にいたお友達がいなくなることに似ているかもしれない

子どもたちがペットの死に直面した時、死の理解には個人差が生じます。それは、その子の発達状態が大きく影響するからです。特に幼年期では「死んだ者は生き返らない」ということが理解できず、亡くなったペットを目にしても「いつ起きるの?」と無邪気に聞いてくることが多々あります。また、夜泣きをしたり、赤ちゃん返りのような反応がでる場合もあります。

【筆者のペットロスサロンで子どもたちが話す内容】
・ペットはどこにいっちゃったの?
・寝ているペットをパパが連れていっちゃった
・私が悪い子だからいなくなっちゃったの?
・さみしい
・いつ帰ってくるの?
・ママはどうして泣いているの?

【ペットロスカウンセラーからのアドバイス】
子どもは年齢的にペットの死を理解できないこともありますが、ただ「ペットが亡くなった時の記憶」は残ることが多いです。私たち大人は子どもに対して「どうせ理解できないだろう」とか「悲しい想いをさせたくない」といった視点で子どもを無視してペットの死を片付けてしまいがちです。しかし、子どもにとってのペットの死は、初めての死別体験になることも多いので、大人の都合でうやむやにするのではなく、子どもと一緒に思いやりを持った温かな見送りをすることが大切だと感じます。
 

ペットロスの特徴……思春期を迎えた子どもの場合

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思春期の子どもにとって、ペットは大人に話せない気持ちを聞いてくれる大切な友

小学校高学年以降、思春期に入った子どもたちにとって、ペットは両親や教師、友達にも言えない心の内を話せる唯一の存在になることが多いです。繊細で多感なこの時期に体験するペットの死は、心に大きな衝撃を与えます。兄弟のように育ち、友達のように遊んだペットを失うことは、最も身近な友を亡くすような体験となることが多いです。ただ、この時期は、興味の範囲がとても広いので、ペットロスからの立ち直りも深刻化せずスムーズにいくことが多いです。

【筆者のペットロスサロンで子ども達が話す内容】

・「いつまでもメソメソしない」と言う両親に腹がたつ
・両親が自分のことを腫れ物に触るような対応をする
・誰も本当の悲しみを理解してくれない
・悲しみを口にしたら壊れてしまいそうで話せない
・大切なペットが死んだのに平気でいる両親や弟が許せない
・何もやる気が起こらない
・部屋から出たくない
・誰とも会いたくない
・部活中に突然泣いてしまってから、学校へ行くのが怖くなった

【ペットロスカウンセラーからのアドバイス】
この年代の子どもたちは自分の気持ちを言葉で表現しないことが多く、ご家族は困惑されるかと思います。その困惑から、励ますつもりで「いつまでも悲しんではダメ」と叱咤激励したり、新しいペットを早急に与えてしまいがちです。しかし、それらの行為は悲しみを抑圧させたり、気持ちをより不安定にさせる結果になりやすいので注意が必要です。大切なことは、子どもたちを信じて見守ってあげることです。「この子は大切な友達を失った痛みと必死に戦っている」と理解して、彼らに接してあげてください。
 

ペットロスの特徴……働き世代の場合

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働き世代はペットロスでも会社を休めない。とても辛いけど良い一面もある

ペットを失ったあとは、大きな喪失感から物理的にも精神的にも「内にこもりたい」と思う方が多いです。しかし、仕事を持つ方は否応無しに職場に行かなくてはなりません。悲しみを内に秘め、平静を装わなくてはならない働き世代のペットロスは心に大きなストレスがかかります。

ただ、否が応にも仕事にいかなくてはならない状況の中には「仕事の時間だけペットロスから離れることができる」メリットもあります。また、その反面、帰宅時に玄関を開けた瞬間「ペットがいない現実を突きつけられる」デメリットもあります。これはとても辛いことです。しかし、この「ペットがいない現実」を毎日のように見せられる体験は、強制的ではありますが現実を受け入れる手助けとなっているのも事実です。  

【筆者のペットロスサロンで働き世代が話す内容】
・仕事中に突発的に過呼吸になったり涙が溢れることに困惑している
・上司や同僚に「ペットごときで」と思われているのではないかと気になる
・笑いたくもないのに愛想笑いをしている自分が許せない
・家のドアを開けることが恐ろしくてたまらない
・「仕事がなければもっとあの子に寄り添えたのではないか」と後悔している
・自分にとっては唯一無二の子なのに、周囲には理解してもらえない
・会社のカレンダーを見ることが辛い。つい「あの時は……」と思い返してしまう
・「これで解放されたね」と言われた時、相手を殺したいと思った

【ペットロスカウンセラーからのアドバイス】
周囲の方は悪気なく励ますつもりで声をかけられることが多いです。しかし、最愛のペットが旅立った後は心がとても繊細に反応し、相手にとっては何気ない言葉であっても打ちのめされる程に傷つくことが多々あります。この時期は、声をかけてくれる方が誰であっても「心が”辛い”と反応する言葉には耳を貸さない」ことが自分を守る術となります。また、泣くことを恐れずに、思いっきり涙することも大切です。

最後に、働き世代は、体力が必要です。ペットロスの反応のひとつに眠れなくなることがありますが、睡眠不足はさらに心身を疲弊させるので、一時的に睡眠導入剤などを適切な指示のもとで服用することも手段のひとつです。
 

ペットロスの特徴……子育て世代の場合

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子育て世代のペットロスは、子供に心配かけてしまう···…との想いが強くあらわれます

子育てをされている方は、ゆっくりと悲しみに浸る時間がないのも事実ですが、何よりも「自分が悲しい顔していると子どもが心配する」との想いから、悲しみを必死に抑える方も多いです。また、家庭内で感じる悲しみの温度差に悩まれる方も多く、ペットが旅立ったことで強い孤独感を感じる方も多いです。

子どもの年齢にもよりますが、両親がペットの死を悲しんでいる姿は「命に対しての姿勢」を子どもたちに見せる機会ともいえます。命は尊いこと、大切な存在が旅立てば悲しいことを子どたちが感じ取る機会となるはずです。

【筆者のペットロスサロンでこの世代の方が話す内容】
・思いっきり悲しみに浸る時間がない
・とても悲しいのに、悲しむことを家族から許されない
・子育てを頑張らなきゃいけないのに頑張れない
・私は母失格です
・主人が悲しんでないように見えて価値観の違いに悩んでいる

【ペットロスカウンセラーからのアドバイス】
最愛のペットが旅立てば悲しいと感じることは自然なことです。お子さんが手を離れず忙しい時でも、例えば、トイレの中やお風呂の中など、ご自身がひとりになれる空間の中では誰に遠慮することなく、最愛の子を偲び、思いっきり涙してください。悲しむこと、泣くことを自分自身に許可してくださいね。泣けない場合もあります。そのような時は防衛本能が働いているので、泣けない自分を責めないでください。
 

ペットロスの特徴……子育て終了世代の場合

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子育て終了世代にとってペットは「新たな生きがい」を与えてくれる存在

子育てを終えた世代にとってペットとは、再び子育てをさせてくれる存在でもあります。我が子のように愛情を注ぎ、穏やかで豊かな時間を紡いでくれる存在、それがペットたちです。ペットにより新たな生きがいを得るといっても過言ではありません。

人間の子どもはいつかは巣立ちますが、ペットは最後まで自分の世話を必要としてくれます。決して裏切らず自分を信用し、必要としてくれるペットの死は、”我が子の死”もしくは”自らの分身の死”に匹敵する痛みになるのです。

【筆者のペットロスサロンでこの世代の方が話す内容】
・朝、目覚めることが絶望でしかない
・あの子のいない世界で生きる意味が見つからない
・自分で死ぬことはできないから、あの子に迎えに来てほしいと思う
・両親の死よりも悲しくてたまらない
・変われるものなら私が変わってあげたい
・罪を背負って生きていく

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ペットは我が子。ペットの死とは我が子の死に匹敵する痛みとなる

【ペットロスカウンセラーからのアドバイス】
ペットの死は我が子の死に匹敵する喪失体験であるといわれています。特に女性の場合は、対象がペットであっても意識の中では「母」となりますので、喪失感や絶望感はご家族の中でも特別大きくなる可能性があります。たとえ、ご家族間で悲しみに温度差を感じても、また「いい加減に前を向かないと……」との言葉をかけられても堂々と悲しむことが大切です。堂々と悲しみ、堂々と泣いた先に、必ず癒しに繋がる何かが見えてくるはずです。
 

ペットロスの特徴……高齢者の場合

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高齢者の方にとってのペットとは心身の健康を支える大切な存在

高齢者にとってペットとは、心身の健康を支えるとても大切な存在です。ペットがいることにより外出や散歩の機会が生まれる。ペットを通して人との会話が生まれ、地域社会との接点が生まれる。何よりもペットの世話を通して”命を守る”役割が生まれ、生きがいに繋がる。ペット1匹がいることで、そこに人間が介在しなくても会話が生まれる。ペットとは、想像をはるかに超えた豊かさと生きるためのエネルギーを高齢者にもたらす存在です。それゆえ、高齢者の方にとってペットの死とは、ペットを通して得ていた全てを失うことを意味します。ペットを失った衝撃は心身に大きな影響を与え、時に持病の悪化に繋がったり、認知機能の低下に繋がることもあります。

【筆者のペットロスサロンでこの世代の方が話す内容】

・本当に辛い
・あの子が旅立って何もすることがなくなった
・あの子がいるだけで楽しかった
・何もしてあげられなかった。申し訳ない
・きっと、もうすぐ会える
・両親の死、旦那の死よりも悲しい

【ペットロスカウンセラーからのアドバイス】
高齢者にとってペットを失うことは「いままでの日常が根底から壊れる」ようなものです。生活が大きく変わります。心身へのケアと同時にガラリと変わった日常生活を整えていく必要があります。年齢にもよりますが、高齢の方がひとりで乗り越えるには難しい場合もありますので、家族や周囲の方が暖かくサポートをしてあげてください。その際、何度も同じ話を繰り返す方もいるかもしれません。その話を途中で遮ることなく丁寧に聞いてあげてください。話を聞いてもらうだけで心は救われます。また、次のペットを迎えることに関しては、慎重に考えてください。何よりも高齢者の方の体調を注意深く見守ってください。
 

まとめ

ペットが「家族の一員」であるということは、ペットの死とは「家族の一員の死」となります。ペットは姿こそ動物ですが、見送った後の喪失感は想像をはるかに超えたものとなることが多いです。

ペットを失った方に対峙したとき大切な視点は「目の前の人は、最愛の存在の死に大きな衝撃を受けながら必死に生きている」ということです。

ペットの死は「家族の一員の死」です。ペットを見送った方が誰であれ、その出来事の大きさに周囲が優しく見守れる社会であってほしいと筆者個人は思います。

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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。

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