お墓・墓石・霊園の選び方

墓守が途絶え「無縁墓」が増える今、「墓じまい」で思いを大切に引き継ぐという選択肢

近年、墓守がいなくなって「無縁化」してしまうお墓が話題になっています。「お墓を守っていく人がいない」「遠方にあるため守っていくことが難しい」等の理由で検討される墓じまいですが、その手順や費用、注意事項を解説します。

吉川 美津子

執筆者:吉川 美津子

葬儀・葬式・お墓ガイド

「墓じまい」を検討する人が増えている理由

お墓のすべてを撤去し、墓地を更地にして使用権を管理者に返還する「墓じまい」

お墓のすべてを撤去し、墓地を更地にして使用権を管理者に返還する「墓じまい」

納骨されている遺骨を取り出し、別の場所へ移動することを法律で「改葬」といいます。すべての遺骨を改葬する場合は、既存の墓所区画を管理者に返還する作業が伴いますが、これらの一連の流れのことを「墓じまい」といいます。墓じまいは、墓石や外柵、付属品をすべて撤去し、墓地を更地にして使用権を管理者に返還します。
 
墓じまいを検討する理由として、「お墓を守っていく人がいない」「遠方にあるため守っていくことが難しい」という意見がよくあげられますが、「年に1回のお墓参りより、いつでも気軽に故人や先祖と向き合いたい」等の理由で居住地の近くにお墓を求めたいという人も多いようです。
 

もし墓守がいなくなってお墓が放置されたら

近年、墓守がいなくなって「無縁化」してしまうお墓が話題になっています。札幌市では2018年より約2年にわたり市内にある市営墓地計20カ所の調査を行っていましたが、全体の2割にあたる約1万基のお墓が無縁化している可能性があるという調査結果を公表しました。

今後、これらのお墓は使用者や相続人の調査をし、連絡がとれない場合は「無縁墳墓(無縁墓)」として「墓地、埋葬等に関する法律施行規則」に沿った手続きがなされ、遺骨を取り出して別の場所に移動されます。つまり遺骨は「改葬」されることになります。遺骨が改葬された後は、もとのお墓は撤去されて整地し、その区画は再販売されることになるでしょう。
 
このように、管理費の滞納や使用者と連絡がとれない場合は、一定の手続きを経て墓石を撤去することができますが、すべての無縁となったお墓がこのような手順を踏むわけではありません。
撤去費用等は原則的に墓地の管理者(寺院や自治体など)の負担となってしまうため、そのまま放置され続けるお墓もあります。

墓石は年月が経つと、破損したり倒れて凶器になることもありますので危険です。何よりお墓は残された人が故人を思ってつくった大切な場所。すべてのお墓にあてはまるわけではありませんが、「自分の代で途絶えてしまう」可能性があるなら、墓じまいを考えても良いかもしれません。
 

墓じまいは、新規納骨先を探すところからスタート

【手順1】遺骨の行先を考える
墓じまいをする際は、遺骨を取り出すわけですから、取り出した遺骨をどこに納骨するかを考える必要があります。新しく購入する場合は、場所や予算、宗教等条件に見合うお墓を探します。また子々孫々継ぐことが前提の「承継墓(家墓)」とするのか、それとも自分たちに代わって寺院や自治体が代わりに遺骨の管理(供養)してくれる「永代管理墓(供養墓)」のスタイルにするのかを考えます。お墓の形状は、墓石を建てるタイプだけではなく、納骨堂や樹木や草木を多く使用する樹木墓地、ガーデニング墓地といったタイプがあります。

【手順2】古いお墓から遺骨を取り出す
遺骨を取り出す作業については、納骨室の蓋を開ける必要がありますので、石材店に依頼します。寺院墓地の場合は寺院にも連絡し、日程を伝えておきましょう。同時に墓石の魂抜き「閉眼法要」を行うこともあります。
 
【手順3】お墓を撤去し更地にする
墓地の管理者と石材店に連絡をし、お墓の解体・撤去をする日程を決めます。工事の立ち会いについては、管理者と寺院に確認します。
 
【手順4】遺骨を移動し、新墓所に納骨する
遺骨は自分たちで運ぶ場合と、業者に委託する場合があります。ゆうパックで送ることもできます。新墓所に納骨する場合は、日程を決めて墓地管理者と業者(石材店、納骨堂管理会社等)に連絡します。当日は業者立ち会いの元、納骨します。納骨法要を行うこともあります。
 

「改葬許可証」は新規墓所への納骨パスポート 

遺骨の移動「改葬」にあたっては、法律に基づいた事務手続きが必要です。その事務手続きの流れをおさえておきましょう。

新規納骨先が決まったら、墓地管理者より「使用許可証」(受入証明書等)を発行してもらいます。次に、既存墓地がある自治体のホームページから「改葬許可申請書」をダウンロードし、その「埋葬・埋蔵証明」欄に既存の墓地管理者から署名捺印をもらいます。

「使用許可証」「改葬許可申請書」「埋葬・埋蔵証明」の3つをセットして既存の墓地のある自治体に提出すれば、「改葬許可証」が発行されます(※自治体によって書類の形式が違うこともあります)。新規墓所に納骨する際は、この「改葬許可証」の提出が求められます。
 
なお、取り出した遺骨を海へ散骨する場合、改葬許可証は必要ありませんが、遺骨の一部を手元に残すなら、将来その一部の遺骨をどこかに納骨する可能性がありますので、改葬許可証を取得しておきましょう。
 
墓地の管理者が明確で、納骨されている人の人数や氏名を把握していれば、書類の手続きはさほど難しくありません。しかし山や田畑の中にあるような昔の「野墓地」といわれるお墓の中には、管理者があいまいで納骨されている人の実態がつかめないことも多く、手続きが難航することもあります。地域の事情に精通した石材店に相談してみてください。
 

お寺に「離檀料」も? 墓じまいの費用の実際 

墓じまいの値段は、現在のお墓の大きさ・形態・場所によって異なります。概ね墓石の撤去費用で1平方メートルあたり8~15万円、墓石の処分費用として1平方メートルあたり10万円ほどで検討しておきましょう。その他に、新規納骨先の費用がかかることを忘れずに。
 
寺院墓地で檀家(寺院の信徒になりお布施などの経済的支援することで、葬式・法事をおこなってもらえる家になること)をやめることになる場合は、それまでお世話になったお礼を兼ねて「お布施」を包むことがあります。近年このお布施は「離檀料」と称され、「高額な離檀料を請求された」という声も一部にありますが、実際は通常の法要で渡すお布施の2~3倍程度、金額にして5万~15万円程度が多いようです。

ただし、お布施はあくまで気持ちの問題であって、金額に決まりはありません。離檀料を払わないからといって、改葬を阻止されることもありません。ただし、寺院に一切連絡や相談もなく、改葬の手続きを進めてから、突然「檀家をやめる」と切り出すのはトラブルになりやすいので、前もって相談することをおすすめします。

墓じまいは金銭的負担も大きく、相当の期間を要しますので、簡単に実行できるものではないのですが、実際に行った人の声を聞くと手続きや墓石撤去工事そのものよりも、新規納骨先を探したり、墓じまいに理解を示してくれない親戚との調整を難しいと感じる人が多いようです。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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