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【9月1日問題】子供を追い込まない親の働きかけ

子供たちにとって、1年でもっとも長い休みである“夏休み”が明けた9月は、様々な悩みや問題が表出しやすい時期。メディアでは、子供の不登校や自殺が増える時期として、「9月1日問題」を取り上げています。子供たちの心を追い詰めないために、親ができることとは?

佐藤 めぐみ

執筆者:佐藤 めぐみ

子育てガイド

不登校、自殺……子供たちが追い込まれている今、親は何をすべき?

子供たちが思いつめずにすむように親に何ができるか?

子供たちが思いつめずにすむように親に何ができるか?

文部科学省の調べでも明らかなように、不登校の子供たちは年々増え続け、過去最高レベルになっています。また、「9月1日問題」として、夏休み明けの9月1日は子供の自殺が増えることもメディアで大きく取り上げられています。

追いつめられている子供たち……、私たち親は、何をしてあげられるでしょうか?

この記事では、子供を追い込まないために、親にどんなことができるかを見ていきます。不登校になってから考えるのではなく、普段からどのような姿勢で接するのが望ましいか、心理学的な側面からお伝えしていきます。

 

9月1日問題に取り組む全国の支援団体

「夏休み明けは、不登校や自殺が増える傾向がある」とメディアで大きく取り上げられるようになった昨今、全国の支援団体が様々な取り組みを稼働させています。

NPO法人「フリースクール全国ネットワーク」では、「学校がつらくてもココがあるよ!プロジェクト」を展開し、駆け込み居場所を無料で開放したり、電話相談を受け付けたりしている全国の団体を紹介しています。

また、全国不登校新聞社など5つのNPO法人(*)が合同で発した 「学校へ行きたくないあなたへ、味方はココにいます」という呼びかけや、「9月1日がイヤだなって思ったら、自殺するより、もうちょっとだけ待っていてほしいの」という女優の樹木希林さんのメッセージを聞いた方も多いでしょう。

すべてに共通しているのが、「キミにとってそこだけが世界の全てではないんだよ」「ほかにもっと居場所があるんだ」というメッセージです。様々な理由で、追いつめられてしまっている子供たちの心を解放してあげる取り組みが求められているのが分かります。

では、親として、我が子に何ができるでしょうか? 子供たちの心を追い込まないために、親ができることについて、心理学的に見ていきたいと思います。

 

こう考えると、だれでも思いつめてしまう……その思考傾向とは?

私たちは、同じ状況に置かれても、感じ方が違います。それをプレッシャーやストレスに感じる人、「ま、こんなもんか」「世界の終わりじゃない、なんとかなる」と思える人と様々です。

なぜ、このような違いが生まれるかというと、人間はだれでも、その人の「思考スタイル」を持っていて、それをベースに置かれた状況を読み取ったり、物事を解釈したりしているからです。子供たちにも同じことが当てはまります。

心理学的に見て、「思いつめてしまう人」には、次のような思考傾向が見られます。
  • 白か黒か思考:
    物事を「白でないなら黒」「100%でなければ失敗も同然」のように、二極的に考えてしまうと、何か困難な状況に置かれたときの落差が大きいため、同じ状況でも、立ち直れないように感じてしまいがちです。
  • 過度の悲観視:
    「1つダメだと、次もダメだろう」「これがダメなら、あれもダメだ」のように、「1点の黒」を「全体の闇」に広げてしまうと、いつまで経ってもトンネルを抜けきれない感覚に陥り、行き詰まってしまいます。
このような二極的な思考や悲観視は、子供たちを苦しめる大きな要因です。同じ状況に置かれても、思いつめずに済むかどうかに影響をしてくるからです。では、子供たちが、これらの考え方を自分の思考スタイルの中に取り込まないように働きかけることは可能なのでしょうか?

 

子供の思考スタイルには親が大きく影響している

一般的に、私たちの思考スタイルは、小学生時代に固定化されます。よって、お子さんの年齢が小さければ小さいほど、思考スタイルに柔軟性がありますので、介入もしやすくなります。

子供たちが「悲観的な考え方」を身につけないようにするために気をつけるべきこと、それは、親の言葉づかいです。とくに、母親の発する言葉は、子供の思考スタイルに影響しやすいことはすでに分かっているので、ママは言葉選びを慎重にしていきましょう。これは、お子さんに話しかけるときの言葉はもちろんですが、次のような場面も影響力があるので、配慮が必要です。
  • ママが他者と話す場面
  • ママがボソッと言う独り言
  • ママの感情的な言葉
子供がいる横で、悲観的な物言いをすることは避けましょう。

「もうすでに中学生、高校生だけど……」という方も取り組み方は同じです。思考スタイルは根強いものですが、しっかりと意識して介入することで、上書きすることもできるからです。

 

親が禁句にすべき言葉&積極的に使いたい言葉

親ができる働きかけとしては、親自ら、上でご紹介した「二極的な思考」と「悲観視」をやめ、「多極的な思考」と「楽観視」を取り入れることです。

具体的には、

■禁句にすべき言葉
「うわ~、最悪」
「なんで私ばかり、こんな目に遭わなくちゃいけないの」
「こんな調子じゃ、いつまで経ってもできるようにならない」
「完璧にできなくちゃダメ、これならできていないのと同じ」
「どうせうまくいかないんだから」

これらは、お子さんに直接言わない場合でもNGです。たとえば、ママ友との会話がお子さんに聞こえている場合、これらの言葉を耳にするだけで、「そっか、どうせうまくいかないんだ」と一般概念として学んでしまうからです。これらを禁句にし、積極的に口にしていきたいのは、次のような言葉です。

■積極的に取り入れていきたい言葉
「こういうこともあるよ。ママも〇歳のころ、〇〇なことがあったんだよ」
「でもね、〇〇って考えたら、すっごく楽になった」
「今回は残念! 次はうまくいくように練習しようね」
「よし、気持ちを切り替えて! 次はどうしたらいいかな? ママも協力するよ」
「これがダメなら、あれができるよ、大丈夫、やり方はたくさんあるから」
 
  • だれでも失敗することはあること
  • イヤな思いをすることもあること
  • でもそこから必ずみんな立ち直れること
を意味する言葉を選ぶのがコツです。端的に言うと、「悪いことは続かない」というニュアンスです。

今回お伝えした内容は、9月1日問題に関係なく取り組んでいきたい試みです。日々の小さな心がけが、子供たちに良い影響をもたらし、ひいては、9月1日問題対策につながっていきます。ぜひご家庭で取り入れてみてください。


*参照サイト:
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※乳幼児の発育には個人差があります。記事内容は全ての乳幼児への有効性を保証するものではありません。気になる徴候が見られる場合は、自己判断せず、必ず医療機関に相談してください。

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