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ツアーを申し込んだ旅行会社が破たん!対処方法は?

2017年3月27日、以前から格安の海外旅行ツアーを催行して人気のあった「てるみくらぶ」が東京地裁より破産手続開始の決定を受け倒産しました。同時に多くのツアー申込者が出国できない、ホテルに泊まれないなどの被害を受けていることが発覚し、対応が求められています。こんな時、もし自分がツアー参加者だったら……、という前提で、初動的な対応をご説明したいと思います。

中原 健一郎

執筆者:中原 健一郎

海外旅行ガイド

旅行会社が破たんしたとき、契約済みの旅行は続行できる?

2017年3月27日、以前から格安の海外旅行ツアーを催行して人気のあった「てるみくらぶ」(観光庁長官登録旅行業 第1726号)が東京地裁より破産手続開始の決定を受け、倒産しました。

てるみくらぶからツアー参加者に送られたメールの全文はこちら

同時に多くのツアー申込者が出国できない、ホテルに泊まれないなどの被害を受けていることが発覚しています。こんな時、もし自分がツアー参加者だったらどう対応するべきでしょうか?

ある日突然音信不通に

ある日突然音信不通に……

世の中に星の数ほど会社があるのならば、その破たんの仕方もまた千差万別です。きちんと営業を続けながら債務処理をこなしていく模範的な?会社もありますし、中には夜逃げ同然で突然全く連絡がつかなくなる場合もあります。

不幸にしてツアーを申し込んだ旅行会社が破たんした場合、残念ながら旅行を全うできる可能性はかなり低いです。あとは既に入金したお金をどうやって取り戻すか?というところに注力していくことになりますが、不幸中の幸いで日本の旅行会社の場合はセーフティーネットがありますので、そのあたりを中心にご説明したいと思います。

<目次>

本当に返金されるのか?

破たんした旅行会社が上述のような誠意のある対応を続けている限りは、債権者集会などが開かれることも考えられますので、根気よく連絡をとりながらその手続きに従うことが賢明です。

しかしそうではない今回のてるみくらぶのような場合でも、日本には旅行業協会等による弁済制度が存在し、基本的にお金は返ってくることになっています


旅行業協会の弁済業務保証金制度

まさかに備えて旅行会社は供託金を預けている

まさかに備えて旅行会社は供託金を預けている

日本には日本旅行業協会(JATA)全国旅行業協会(ANTA)という2つの旅行業協会があり、ほとんどの旅行会社はこのどちらかに所属しています。この旅行業協会の会員会社は今回のような「まさか」の場合に備えて弁済金を供託しており、本当のまさかの時にはこの供託金から債権者に弁済金が支払われます。過去の旅行会社倒産のケースでも、この弁済金が支払われています。

また、旅行業協会に加入していない旅行会社の場合でも、国による営業保証金という同様の制度があり、債権者は同じく補償を受けることができます。

ツアーを申し込んだ旅行会社がどちらの旅行業協会に加入しているかはホームページ、パンフレットの裏などに記載があります。旅行会社には登録制度があり、同様に「観光庁長官登録旅行業 第〇〇〇号」、「□□県知事登録旅行業 第〇〇〇号」などと記載があります。この記載がない会社についてはモグリの違法業者ですので、旅行を申し込んではいけません。


弁済金の額は旅行会社によって違います!

この弁済金の金額ですが、最悪の事態の場合に債権者に還付するためのものという趣旨もあり、旅行会社の規模によって弁済限度額が異なります。つまり大きな旅行会社ほど弁済限度額が大きく(より多くの供託金を預けている)、小さい旅行会社ほど小さいということになります。具体的には前年度の売上規模によって毎年変わることになっており、破たんに至った場合を想定して債務をまかなえるよう、事業規模を考慮して金額が定められています。

今回のてるみくらぶの場合は1億2000万円という金額でした。


全額戻ってくるとは限らない!

支払額の一部しか返ってこないことも

支払額の一部しか返ってこないことも

今回この1億2000万円という弁済限度額に対して、てるみくらぶが受け取っていたツアー代金は約100億円と言われており、今回の事件で被害者が受け取れる弁済金額は支払額の1%程度となる見通しです。過去の同様のケースでは全額補償されたことももちろんありますし、5割~7割程度の弁済という場合もありました。

実は私自身も過去に別の旅行会社で被害者になったことがあり、その時の弁済額はやはり半分くらいだったと記憶しています。今回の1%という数字がいかに異例かということが分かりますし、自転車操業に陥ってキャッシュをかき集められるだけ集めていたのではないかと強く推定されます。

さらに、社員100人程度の会社が新卒約50人に内定を出していたというのですから愕然とします。私が今回このてるみくらぶに関して最も違和感というか、不義を感じるのはこの点です。新卒50人に地べた這いずり回って資金集めでもさせるつもりだったのでしょうか? まあ、良くて電話でのクレーム対応要員くらいにしか考えてなかったのではないかと思います。

今回被害に遭った新卒の方々には、「災い転じて福となす」は人生長い目で見ると多々あることを肝に銘じて、気持ちを新たに頑張ってほしいです。

やはり安さだけがウリの商売というのは、結局行き着くところはここなんだなと改めて思いますね。


破たんしたらどこに相談すべきか

もし被害者になってしまって、会社に連絡もつかない場合は、まずはその会社が加入していた旅行業協会に対応を相談してみましょう。すでに電話対応でてんやわんやになっていることは間違いないと思われますが、頼れるところはここしかありません。

旅行業協会に加入していない旅行会社の場合は、前述の登録をしている観光庁、もしくは各都道府県の観光関連部署にまずは問い合わせをしてみてください。

おそらくそのような場合には早急にホームページ上に案内が掲載されるでしょうから、よくチェックしましょう。

日本旅行業協会のホームページはこちら

全国旅行業協会のホームページはこちら
観光庁のホームページはこちら


旅行中に破たんが報じられたらどうするか?

実は一番心配なのがこのパターンです。旅行会社の多くはランドオペレーターと呼ばれる現地の手配会社を通してホテルやレストランなどの予約をしていますが、破たんが報じられればホテルに限らずありとあらゆる手配が一気にキャンセルされる可能性があります。

どうしても援助が必要な時は日本大使館へ

どうしても援助が必要な時は日本大使館へ

これに関しては、旅行中の限られた短い時間の中ではどうしようもありません。ただし、ホテルの手配など場合によっては命に係わるような時は、在外公館が邦人保護業務として対応してくれるはずです。まずは自分で何とかすることも大事ですが、どうにもならない時には事態が悪化する前に保護を求めることも必要です。

大使館や領事館の邦人保護業務にはできることとできないことがあり、できないことの筆頭は「お金を貸すこと」ですので覚えておいてください。基本的には日本からの送金、その他必要な手配についての助言が主なサポート内容になります。手配の代行や手続き、保証などはできないことになっていますので、おんぶにだっこで助けてもらえるわけではありません。


帰国便は乗れます!

帰国便の搭乗には通常支障はない

帰国便の搭乗には通常支障はない

最も心配なのが帰りの飛行機に乗れるかどうかですが、結論を言うと帰りの飛行機には乗れるはずです。日本発の航空券に関しては2008年に国土交通省の通達があり、発券後(※)の航空券に関しては航空会社への入金が済んでいるか否かに係わらず、航空会社は搭乗を断ることができないことになっています。すでに旅行を開始しているということはすでに航空券が発券されているということですので、帰国便には乗れるということになります。

※発券
少し前までは実際に紙の航空券が発券されて送られてきていましたのでイメージとして分かりやすかったのですが、現在はほぼ全てEチケットのため、実物を見ることはありません。ただし航空会社のシステム内では依然として発券という同様のプロセスが踏まれていると理解しておいてください。予約と発券の間には通常は時間的なブランクがあります。

万一空港カウンター等で、旅行会社の倒産を理由に帰国便の搭乗を拒否された場合はこれを教示して強く抗議しましょう。ただし海外発の航空券に関してはこの限りではありませんので注意が必要です。

てるみくらぶの倒産が報じられてから約1週間が経過した2017年4月1日現在、てるみくらぶで予約をしたツアー客が帰国便の搭乗を拒否されたという話はまだ聞いていません。

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