インバウンド・訪日外国人向けビジネス

インバウンド対応するなら食文化・食習慣を知る!

外国人旅行者の食文化・食習慣は、それぞれの国や地域、民族によってぜんぜん違います。いろんな国や地域の食文化・食習慣に対応できる多様性のあるサービスを学ぶことで、日本のおもてなしは、きっとさらに世界に誇れるものになるでしょう。

執筆者:マイケル カナート

東京五輪の開催までついに4年を切りました

日本を代表するキャラクター、Marioに扮した安倍総理によるリオ五輪閉会式は記憶に新しいですね。個人的には、外国人旅行者もあの土管を使えたら、今よりもっとたくさんの人が来れるのに!と思いました。

東京五輪の開催までついに4年を切りましたね。開催期間は2020年7月24日~8月9日まで、だそうです。これまで以上に世界中の注目が集まる日本には、2020年に向けてさらに来訪者数が増えること必至。外国人旅行者に対するおもてなし、もう待ったなしですね。Hurry UP!

いよいよですね!

いよいよですね!



今こそ、日本の得意を活かせるチャンス

ここでは、外国人旅行者の食文化・食習慣について触れていきますが、それぞれの国や地域、民族によってぜんぜん違います。「外国人=全員同じ」ではないからこそ、日本が得意なサービス精神が威力を発揮します。しかしながら、いろんな国や地域の人に対応できる多様性のあるサービス、となるとまだこれからだと感じるので、この点を磨くことで日本のおもてなしは、きっと世界に誇れるものになると思います。

宗教上の理由で牛肉を食べないヒンドゥー教、豚肉を食べないイスラム教といった代表的なものは聞いたことがあるかもしれませんね。そして、欧米にはベジタリアンが多いです。さらには食物アレルギーの人も。ここに挙げた人たちには食べられないものがあるので、店側が勉強しておくとお客さんは安心できるでしょう。

食習慣だけでなく、食事の楽しみ方も、国や地域によっていろいろ

食習慣だけでなく、食事の楽しみ方も、国や地域によっていろいろ


最低限知っておきたい、食文化・食習慣

まず、最低限知っておきたいものをPickupします。

・キリスト教
基本的に食に関して禁止されているものはないのですが、一部にアルコール類やカフェインがNGな信仰者あり。春に40日間肉が食べられないレントという時期もありますが、現代は守らない人も多いです。
>要注意な食材:アルコール、茶、コーヒー、紅茶

・イスラム教
世界三大宗教のひとつで、世界人口の約1/4を占めます。信者(ムスリムと言います)が多いうえに、細かい禁止事項があります。豚肉全般(肉だけでなく、豚加工食品や油脂、調味料なども)に加え、イスラム教で認められていない動物性食材は食せません。アルコールも避けるべきとされています。
逆に、イスラムの教えで許された、健全な商品のことをハラルと言い、ハラル風に用意する必要があることも。また、イスラム歴の9月にはラマダーンという約30日間の断食月があり、旅先では断食しない人・教えを守って断食する人と考え方が分かれるので、ここにも配慮が必要です。
>要注意な食材:豚、イスラム教の畜方法で処理されていない(禁忌のものをハラムと言います)動物性食材やゼラチン、アルコール(みりん、しょうゆ、味噌など微量でも含む場合は避ける人も)

宗教全般に、動物系食材は要注意です

宗教全般に、動物系食材は要注意です


・ヒンドゥー教
牛を聖獣とするため牛肉を食しません。社会的地位の高い人や地域によって肉を食さない傾向があるようです。
>要注意な食材:牛、豚、魚、卵、生もの、玉ねぎ、ねぎ、ニンニク、にら、らっきょう

・仏教
中国、チベット、モンゴル、台湾、韓国など、大乗仏教が信仰されている地域の一部僧侶や信仰の厚い信者は、食さないものがあります。
>要注意な食材:牛、豚、魚、卵、生もの、玉ねぎ、ねぎ、ニンニク、にら、らっきょう

・ユダヤ教
食べてよいもの・食べてはいけないものを明確に分けており、この律法のことをカシュルートと言います。そして、食べてよいものは「コーシェル」と言われています。さらに、春の8日間のパスオーバーという時期には、パンやパスタなどの炭水化物や豆なども制限される定めも。詳しくはこのサイトが参考になります
http://myrtos.co.jp/info/judaism04.php
>要注意な食材:豚、貝類、鰭やうろこのない魚(メカジキなど)、肉と乳製品を一緒に食べること、ゼラチン

・ベジタリアン
基本的に、動物性の食品(肉や魚)を食べない人を指します。なお、ヒンドゥー教の影響を受けて玉ねぎなど香味野菜を食さないベジタリアンも。これについては、ヒンドゥー教を参考にしてください。
>要注意な食材:肉類・魚介類すべて、ゼラチン

・ビーガン
絶対菜食主義者・純粋菜食主義者。絶対採食主義だけに、ベジタリアンとは異なり、卵や乳製品も一切食しません。
>要注意な食材:肉類・魚介類すべて、乳製品、ゼラチン、卵、ハチミツ

・アレルギー
食物アレルギーは外国人にも多くみられるので要注意です。アナフィラキシーのような重度のアレルギー反応は生死に関わる場合もあるので下記の食材が含まれる場合は、メニューへの記載や直接声掛けで知らせるのが親切です。とくにピーナッツやナッツ類のアレルギーは、大人の生死に関わるケースの多くを占め非常に怖いので細心の注意を。
>要注意な食材:ピーナッツ(ナッツ類も含む)、卵、小麦、乳製品、エビ、カニ、貝類、そば

アレルゲン表示は、例えばこんなふうに外国人にも分かりやすく!

アレルゲン表示は、例えばこんなふうに外国人にも分かりやすく!


なお、上で紹介した食材は、ほんの少しだけ入っても、スープベースに使ってもNGです。お客さんに提供する前に、調理過程で一度でも混入したり、触れたりしたならきちんと報告しましょう。

ナッツアレルギーはとくに、ピーナッツ油少量でも、クラッシュピーナッツを1粒食べても、死んでしまうことがあります。つまり、ここで紹介したNG食材は、調理過程も含めて「一切触れたこともない」ということを保証する必要があります。

とはいえ、日々の対応は大変ですから

とはいえ、実際の経営のなかで、上記のルールや定めをすべて覚える必要はありません。ただ、世界中に視野を広げれば、事情をもつ人がたくさんいるということは知っておきたいですね。そして、すべてのリスクを理解して、その都度キッチンの内部事情を報告するのも不自然です。

食事にケアが必要なお客さんは自ら質問するはずです。その質問を受けたときに、NG食材への接触がわずかでもあるのかないのか、混入しているのかしていないのか、正確な情報を提供することが大切です。意図せず情報を公開できなかったり、いい加減になってしまうのが何より危険です。

こんなところに気をつけて!実際にあったNG例

まず、私は何でも食べられますし、和食が大好きで、日本語もできるから、個人的には問題ありません。でも、日本語のできない友人と出かけるときは、友人の代わりにお店のサービスをきちんと見ています。

あるとき、ベジタリアンの友人と店に行き、「ベジタリアンです」と宣言をして、おすすめ料理を聞いたところ、魚が入っていました。お店から「魚は肉じゃないでしょう?」と言われ、長い説明をすることになりました(実際、魚だけはOKなぺスカタリアンもいますが、友人はそうではなかった)。
このような説明が必要なお店に対しては、申し訳ないですが「この店はベジタリアンに理解がないから、次は行けないな」となります。

「ベジタリアンと言われたけれど、サラダだから、ベーコンが少し入ってもいいんじゃない?」と思われるお店にもよくあたります。このケースも、ベジタリアンとその友人は入りづらいですね。

「ちょっとだから大丈夫でしょ?」というのはお店の都合ね

「ちょっとだから大丈夫でしょ?」というのはお店の都合ね


また別のケースで、ピーナッツアレルギーの友人が、「ピーナッツアレルギーです」と伝えたところ、お店のスタッフが軽く「了解!」との返事。心配になった友人が、常に持っていたピーナッツアレルギーに関する説明をスタッフに読んでもらったところ、ハッと目を見開いて、急いでキッチンへ!

そのあとは、「~料理はナッツに振れた可能性がある。~は絶対に大丈夫。~は普段ナッツで作るから、頼まないほうがいい」とひとつひとつ丁寧に説明してくれました。このような理解度はとても安心できます。

一方で、素敵なオーガニック店に行ったときは、「これはナッツ、卵入っているけど、大丈夫?」とスタッフが自ら聞いてくれて、すばらしいなと思いました。「この店は食材のことに詳しく、とても意識している!」と安心できました。

こんなふうに聞いてあげられると親切です

前出のような、親切な店になるためには、外国人旅行者とのCommunicationが役立ちます。

お客さんに問うKey Pointは、表面的に出てこないNG食材を探し出すような質問をすれば大丈夫です。「貝とカニの盛り合わせ」を頼んだ人には、「貝アレルギー大丈夫?」と聞く必要性はありませんよね。でも、肉を避けたいお客さんには、「うちのオニオンスープはポークベースです」と説明してあげましょう。

英語文法が苦手な場合は、“食材+OK?”で通じます。

具体的には、お客さんが選んだものを指さしながら、

"Peanuts. Okay?"
"Shellfish sauce. Okay?"
"Pork-based soup. Okay?"


で十分。

レベルアップしたいと思ったら、次は、

"This has peanuts. Is that okay?"
"This has a shellfish sauce. Is that okay?"
"This is a pork-based soup. Is that okay?"


と聞けばOKです。

メニューを指さして“食材+OK?”で通じる、と言われるとできそうな気が

メニューを指さして“食材+OK?”で通じる、と言われるとできそうな気が


このほかにも、外国人のほうから、例えば下記のような質問で聞いてくるケースもあると思います。

"Does this have ●●● ?"
"Is there any ●●● in this?"

●●●の部分は、お客さんにとってリスクのある食材が入るイメージです。答えはYesかNoでOK。少しでも入っていればYesと答えます。より詳しく聞きたい場合は、“食材+OK?”を応用しましょう。

それから、無宗教派の多い日本人が気をつけたいのが、宗教観への意識。インバウンド対応しようと、よかれと思っていきなり「あなたの信仰宗教はなんですか?」という質問はとても失礼にあたります。宗教はあくまでPrivateなもの。直接的な質問ではなく、上記のようにNG食材をもとに聞くのが親切です。

最後に

もちろん、お店側のスタンスとして「うちは日本人相手にやっていく」というなら、それほど理解はいらないかもしれません。実際私としても、外国人旅行者への対応は、日本人向けのサービスがもとになっているせいか、いろいろ不慣れなところがあるなと感じます。

でも、2016年の時点ですでに街を歩く外国人旅行者が多くなっています。2020年に向けてさらに増えていくのですから、丁寧に対応できるお店の売上はきっと上がっていくのではないか、と私は思います。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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