マーケティング/マーケティング事例

アサヒは「ザ・ドリーム」でビール戦争を勝ち残れるか

アサヒビールが7年振りにスタンダードビールの新作「アサヒ ザ・ドリーム」を発売しました。ここ最近ビール市場は縮小傾向にありましたが、業界リーダーのアサヒビールのてこ入れで盛り上がりを見せるのか? サントリーなどライバルの動向も踏まえ今後のビール市場を占っていきます。

安部 徹也

執筆者:安部 徹也

マーケティング戦略を学ぶガイド

アサヒビールが7年振りに投入した「アサヒ ザ・ドリーム」

アサヒundefinedザ・ドリーム

アサヒビールは7年振りにスタンダードビールの新作を投入した!


3月23日、アサヒビールから新製品が発売されます。

その名も「アサヒ ザ・ドリーム」。
アサヒビールにとって実に7年振りのスタンダードビールの新作です。

CMには今最も話題を集める有名人のひとりであるラグビーの五郎丸歩選手を起用し、大々的なプロモーションを展開。アサヒビールの7年振りの新製品にかける意気込みがヒシヒシと伝わってきます。

五郎丸選手のフレッシュなイメージとどんな強敵でも恐れずに前へ前へと進んで行く姿が、アサヒビールが「アサヒ ザ・ドリーム」で“ビールの新しい時代を切り開く”というさらに高みを目指す挑戦にとてもマッチしているように映ります。

ビール業界No.1企業であるアサヒビールといえば「スーパードライ」と言われるほど、売上のほとんどを「スーパードライ」が占めています。ところが、最近ではビール市場の縮小や、キリンやサントリーなど強力なライバルの攻勢によって苦戦を強いられているのが現状なのです。2015年には、1億383万ケースの「スーパードライ」が出荷されましたが、この出荷数は前年比97.9%と2.1%のマイナスに終わりました。

そこで、アサヒビールにとってはブランドのてこ入れや新商品の投入で再び成長軌道に乗せることが喫緊の課題であり、その意味で満を持して市場に投入されたのが、「アサヒ ザ・ドリーム」だったのです。


実際に「アサヒ ザ・ドリーム」を飲んでみた

実際に「スーパードライ」と「アサヒ ザ・ドリーム」を飲み比べてみると、辛口でシャープな味わいが特徴の「スーパードライ」に対して、「アサヒ ザ・ドリーム」は口当たりがソフトでのどごしがさっぱりしていて、より万人受けしそうな印象を受けました。

アサヒビールは、新製品開発にあたって、“コクと爽快なキレを両立した味わい”を目指したうえに、ビール大手の主力製品で初めて糖質50%オフを実現するなど、新たな顧客を切り開くための切り札的な戦略製品に仕上がったといっても過言ではないでしょう。

これまでアサヒビールの「スーパードライ」に頼り切った経営は“一本足打法”と表現されてきましたが、この「アサヒ ザ・ドリーム」が2トップとしてその一翼を担い、スタンダードビール市場全体の底上げとアサヒビールのさらなる成長を果たすかが注目されます。

 

アサヒビールがスタンダードビールに力を入れる背景とは?

アサヒビールが7年振りにスタンダードビールの新作を投入し、主力の「スーパードライ」と2本の柱で再び成長を目指していく背景には、来年度の税制改正で見込まれる麦芽比率などに応じて異なるビール類の酒税の見直しがあります。

ビール類は価格帯に応じて、プレミアムビール、スタンダードビール、発泡酒、新ジャンル(第3のビール)という4つのカテゴリーに分類することができます。

このうち、プレミアムやスタンダードビールには350mlあたり77円、発泡酒は47円、第3のビールには28円の酒税が課せられています。

ただ、これらのビール類の飲用シーンや味覚にはほとんど大差がなくなってきており、税金の差を是正すべきという議論がなされています。そこで、2016年度の税制改正でビール類の税額について、ビールを77円から段階的に減税していく一方で、発泡酒と第3のビールは増税し最終的に55円程度に統一する方向で調整が進んでいるのです。

このようにビール類の酒税が統一されれば、現状割安な発泡酒と第3のビールは増税分を値上げせざるを得ないでしょうし、逆に減税となるビールは値下げの余地ができて、発泡酒や第3のビールと価格差が小さくなります。

結果として、これまで我慢して発泡酒や第3のビールを飲んでいた消費者が再びビールを購入する機会が高まってくると予想され、ビール各社は先を見越して、スタンダードビールを今一度見直して、商品の強化を図っているというわけです。

次のページではライバル他社の動向を踏まえ、今後のビール戦争の行方を占っていきます。次ページへお進みください!
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