子育て/子供のしつけ

「父親の威厳」は子育てに必要か?(3ページ目)

地震・雷・火事・親父……。昔は「おそろしいもの」に数えられていた父親ですが、昨今は「やさしいパパ」が増えてきました。祖父母世代からは「父親の威厳」がなくなったと嘆く声もちらほら……。「父親の威厳」とは、何なのでしょうか? 子どもを育てる上で、果たして必要なモノなのでしょうか?

福田 由紀子

執筆者:福田 由紀子

臨床心理士/メンタルケア・子育てガイド


父性的な機能は「社会のルールを教えること」

父息子

ひとりの人間として、どのように生きているのかが問われています

子どもに社会のルールや善悪を教えることは「父性的な機能」だと考えられてきました。今は共働き家庭も増えていますが、夫が外で働いて妻が家で家事育児介護という「性別役割分業」が当たり前だった時代に、社会との接点を多く持っていたのは圧倒的に父親だったからなのでしょう。

また、家長が絶対的な権力を持ち、家族を支配していた「家父長制」の時代には、家長が家庭内のルールも決めていました。女性は「子どもの頃は父や兄に、結婚してからは夫に、夫の死後(老いてから)は息子に従うもの」とされており、発言権を持ちませんでした。そうした背景もあったのでしょう。

「父性」も「母性」も、性別に関わらず、誰もが「両方」持っています。父親がより「母性的」だったり、母親のほうが「父性」が強い家庭もあるでしょう。ただ、子どもたちは「自分と同性の親」を、生き方のお手本(ロールモデル)にすることが多いようです。

暴力で人を傷つけるのは、どこから見ても「悪」いことです。暴力はいけないと子どもに教えておきながら、パートナーや子どもに暴力を振るっていたり、暴力に甘んじていたりする親を見ると、子どもは混乱します。そして、暴力の加害者や被害者になりやすくなります。暴力は、世代連鎖しやすいのです。

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威厳よりも「大人としての矜持」を

薄っぺらな「威厳モドキ」を振りかざしていたら、必ず嫌われます。これは会社の中でも同じですよね。暴力の正当化は、子どもを容赦なく傷つけ違和感を植え付けますが、その嘘(身勝手な言い訳)は、子どもが大人になる頃には必ずバレます。

威厳は「総合人間力」ですから、親になったからといって、一朝一夕にかもし出せるものではないですよね。ふんぞり返ってみても、言葉数を減らしてみても、子どもには「お父さん、どうしちゃったの?」と心配されるのがオチ。

「やさしいパパ」、いいではないですか。やさしいことを理由に、子どもに舐められることはありません。やさしさと甘さは違います。舐められるのはむしろ「言動に矛盾のある大人」なのではないでしょうか。人には厳しいのに自分には甘いとか、言っていることがコロコロ変わるとか。大人のずるさは、実は子どもにはお見通しです。

「大人としての矜持」を大事にしましょう。社会のルールを守りながら、社会の一員として働き、生活している姿を見せること。自分らしく生き生きと人生を楽しんでいること。

子どもが「大人ってスゲエ」と思うのは、実は、日常の何気ない振る舞いだったりするのではないでしょうか。
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