カジノ合法化を左右するギャンブルの定義
2020年東京五輪に間に合わせるため、政府も急ピッチで作業を進めているが、大きな懸案が残されている。その一つがパチンコの透明化だ。
貸し玉総額20兆円、売上げ3兆6,000億円というパチンコ事業だが、日本ではギャンブルではないことになっており、このままカジノだけ合法化すれば矛盾が生じることになるからだ。
日本のギャンブル全体像
まず、日本におけるギャンブルの全体像を見ておこう。現在日本にあるギャンブルの収益をまとめたものが次のデータだ。【ギャンブル】 【収益】
競馬 6,918億円
競艇 2,369億円
競輪 1,516億円
オートレース 172億円
宝くじ 9,450億円
サッカーくじ(toto) 1,080億円
----------------------------
パチンコ 3兆6,000億円(推計)
(数字は2013年度)出典:宝くじについては大和総研「統合型リゾート(IR)構想と検討課題(3)」より引用.サッカーくじについては(独)日本スポーツ振興センター資料をもとに筆者が概算.パチンコについてはダイコク電機株式会社の「DK-SIS白書」より引用.それ以外は経済産業省製造産業局のデータをもとに筆者が概算。※あくまで筆者調べによりますので正しくは主催者にお問い合わせください。)
主催者の種類によって許される内容が違う
この中で突出して収益が大きいのがパチンコだ。パチンコは20兆円産業とも言われるが、それはあくまで「貸し玉料総額」のことなので、他のギャンブルと同じ尺度で比較するには収益の3兆6,000億円で見るべきであり、ここではその数字を採用した。
そんなパチンコだが、上のリストで一つだけ事業主体(主催者・胴元)の種類が異なっている。
「競馬」「競艇」「競輪」「オートレース」「宝くじ」「サッカーくじ」は国または地方自治体が主催者であるいわゆる「公営」ギャンブルに入るが、パチンコだけは民間業者が運営しているのだ。
実はこの点がカジノ合法化に複雑な事情をもたらしている。
カジノとパチンコにおける矛盾
ゲームの結果得られたものをお金に戻す行為が行われた瞬間、それはギャンブルとみなされ、日本では民間業者がギャンブルを営業してはいけないことになっている。よって、ゲームで得られたチップを店内で換金するカジノは当然のことながらギャンブルであり、民間企業が営業するのはその違法性を阻却するための法律が必要となる。いま議論されているカジノ法案によって、それを合法化することが計画されている。
一方、同じ民間企業であるパチンコでは、すでに「事実上の換金」が行われている。
出玉をいったん店内で「特殊景品」(=換金専用の景品)に交換し、それを店外にある景品交換所で換金するという手順だ。パチンコ店自身が換金していないものの、パチンコ利用者のほぼ全てが、出玉を「最終的に」換金するのを前提にパチンコをしているのが現実だ。