消費者こそ主役
変化のきざし
テレビが普及し始めた1960年代初頭から、広告業界における主役はテレビだった。広告代理店という名称も、メディアの広告枠をメディアの代理店として販売するという意味だ。広告代理店に占めるテレビ広告費の割合は大きく、テレビ局の代理としてCM枠を販売することは、広告代理店の経営そのものに関わることだったのだ。クリエイティブに富んだテレビCMがもてはやされたところで、広告代理店の本音を言えば、広告主からテレビCM枠をもらうためのサービス的な位置づけを脱することが出来なかった。
しかし、その状況が約半世紀ぶりに変わろうとしている。
「続きはWebで」登場の背景
半世紀ぶりの変化を作るきっかけになったのはインターネットだ。バブルがはじけ、人々はモノを買わなくなった。その結果、モノを買ってもらうために、広告代理店はよりインパクトあるテレビCMを作ろうとするようになった。インパクトあるテレビCMで広く認知を獲得して、そこからWebへ人を誘導して、理解を深めてもらい、購入へと結びつけて行くという方程式を取るようになった。それが「続きはWebで」というフレーズに代表される「TV→インターネット」という広告手法だ。最初の頃こそ、物珍しさもあってかインターネットへの誘導は効率的だったが、時代が流れるにつれ、誘導率は低下していった。この段階では、まだインターネットのコンテンツはテレビCMの補足的な役割に過ぎなかったのだ。
数字で見る「続きはWebで」の必然性
テレビ離れが進んでいると言われるが、数字を見ればテレビCMが認知獲得のメディアとしていまだ圧倒的な力を誇ることがわかる。例えば、視聴率10%のテレビ番組とは、日本の総人口の10%、つまり約1200万人が視聴している番組ということになる。深夜番組で視聴率が2%ならば240万人の人が視聴しているという計算だ。この数字はヤフーなど一部の人気サイトを除けば、予算効率を考えても広告媒体としてウェブよりもテレビが上回っていることを意味する。広告主はこの状況を理解しているから、テレビCMで認知を獲得し、興味を持ってもらった視聴者にウェブで詳しい説明をするという手法を取って来たのだ。あくまで主導権はテレビにあり、ウェブは補足的な存在だったのだ。