5年に1度、公的年金の財政検証が行われる
老後生活を実りよくするために
なぜ5年に一度の財政検証が行われるのかといえば、今後の年金財政の均衡を保つために、その時々の状況に応じて年金額の調整などを行う仕組みが構築されているからです。今回はこの仕組みを解説します。
年金額は、毎年度、賃金や物価の変動に応じて変わる仕組み
公的年金額は、毎年度、賃金や物価の変動に応じて自動改定する仕組みとなっています。この仕組みがあるため、仮に物価や賃金が上昇すれば、年金も自動的に金額が増える(実質的には維持する)ことになります。これだけ見ればよい仕組みといえますが、もちろん、現状の少子高齢化を考えると年金財政の維持も考えていかなければなりません。そこで考えられた仕組みが、マクロ経済スライドです。マクロ経済スライドとは、年金額は賃金や物価の変動を考慮するほか、年金を支える現役人口の減少や平均余命の伸びを年金額に反映する仕組みです。つまり、賃金や物価が上昇すれば年金額は上がる反面、現役人口の減少や平均余命の伸びは年金額を下げることにつながるため、マクロ経済スライドが発動されれば、実際には年金額は賃金や物価が上がるほどは伸びないことになります。
これにより年金額の上昇を抑えることにつながったはずだったのですが、実はマクロ経済スライドは一度も発動されていません。なぜかといえば、デフレ下にあったからです。デフレ下にあれば、物価や賃金は下落します。これに現役人口の減少や平均余命の伸びを加えれば年金額は大きく減ることにつながるため、発動するのが難しかったといえます。
物価が下がった分は年金額も下がってきている
なお、物価の変動分に関しては、既に年金額の変動にもつながっています。既にご存知かと思いますが、平成25年10月から1%、平成26年4月から1%、平成27年4月から0.5%分年金額が減額されることになっています。実際にはその時の物価分も考慮されるため、必ずしも減るとはいえませんが、これらは過去物価が下落したにも関わらず、年金額を下げてこなかったことが要因です。どういうことかといいますと、平成11年~13年において物価が下落した分を調整し、負担を分かち合うという観点から、昨年から現在の年金受給者においてトータルで2.5%分の年金額の減額が行われることになったのです。その時に下げなかったツケといいましょうか…。
今後はマクロ経済スライドが発動する可能性は大きい
それでは今後このマクロ経済スライドは発動されるのでしょうか。日本銀行による異次元の金融緩和が行われはや1年以上が経過していますが、確かに消費者物価は上昇してきています。こうした影響が持続的なものとなるのであれば、年金にも影響がでてくるでしょう。つまり、今後はマクロ経済スライドが発動される可能性は大きいのではないかといえます。発動されれば、人口減少などを加味され、受け取ることができる実質的な年金額は減額していくことになるでしょう。年金財政を考えれば発動した方が財政悪化に歯止めはかかるといえますが、もらう側から見れば老後の生活設計が狂うことにもつながります。
発動されたからといってすぐに生活に大きな支障がでるといったところまではいかないと思いますが、今後いつ発動されてもよいように、余裕をもった人生設計を描いておきたいものです。