2/2 三谷幸喜×竹内結子『君となら』開幕リポート！ [演劇・コンサート] All About

17年振りに帰って来た
三谷流お茶の間ホームコメディ『君となら』

(撮影　演劇ガイド・上村由紀子)

理髪店を営む小磯家。次女のふじみ(イモトアヤコ)と長女のあゆみ(竹内結子)があゆみの恋人・ケニー(小林勝也)について話をしている。次第に噛み合わなくなっていく2人の会話。どうやら”青年実業家”のケニーは実は70歳で父親の国太郎(草刈正雄)より年上らしい。この事実を両親にどう伝えようかと悩む2人。と小磯家に突然ケニーが現れて、事態は思わぬ方向に……。

(撮影　演劇ガイド・上村由紀子)

あゆみとふじみの父親・国太郎が事態を把握するまでが第一段階。ここまでは登場人物の”嘘”より”勘違い”が話を広げていく訳ですが、天然モード満載の母・よりえ(長野里美)が帰宅し、ケニーと一緒に写真に写っている彼の息子・玄也(長谷川朝晴)をあゆみの恋人と勘違いする辺りから物語は第二段階に入ります。以前、よりえが混乱しておかしな行動に出た事を知っているあゆみ、ふじみ、国太郎の3人は嘘を吐く事で場を収拾しようと奮闘。そして父を追って現れた玄也によって小磯家は益々大変な状況に。

(撮影　演劇ガイド・上村由紀子)

コメディには「観客と一部の登場人物だけが真実を知っており、その登場人物がどんどん追い詰められピンチに陥って行く」という1つのお約束パターンがあるのですが、本作でその役割を一手に担うのが父親・国太郎役の草刈正雄さん。三谷さんが「いつかコメディをご一緒したかった」とオファーをしただけあって、普段のダンディなイメージとは真逆の昭和のおとっつぁんを超好演。”絶対やりそうに見えない”草刈さんがあんな事やこんな事を懸命にやる姿に客席は大爆笑です。

(撮影　演劇ガイド・上村由紀子)

(撮影　演劇ガイド・上村由紀子)

『君となら』が初舞台となる竹内結子さんとイモトアヤコさん。竹内さんは全ての原因が自分にあるにも拘らず、いつもほわんとした雰囲気でその場に居るあゆみを等身大で演じている印象。くるくる変わる表情と立ち姿の美しさがとても魅力的です。次女・ふじみ役のイモトさんは場を収拾する為アグレッシブに動き、指示を出す「投げ」の芝居担当。「受け」の芝居が多い草刈さんとの息もピッタリ。外見的にはさほど似ていない3人がどんどん本物の親子に見えてくるのがThe演劇マジック。

(撮影　演劇ガイド・上村由紀子)

天然モード炸裂の母・よりえを演じる長野里美さんとケニーの息子・玄也を演じる長谷川朝晴さんのお2人は流石の安定感でガンガン笑いを取っていきます。こういう作品は誰かの呼吸や動きが少しズレただけで全体のバランスが一気に崩れてしまうのですが、絶妙に組み立てられ計算された三谷さんの戯曲が腕のある俳優たちによって具現化されている様子は爽快！実は主人公のあゆみ以外の全員がポイントポイントでキーパーソンになっていく構成にヤラれます。

どこかシビアな目線を以って人間の姿や人が生きる様を描いた『国民の映画』や『コンフィダント・絆』『YouAreTheTop 今宵の君』等の三谷作品とは一味違い、緻密な計算の積み重ねで一直線に笑いを追求していく本作『君となら』。1995年、97年に上演されたこの作品が以降の『バッド・ニュース☆グッド・タイミング』や『HR』『酒と涙とジキルとハイド』等三谷さんが描くシチュエーションコメディの流れに繋がっていったのではないでしょうか。