演劇・コンサート/おすすめ舞台・公演

劇場へGO! 2014年7~8月演劇ガイドお薦め舞台

夏は元気がなくなるとも囁かれる演劇界。でも、今年の夏の劇場はいつにも増して熱いんです! バラエティ豊かな「エンタメの宝石箱や~」的なラインナップが勢揃い。と言う事で、演劇ガイド・上村由紀子が特にお薦めする『君となら』 『ショーガール』 『マホロバ』 『太陽2068』 『ウォー・ホース』 『窓に映るエレジー』 『ガラスの仮面』をご紹介しちゃいます!(7月22日『マホロバ』初日観劇レビュー追記)

上村 由紀子

執筆者:上村 由紀子

演劇ガイド

夏は元気がなくなると言われる演劇界。分かります、分かります……室内でじっと舞台を見つめるより旅行、花火、ビアホール、BBQ、お祭りに海……浴衣や水着でアクティブに過ごしたい季節ですよね。でも、でもっ 2014年の夏の劇場はいつにも増して熱いんです! アノ伝説の舞台の再演やイケメン2人の冒険活劇、そしてスピルバーグが涙した大作舞台にナンセンスコメディ、誰もが知っている超ヒット少女漫画の舞台化作品……と見逃すのは勿体なさ過ぎるラインナップが勢揃い! 今回はその中でも演劇ガイドがこの夏特にお薦めしたい7作品をPick Upしてみました。

笑い声で台詞が聞こえない!?
三谷コメディの真骨頂 『君となら』

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伝説の舞台『君となら』

1995年と1997年に山田和也さん演出、斉藤由貴さん、角野卓造さん、佐藤慶さん他の出演で上演された『君となら』。客席に湧き起こる笑い声で劇場が揺れたと言われる本作が、満を持し三谷幸喜氏自身の演出で甦ります。

平凡だが幸福な毎日を送る小磯家の長女・あゆみ(竹内結子)の婚約者・ケニーは何と、父親の国太郎(草刈正雄)より年上の男性!この事実を家族にどう打ち明けようかと、あゆみが妹のふじみ(イモトアヤコ)に相談をしていると、突然ケニー(小林勝也)が小磯家にやって来てしまう……。父親はケニーをあゆみの恋人の父親だと勘違いし、母親(長野里美)は同じく突然訪れたケニーの息子(長谷川朝晴)をあゆみのフィアンセと勘違い。嘘が嘘を呼び、誤解が誤解を呼んでいく……。

2014年、『国民の映画』(再演)、『酒と涙とジキルトハイド』、『抜目のない未亡人』と、既にタイプの違う3作品を送り出している三谷幸喜さん。自身の作でありながら、演出は初となる本作でどんな笑いを巻き起こしてくれるのか。三谷喜劇の真骨頂ともいえる超期待の1本です!

◆パルコプロデュース公演 『君となら』 → 公式HP 

真夏の夜の大人の時間 『ショーガール』


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大人の為のステージ『ショーガール』

1974年から1988年まで福田陽一郎氏の脚本構成・演出、そして木の実ナナさん、細川俊之さんお二人の出演により毎年1回PARCO劇場でシリーズ上演されたパルコ・ミュージック・ステージ『ショーガール』。大人の為のちょっと切なくほろ苦い舞台が渋谷に帰ってきます!

ガイドは10代の頃に何度かシリーズを観ているのですが、まだ子供だったせいか(昭和……遠い目)恋愛の機微、みたいなポイントは良く分からず、とにかく木の実ナナさんと細川俊之さんのカッコ良さにただ見とれていたような気がします。

新生ショーガールの作・演出は先にご紹介した『君となら』と同じ三谷幸喜さん。そう、この舞台は『君となら』終演後のPARCO劇場で上演されるのです。2本続けて三谷ワールドに浸るのもいいですし、先に食事やお酒を軽く済ませてその余韻を劇場に持ち込み、上演時間約1時間の大人のショーを愉しむ、なんていうのもアリかもしれません。

初代の木の実ナナさんと細川俊之さんは新鮮な気持ちを大切にする為、公演期間中は一切舞台上以外でのコミュニケーションを取らなかったそうです。後を引き継ぐ演劇界のサッカーマイスター・川平慈平さんと、『国民の映画』で陰影のある大女優・ツァラを演じたシルビア・グラブさんのお2人がどんな「男」と「女」を見せてくれるのか……「気恥ずかしくなる位お洒落な舞台」……大人のデートにお薦めしたい1本です。

◆パルコ・ミュージック・ステージ『ショーガール』Koki MITANI’s SHOW GIRL

→ 公式HP


スーパーアクションエンターテイメントに熱く酔う! 『マホロバ』


マホロバ

『マホロバ』@シアタークリエ

未だにオジサマ達に言われる事があります。「演劇?何だか暗くてダサいよね~。」 そういうオジサマ達はご存知ないのでしょう。今の演劇界はイケメン演劇男子たちの台頭や高レベルのエンターテイメント作品によって、若い女性の観客がガンガン増えているという現実を。勿論左脳をガッツリ使ってある種難解な世界に身を浸すのも演劇の楽しみ方の1つですが今は夏! 難しい事を考えず目の前で起きる3次元のエンタメに心を熱くするのも一興です。

本作『マホロバ』は演劇界の新勢力30-DELUXが約10年前の旗揚げ直後に上演し、そのクオリティの高さから幻の傑作と言われてきた舞台。今回オリジナル版の作・演出を担当した西森英行氏を迎え、一新されたキャストと共にまだ”日本”という国がなかった時代の物語を壮大に描きます。

主演の2人=言葉も知らない野生児・ザッパを演じる村井良大さんと、皇子でありながら戦を好まないミズハを演じる佐々木喜英さんは、そのビジュアル偏差値の高さに加え、身体能力も演技力もきっちり備えた超実力派。2人を取り巻く共演者も佐藤アツヒロさん、大和田獏さん、彩輝なおさん、彩乃かなみさん、岸祐二さん、サントス・アンナさんら豪華キャストが揃い、さらに主宰・清水順二さんをはじめとする30-DELUXの劇団メンバーもプロジェクトに参加!

演劇=暗くてダサい……なんて概念が一瞬で覆される「笑って泣けてカッコいい」夏にぴったりのエンターテイメント。観劇後はきっと元気になれますよ!

『マホロバ』初日観劇レビュー (7月22日追記)

2014年7月17日に初日を迎えた『マホロバ』。アクション・プレイを得意とする30-DELUXが旗揚げ直後に上演した”幻の名作”が10年の時を経て、東宝の製作によりバージョンアップされた舞台として見事に蘇りました!

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(写真提供 東宝演劇部)

”屍肉喰らい”と人々から疎まれ蔑まれる野生児・ザッパ(村井良大)と、一帯を治めるキバツクニの皇子でありながら、ザッパと心を通わせ、次第に辛い運命に飲み込まれていくミズハ(佐々木喜英)。この2人を軸に、ミズハの兄・イコマ(佐藤アツヒロ)、姉のミズホ(彩乃かなみ)、父王・クロガネ(岸祐二)らキバツクニの人々とアカツチの村の長・オリベ(大和田獏)、その孫・ヒノコ(サントス・アンナ)、そして樹海の民・女王イバラギ(彩輝なお)らが織り成す一大冒険活劇。

まず登場人物総出演・オープニングのムービングで一気に心の熱量が上がり、その後始まる物語に胸の高まりが止まりません。導入部から惜しみなく展開される殺陣やキレっキレのアクションは流石ですし、W主演を務める村井さん、佐々木さんの熱く的確な演技は観客を自然に舞台の世界観へと引き込みます。

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(写真提供 東宝演劇部)

人々から虐げられ、捻れてしまった思いを抱えながら、大切に思う者達の為に戦おうとするザッパと、愛する者が必ず自分の元を去ってしまうという寂しさや、近しい人物の陰謀により他者を信じられなくなるミズハ。図らずも外からの力で変わっていく2人の変容は胸を打ちます。これはひとえに形に走らず、演じる人物の造形を丁寧に繊細に作り上げていった2人の俳優の勝利。嘘のない演技と登場した瞬間に場を支配する華やかさには無条件に打たれます。

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(写真提供 東宝演劇部)

周囲を固める俳優陣もとても魅力的。個人的には笑いをきっちり取りながら、その後に続く冷酷さや恐ろしさを見事に表現した父王・クロガネ役の岸祐二さんと、謀略に手を貸しながら、ザッパの前では乙女になってしまうというある意味めちゃめちゃなキャラクターをリアルに演じきったナルカミ役の清水順二さんが特にツボでした。決して広いとは言えないクリエのアクトスペースを巧みに使い切った躍動感溢れるステージングも一見の価値有り!

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(写真提供 東宝演劇部)

殺陣やアクションの迫力に気分が上がり、随所に散りばめられたポイントで笑い、2人の主役の華と演技にドキドキし、自分にとっての「マホロバ」とは何なのだろう、それは一体どこなのだろうと不意に心の柔らかい部分をガシっと掴まれる……。演劇=ダサくて暗くて説教臭いと思っている人にも、イケメンが主演のアクションプレイ=どうせ中身なんて薄くて主役のビジュアル頼りでしょ……なんて食わず嫌いになっている人にも是非体感して頂きたい作品。もしかしたらあなたの「演劇」の概念を変える1本かもしれません。

◆『マホロバ』 → 公式HP


昼と夜に分かれてしまった未来で人はどんな”希望”を見るのか
『太陽2068』


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撮影:Minamoto Tadayuki

バイオテロにより拡散したウイルスで変異し、高い知能と驚異的な身体能力を持っているのに太陽光の下では活動できない「ノクス」と呼ばれる新たな人間と、彼らの出現により古くなってしまった普通の人間「キュリオ」。昼と夜、2つの世界に分けられた人間達の運命が“ある事件”をきっかけに動き出していく……。

SF的な作風と俳優陣の肌理の細かい演技で人気の劇団イキウメが2011年に青山円形劇場等で上演した『太陽』を、イキウメ主宰・前川知大氏自らが手を加え、78歳にして精力的に活動を続ける鬼才・蜷川幸雄氏に託した『太陽2068』。

キュリオとして貧困の中で育ちノクスに憧れる奥寺鉄彦役には綾野剛さん、ノクスとして生まれながらキュリオに理解を示す森繁富士太役に成宮寛貴さん、そしこれが初の舞台出演となる前田敦子さんらのキャストに加え、蜷川組に馴染みの深い実力派俳優達が周囲をガッチリ固めます。

濃密な小劇場で普段の生活のすぐ横にあるSF現象を描いてきたイキウメ・前川さんの戯曲を、シアターコクーンという広がりのある空間で蜷川さんがどんな色彩に染めていくのか、そして蜷川幸雄という劇薬に触れたキャスト達がどんな化学反応を巻き起こすのか……今から54年後に訪れるかもしれない近未来の世界を劇場で体感して下さい。

Bunkamura25周年記念 『太陽2068』 → 公式HP


次のページではミュージカル界の貴公子お薦めの感動大作やアノ超人気演劇少女漫画の舞台化作品をご紹介!


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