誤ったリストラが生んだ必然的事件
今回の事件は一企業の情報漏洩事件などではない。日本に蔓延する「誤ったリストラ」が生んだ必然的な事件なのだ。
今回の事件で、大手マスコミは情報管理体制の不備を指摘している。
たしかに情報漏洩という面だけで見ればそうだが、問題は、なぜ漏れて困るような社内の最重要項目の取り扱いを外部に委託するようなことが起きたかだ。
背景にあるのは日本企業に蔓延する「目的を見失った誤ったリストラ」だ。
本来のリストラは事業の再構築を意味する
現代の日本では、リストラという言葉が従業員の解雇をはじめ、給与や残業代のカットや業務の外注化といった狭義の意味で使われている。しかしリストラとは、本来、社会の志向やビジネス環境の変化に伴い、不要な業務を削減し、人材や資金を必要な業務に回すことで企業の処理能力を向上させる「事業再構築」を意味している。
外注つまりアウトソーシングとは、より重要な業務に社内のリソースを集中させるため、どの会社にも存在するような「定型的間接業務」を切り離し、コストダウンを図るのが目的だ。
ところがベネッセのしたことは、通信教育事業として生命線とも言えるような顧客情報を外部に委ねたのだから、本末転倒な行為だったと言える。
国の根幹を揺るがすほど深刻な流出が起きている
今回の事件は派手に事件化されたことで注目されたが、実は、事態の深刻さでは比較にならないほど重大な「流出問題」が他の日本企業で起きている。それは「人材の流出」だ。人材の流出がとりわけ深刻なのは、人と一緒に情報と技術まで流出してしまうからだ。
「企業体質の改善」「経営のスリム化」と称し、近年の日本企業は過酷なリストラを行ってきた。日本経済の柱となってきた大手電器メーカーはその代表で、毎年のように数千人から数万人にも及ぶ従業員を解雇してきた。
しかしその結果は悲劇的だ。大規模な解雇をした翌年に再び大規模な解雇をしなければならないほどその効果は薄いのだ。それは根本的な問題を解決しないまま人だけ減らしているからだ。