人の「見かけ」が信用に与える影響
昨年末にスキーで負傷した際、主治医から薦められたのがきっかけとのこと。それ以来、彼女は会議中に食べていたクッキーなどの間食をやめ、半年弱で10キロの減量に成功したという。
見かけについての発言はタブー
このニュースが流れたのにはやや驚いた。ぼくも時々取材でドイツに行くが、あの国では人の見かけを口にするのはタブー中のタブーだからだ。美しい女性を美しいと褒めるのさえ、そうでない人への差別を生むとして、やめたほうがいいとされるほどだ。まして人の体型について口にするなどもってのほかとされるからだ。以前、トイツ人女性が洋服を買うのに付き合ったことがあるが、似合うかどうかの感想を聞かれた時、自分の言葉がタブーになりはしまいかと非常に気にしたことを覚えている。
そんな事情から、今回医師がダイエットを薦めたのも、あくまで健康面を考えてのものであることが推察される。
ルックスを褒めることは
能力の否定につながるという意見も
今回、独米首脳会談に出席するためホワイトハウスを訪れたメルケル首相に対して、記者は「スポーティになった」「フレッシュになった」という表現にとどめたように、アメリカ合衆国においてもこのテーマはかなりデリケートだ。オバマ大統領が2013年4月、女性のカマラ・ハリス・カリフォルニア州司法長官に対し、「全米で最もルックスの良い司法長官」と発言したことが、セクシャルハラスメントだとして批判を浴びた。
褒めたのになぜ批判を浴びるのか。日本社会ではなかなか理解されないと思うが、フェミニズムに詳しい人によれば、ルックスを褒めることは遠回しに仕事の能力を否定することにもつながるからという。
しかし、見かけは信用に影響する
だからといって、欧米で、見かけが全く何の影響も持たないかというと、そうではない。言葉には出されないだけで、ビジネスにおける影響は大きい。欧米では、喫煙と並び、肥満はビジネス上でマイナスであることはすでに知られている。自分をコントロールできない人と見なされてしまうからだ。
ぼく自身が海外での仕事もするようになった20代はじめ、会社の上司や取引先の社長などから繰り返し言われたことがある。
「欧米(とくにアメリカ)で成功したければタバコは吸うな。肥満になるな」
(現代では差別にも繋がりかねない難しい内容なので、ここに記すのも迷ったが、あくまで20年以上前の話としてご容赦いただきたい。)
若手だったぼくに対して彼らは繰り返し言った。欧米(とくにアメリカ)では言葉と心は全く違うこと。相手の嗜好や見かけについて言葉では何も言わないが、それはあくまで社会的ルールに過ぎず、心の中では厳しく見定めをしており、自制心のない人と認識されたら、ビジネスの相手として信用してもらえないこと。
日本では「人を見かけで判断してはいけない」というが、それはあくまで日本での話であり、欧米では見かけで厳しく判断されていることなどだ。