意外に多い?日本の薬物の生涯経験率は1.5%!
ストレス増大で薬物に走る?
しかし、薬物乱用の問題は今に始まった話ではありません。ただ、昔は若年者層が手を付けるものと想像された薬物が今では40代以上で増加している模様です。ここでは覚せい剤の実態を解説するとともに、なぜ40代以上が覚せい剤などの麻薬に手を染める可能性があるのか、考えていきたいと思います。
まず、覚せい剤など薬物に手を染める割合がどのぐらいなのか説明します。厚生労働省「薬物乱用の現状と対策(平成26年2月)」によれば、日本における薬物(有機溶剤除く)の生涯経験率は1.5%。これは、大麻や覚せい剤などの薬物をこれまでに1回でも経験したことがある人(15~64歳)の割合を指しています。つまり、100人に1人ないしは2人ぐらいは、何かしらのかたちで薬物を経験したことがあると考えられます。
単純に考えれば、日本の人口が1億2500万人だとすればその1.5%、つまり187万人ほどの人が経験する可能性がある薬物。もちろん、これはあくまで推定であって、また規制がかかる前は合法だったものもあることを考慮すれば、違法行為による経験者は必ずしもこれだけの人数がいるかどうかはわかりません。ただ、私たちの生活において必ずしも遠い存在にあるものとは限らないことがわかります。
ちなみに、欧米と比べれば日本の生涯経験率は非常に低いです。アメリカでは大麻の生涯経験率だけで41.2%となっていますから、他国と比較すれば薬物がそこまで蔓延はしていないともいえます。
平成25年の覚せい剤関連の摘発者は10909人!
薬物全体の話から覚せい剤に話を戻しましょう。警察庁の統計によれば、覚せい剤に関連して摘発された人は平成25年の1年間において10909人となっています。1万人も超えているのか!?と考えると薬物にはびこる人が多いことがよく分かります。ただし、この摘発人数は全体で見れば減少傾向にあります。一方、ひそかに摘発者が増加しているのは、40代以上の人々。冒頭に述べたように、以前は若年層における覚せい剤利用の摘発が多かったものの、今では40代以上の人々が摘発されるケースが多くなっているのです。
ASKA容疑者も56歳であることからまさにこの年齢層に該当します。それでは一体なぜ、中高年が覚せい剤に手を染めるのでしょうか。それは、ストレスに原因があると想定されます。芸能界を一例として考えてみましょう。ASKA容疑者のような芸能人や40代以上の会社の中堅管理職の場合、仕事で多忙を極めるとともに、周囲からのプレッシャーなどから覚せい剤に手を染める可能性があるといえるのではないでしょうか。また、芸能界のようにその人の腕一本で仕事が成り立つ側面が強い職業では、なかなか困った時の相談相手も多くはないといえるのかもしれません。そうした孤独感といった側面も覚せい剤使用をもたらす要因といえるかもしれません。その他、性的欲求から覚せい剤を利用するケースもあります。また、芸能界では黒いつながりが多いとよく言われていますが、そうした背景も覚せい剤使用をもたらすことにつながっているのかもしれません。
覚せい剤は一体いくらぐらいするのか?
さて、それでは覚せい剤は一体いくらぐらいするのでしょうか。実は覚せい剤の末端価格(利用者に渡る時の価格)は下落傾向にあります。覚せい剤1グラムあたりの価格は現在ではおおよそ7万円程度とみられています。平成21年頃は1グラム当たり9万円前後だった模様ですから、大きく下落しているのがわかります。これは、需要と供給の関係から判断できます。要するに、供給量が増えることで、価格が下落しているといえるのです。
警察庁によれば、平成25年1年間に押収した覚せい剤は前年比138.7%増の831.9キログラム。年間の押収量が1トンに迫るのは実に13年ぶりとのことで、日本国内にもたらされる覚せい剤は急増している可能性があります。
一度手を付けるとなかなか抜け出すことができないといわれている薬物。今に始まった話ではありませんが、薬物に手を出せば最終的には身を滅ぼすだけです。しかも違法なわけですから当然手を出してはなりません(当たり前のことですが)。
なお、利用させない、未然防止といった対応策だけではなく、既に薬物中毒者となっている人たちへの社会復帰を目指す対応策まで、家族をはじめ身の回りの人々が一体化して取り組めるような環境づくりも今後はさらに強化していく必要があるといえるのではないでしょうか。