ファンを襲った高橋ショック
ソチ五輪で奇跡のフリーを演じ、世界を魅了した浅田真央選手をはじめ、金メダリストの羽生結弦選手など、日本人選手も多数出場とあって、楽しみにしていたファンも多いと思うが、その一方で、フィギュア人気に暗雲を感じさせる事態が起きていた。
高橋ショック
きっかけは3月4日にファンを襲った「悲報」だ。高橋大輔選手が脚部の故障で欠場することが発表されたのだ。その直後から男子シングルのチケットを手放す人が相次いだ。国内最大級のファン交流サイト「フィギュアスケートチケット交換の部屋」ではその深刻さが現れていた。このサイトは、転売目的の悪質業者やオークションとは全く異なり、ファン同士が”定価以下”でチケットを融通しあう良質な助け合いフォーラムだ。
その動向をウォッチしていたところ、高橋選手の欠場が発表された3月4日を境に様相が一変した。
3月3日までは「購入希望」に対する「譲渡希望」の数が平均約半分で、常に品薄の状態だった。ところが3月4日以降の2週間は、「購入希望」約270件に対し、「譲渡希望」は約2,200件。譲渡が購入の約8倍という投げ売り状態となったのだ。
2,200件のうち、およそ半数は連番(2枚)だったので、単純計算で約3,300席が手放されたことになるが、これは客席の2割弱を占める。
ファンが見たいのはあくまで好きな選手
何より衝撃なのは、ソチ五輪金メダリストの羽生選手が出ているにもかかわらず投げ売りされたという「事実」だ。これは男子シングルの人気が高橋選手に支えられていることを裏付けるものだ。もちろん彼に何の責任もないのは言うまでもないが、チケットを手放したファンに責任があるかといえば、そうとも言えない。なぜなら、彼ら(彼女ら)は高橋選手を見たい一心で高額なチケットに”耐えている”からだ。
本質的問題はチケットの高騰
今回のチケットはプレミアム席が23,000~24,000円、S席が17,000~18,000円という高額なもの。選手の顔さえ判別できないようなC席でさえ8,000~9,000円もする。ショートとフリーを見ればその2倍となり、誰もがポンと出せる額ではない。そんな大金を出すのは好きな選手を見たいからだ。
こうしたファンによって日本のフィギュアは支えられており、その中心にいるのが10年以上にわたって高橋選手を応援しているようなコアなファンだ。そのファン心理につけ込むかのようにチケットが高額化されていけば、ファンはいずれソッポを向く。
このままでは高橋選手とともにファンもリンクを去ってしまう
高橋選手は今シーズンを集大成と位置づけているように、いつかは引退することになる。しかし彼の欠場によりチケットが投げ売りされた事実を見ればわかる通り、その後も高いチケットが売れるかといえば答えは100%、「ノー」だ。近い将来、「高橋とともにファンもリンクを去った」というような取り返しのつかないことにならないためにも、スケート連盟には、チケットを早急に「適正な価格」に戻してもらうよう求めたい。