理学療法士/理学療法士試験の問題傾向と対策

理学療法士(PT)試験…生理学・病理学の問題傾向(2ページ目)

理学療法士(PT)試験における生理学と病理学の問題傾向。生理学の苦手意識が強いと、連動して病理学も苦手になってしまいます。生理学は病態を知る意味でも大切な科目です。

野田 卓也

執筆者:野田 卓也

理学療法士試験ガイド


理学療法士試験 病理学の問題傾向

病理学の近年の傾向として、悪性腫瘍、いわゆるガンに関する問題が出題され始めている傾向にあります。臨床でもガン患者に対するリハビリテーションや終末期リハビリテーションの需要が増えてきており、その点を考慮した出題になっていると考えられますので、悪性腫瘍に関してしっかりと学習する必要があります。

病理学の過去問題と解答

過去問題 第52回(2017年)

リンパ浮腫について正しいのはどれか。
  1. 腹水を伴う。
  2. 利尿薬で治療する。
  3. 蜂窩織炎になりやすい。
  4. 肺塞栓症の原因の1つである。
  5. 皮膚が線維化を起こすことは稀である。

この問題の答えは【3】になります。蜂窩織炎とは、炎症により水分やたんぱく質などが組織間に浸潤し、細胞間質を広範囲に融解させ、皮下組織の肥厚や線維化、また発熱などを起こします。その他の選択肢ですが、リンパ腫は局所性の浮腫であり福祉は伴いません。治療に関して利尿薬は用いず、弾性ストッキングの活用や浮腫発生部位の挙上、マッサージなどを行います。肺塞栓は主にエコノミークラス症候群や骨折後に起こりやすく、リンパ浮腫では起きません。

過去問題 第51回(2016年)

長期の安静臥床によって上昇するのはどれか。
  1. 免疫能
  2. 耐糖能
  3. 静脈還流量
  4. 尿中カルシウム
  5. クレアチニン・クリアランス

この答えは【4】です。安静臥床による生理的変化を問う問題になります。尿中カルシウムの上昇は、安静による骨形成、骨吸収のサイクルの乱れにより生じます。骨形成は、骨に対する荷重などの負荷により促進されやすいですが、安静状態だと骨に負荷がかからず、骨吸収優位に働き、骨密度の減少と血中カルシウム濃度上昇を招きます。その他の選択肢ですが、1の免疫能は身体抵抗力の事で、不活動状態の長期化でNK細胞の活性低下が起こり免疫能は低下します。2の耐糖能は、血糖値を正常に保つグルコース処理能力のことで、長期安静臥床では、インスリン感受性と共に低下します。3の静脈還流量は、長期安静臥床により、心肺機能、筋ポンプ作用の低下を起こすため低下します。

最後に、5のクレアチニン・クリアランスですが、まず、クレアチニンとは、体内でエネルギーとして消費されたタンパク質の老廃物のことです。これは通常、腎臓でろ過され尿中に排泄されます。クレアチニン・クリアランスは、血清中と尿中のクレアチニンの量を測定、比較します。当然、長期安静臥床では、筋活動が少なく、エネルギー消費も少ないため、老廃物の現象が起こり、クリアチニン・クリアランスも低下します。


過去問題 第45回(2010年)

良性腫瘍と比較した悪性腫瘍の特徴はどれか。2つ選べ。
  1. 出血壊死が少ない。
  2. 増殖の速度が遅い。
  3. 細胞の分化度が低い。
  4. 細胞の核分裂が少ない。
  5. 周囲との境界が不明瞭である。

この問題の答えは【3.5】になります。
良性腫瘍と悪性腫瘍

発育形式の膨張性とは、周囲の組織を圧迫はしますが、境界は明瞭です。浸潤性とは、周囲の組織との境が不明瞭で腫瘍の細胞が周りの組織にちらばっていくようなイメージです。

悪性腫瘍は、出血、壊死があることが多いです。また悪性腫瘍は、増殖の速度が速く、細胞の核分裂が多いのも特徴です。その他にも良性腫瘍と悪性腫瘍の違いがあります。良性腫瘍との判別のために、右に悪性腫瘍との違いについて表記させていただきますので、参考にしてください。


過去問第45回(2010年)
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