理学療法士試験 病理学の問題傾向
病理学の近年の傾向として、悪性腫瘍、いわゆるガンに関する問題が出題され始めている傾向にあります。臨床でもガン患者に対するリハビリテーションや終末期リハビリテーションの需要が増えてきており、その点を考慮した出題になっていると考えられますので、悪性腫瘍に関してしっかりと学習する必要があります。病理学の過去問題と解答
過去問題 第52回(2017年)リンパ浮腫について正しいのはどれか。
- 腹水を伴う。
- 利尿薬で治療する。
- 蜂窩織炎になりやすい。
- 肺塞栓症の原因の1つである。
- 皮膚が線維化を起こすことは稀である。
この問題の答えは【3】になります。蜂窩織炎とは、炎症により水分やたんぱく質などが組織間に浸潤し、細胞間質を広範囲に融解させ、皮下組織の肥厚や線維化、また発熱などを起こします。その他の選択肢ですが、リンパ腫は局所性の浮腫であり福祉は伴いません。治療に関して利尿薬は用いず、弾性ストッキングの活用や浮腫発生部位の挙上、マッサージなどを行います。肺塞栓は主にエコノミークラス症候群や骨折後に起こりやすく、リンパ浮腫では起きません。
過去問題 第51回(2016年)
長期の安静臥床によって上昇するのはどれか。
- 免疫能
- 耐糖能
- 静脈還流量
- 尿中カルシウム
- クレアチニン・クリアランス
この答えは【4】です。安静臥床による生理的変化を問う問題になります。尿中カルシウムの上昇は、安静による骨形成、骨吸収のサイクルの乱れにより生じます。骨形成は、骨に対する荷重などの負荷により促進されやすいですが、安静状態だと骨に負荷がかからず、骨吸収優位に働き、骨密度の減少と血中カルシウム濃度上昇を招きます。その他の選択肢ですが、1の免疫能は身体抵抗力の事で、不活動状態の長期化でNK細胞の活性低下が起こり免疫能は低下します。2の耐糖能は、血糖値を正常に保つグルコース処理能力のことで、長期安静臥床では、インスリン感受性と共に低下します。3の静脈還流量は、長期安静臥床により、心肺機能、筋ポンプ作用の低下を起こすため低下します。
最後に、5のクレアチニン・クリアランスですが、まず、クレアチニンとは、体内でエネルギーとして消費されたタンパク質の老廃物のことです。これは通常、腎臓でろ過され尿中に排泄されます。クレアチニン・クリアランスは、血清中と尿中のクレアチニンの量を測定、比較します。当然、長期安静臥床では、筋活動が少なく、エネルギー消費も少ないため、老廃物の現象が起こり、クリアチニン・クリアランスも低下します。
過去問題 第45回(2010年)
良性腫瘍と比較した悪性腫瘍の特徴はどれか。2つ選べ。
- 出血壊死が少ない。
- 増殖の速度が遅い。
- 細胞の分化度が低い。
- 細胞の核分裂が少ない。
- 周囲との境界が不明瞭である。
この問題の答えは【3.5】になります。 悪性腫瘍は、出血、壊死があることが多いです。また悪性腫瘍は、増殖の速度が速く、細胞の核分裂が多いのも特徴です。その他にも良性腫瘍と悪性腫瘍の違いがあります。良性腫瘍との判別のために、右に悪性腫瘍との違いについて表記させていただきますので、参考にしてください。
過去問第45回(2010年)
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