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「残業ゼロ」「ノー残業」は良いことなのか

「残業ゼロ」や「ノー残業」という言葉だけを、表面的にとらえると、本質を見誤ります。なぜなら、人より抜きん出た仕事、付加価値の高い仕事をしようとすれば、やはり人よりも時間がかかるからです。

午堂 登紀雄

執筆者:午堂 登紀雄

ニューリッチへの道ガイド

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付加価値の高い仕事をするには、残業が必須!?

「残業ゼロ」や「ノー残業」という言葉だけを、表面的にとらえると、本質を見誤ります。なぜなら、人より抜きん出た仕事、付加価値の高い仕事をしようとすれば、やはり人よりも時間がかかるからです。そして、少しずつスピードがついてくる。同じ量の仕事でも、他人よりも速く、かつ高いクオリティでこなせるようになる……。

ルーチンワークを就業時間内に終わらせることは大切です。そこにデッドラインがあることで、より集中して仕事をしようとしますから、生産性も高まります。しかし、それはあくまで「作業」レベルでの話。「仕事」とは、それにプラスアルファが必要です。

たとえば、明日訪問予定の営業先があるとします。効率的な営業マンは、訪問先のホームページをざっと見て、過去に同じような業種・業態で使った提案書をすこし修正し、最後に地図をプリントアウトしてカバンに入れ、準備OKとするでしょう。

でもこの程度は、だれでもやることです。できる営業マンはさらにそこから突っ込んで、その業界が抱えているであろう課題や問題点の仮説を立て、それを解決する提案を考えておきます。そのうえで、「こういうことでお困りではありませんか?」「こういう方法で解決できる可能性がありますよ」と提案する。その結果、「そうそう!あなた、わかってるね」「ほう、そんな方法があるのかね」と、顧客から見て、「この人は他社とは違う」「ここに任せれば、よいものができそうだ」と思わせることができるのです。

しかし、そのためには、業界誌や新聞雑誌の記事を読み込むなどして課題を抽出し、成功事例を調べておかなければできません。その成功事例も、顧客と同じ業界の事例なら、むしろ顧客の方が詳しいでしょう。すると、「そんなこと、とっくに知っているよ」と言われかねません。ですから、顧客が知らないであろう、でも参考になる他業界の事例も調べておこう、という発想をするはずです。こうした作業を、残業ゼロでできるでしょうか。

もちろん、効率的に仕事をすることを否定しているわけではありません。むしろプラスアルファの時間を確保するために、付加価値の低い作業は、より短時間で終わらせよう、という発想の推奨なのです。

残業ゼロを提唱しているのはどんな人か?

そもそも、残業ゼロを提唱しているのはどんな立場の人でしょうか。そう、たいてい経営者です。経営者の観点からすれば、残業はコストです。それに、社員の健康も大切ですし、長期にわたって貢献してもらいたいですから、労働環境には気を配ります。特に社員に家族がいればなおさらでしょう。

もう一つは、すでにある程度の成功を収めている人です。すでに成功しているから、ワークライフバランスがとれている。お金もあるし、ひとつの仕事の単価も高いから、がむしゃらに働く必要はない。短時間でも付加価値の高いアウトプットを出せる能力も持っている。そんな生活はとても快適である。つまり、成功した後の価値観で言っている可能性があるわけです。

では、本当に残業ゼロで成功した人はいるのでしょうか。そもそも、彼らが若かりし頃の働き方はどうだったのか。彼らがすごい人になる過程でやっていたのは、本当にワークライフバランスなのか。

たとえば有名な経済評論家の勝間和代氏は、かつてはモーレツ会社員だったそうです。そのときの努力があるから、今がある。そのときモーレツに働いていたから、数多くの知的生産の技術が生み出されたはずです。残業ゼロで帰っていたとしても、その後の時間を使って自己研鑽をしていたわけです。つまり、残業ゼロなりワークライフバランスなりを言う人の多くは、かつてモーレツに働いて力をつけ、そののちに仕事とプライベートのバランスをコントロールできる生活を手に入れている、と言えます。

20代~30代前半は、土台を作る時期

毎日10キロを走り込んでいるサッカーチームと、毎日1キロ走っているチームとでは、基礎体力に差が出ることは明らかでしょう。特に社会人になった初期の段階でプライベート重視を志向していて、仕事の基礎体力はつくでしょうか。今はラクかもしれないけど、仮に自分が今20代なら、30代40代50代60代と、これから40年間も稼ぎ続ける必要があります。ではその働き方で、40年後もお金を稼げる実力がついているでしょうか。

いまやビジネスの競争相手は日本人同士ではなく、新興国も含めグローバルに広がっています。このままでは、昼夜を問わず猛烈に働いている中国や韓国に敗北するおそれがあります。私たち個人の成長という観点から考えると、残業ゼロは本当に理想なのか、という疑問が湧いてきます。

私自身、25~33歳までは人間らしい生活を捨て、モーレツに働いていました。今ではブラックだとか言われそうですが、それが今の自分を作ってくれたと思っています。

もちろん、いろんな価値観、いろんな生活スタイルの人がいますから、押し付けるわけではありません。無理しすぎて身体を壊してはいけませんから、ときには休む勇気も必要です。子育て重視の時期もありますし、親の介護が必要な時期もありますから、そこは個々人の生活の変化に合わせて対応する必要があるでしょう。

しかし、裾野を広げることで高い山ができ、土台を地下深く掘ることで高い建物ができるように、若いうちは、目の前の余暇や収入よりも、土台作りにフォーカスしたほうが、成長の余地があると私は信じています。そうすることで、やがて他人よりも少ない労働時間で、高い成果を出せるようになるのだと思います。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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