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女子校出身者は誇り高きオッサンである(2ページ目)

女子校や男子校は「不自然」で「子どもが歪む」のか? 女子校出身者は「陰湿」で「男を見る目がなく」て「オッサン」なのか? 女子校出身者が実体験から語る、「女子校/男子校は真の自由である」!

河崎 環

執筆者:河崎 環

子育てガイド


「女子は偏差値55が一番需要がある」!?

中高一貫女子校出身者である。東大合格者数(女子校で)日本一という、そんな超絶女子進学校で、宝塚みたいな誤った倒錯を起こす演劇部の男役だった。文化祭を見にきた父が、「どこかの学校から男子を連れてきたんだと思って劇を見ていたら、自分の娘だった」と語るくらい男らしかった。女子にモテる。世間的には、そこは笑うところだ。きっと10代女子にとっては死に至る病であるが、しかし不思議なことにその頃、私はとても自由だったように思う。

御三家だとか、進学校だとか、あるいは事実とは関係なく「お嬢様」「お坊ちゃん」としてブランド付けされる中高一貫の男子校、女子校出身者には、出身者たちなりの苦労がある。 母校への愛情、感謝、自信、思い出すと恥ずかしさで悶死する黒歴史や、先生や仲間との共犯関係のような甘酸っぱい記憶がある一方で、卒業後に世間知らずを思い知らされ横っ面を張り倒された経験がある。何と言っても、世間(共学!)で期待される女子像・男子像と、自分たちとの乖離に戸惑った経験があるはずだ。

「優れている」のは良いことだ、ならば学力偏差値も顔面偏差値も70から80がいいと信じてゴリゴリやってきた女子校出身者に、いやいや女の子は55くらいが一番需要があるんすよ、しかも一番値がつきますよ、と教える市場経済の現実はキビしい。東大の男子学生が、「東大の女なんて相手にできないでしょ」と、うっすら名前を聞いたことのある(でもどこにあるか知らない)ホニャララ女子大とかとサークルでいちゃいちゃしているのを横目に見て、「実は不自由な世間」のニーズを知る。共学で、勉強はあまりしてこなかったけどいい男からダメ男まで上手に渡り合ってきたような「おんなのこ」たちの、生物としての圧倒的な強さを前に、膝から崩れ落ちるのである。

『女子校という選択』(日経プレミアシリーズ)で著者おおたとしまさ氏が指摘するように、「男女別学校のほうがむしろジェンダーフリー」であり、「男女の性的役割についての既成概念にとらわれにくい環境である」ことに、経験者として大きく頷く男子校・女子校出身者は多いはずだ。男子校、女子校は、人間が「個」として成長する際、まだ性が未分化で葛藤中のそのままの姿を尊重されやすく、とても自由なのだ。

たとえばメディアに出るような「女医さん」が、おしなべてブランドアイテムを身にまとった巻き髪のエレガント美女であることに、何故だろうと思ったことはないだろうか。私は、級友たちの殆どが医学部生や東大生になったあとの葛藤を見て来たので、理由がわかる。

彼女たちは学歴エリート、「人生常勝」が是である。外見や身なりごときが多少不備だからといって、周囲の男子学生や男性教授や、世間の口うるさい向きに「勉強(仕事)ばっかりできても、女を捨ててちゃ終わってる」などと一言でも言われる隙を与えたくない。もともと中身の知性レベルが高いのだから、外見や身なりなど知識と財力で一定レベルまでならどうにでも見せることができるのだ。だから彼女たちは「女医なのに(弁護士なのに、高級官僚なのに)女らしい」外見を学習して隙なく作り上げ、一種の記号、戦闘服として被っている。それが、現代の「ジェンダーフリー環境でのびのび育った優秀な女性人材たち」が「実際にはジェンダーフリーなどとはほど遠い世間」でサバイバルするための、最も効果的で潤滑的な方策なのである。

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