歯科インプラント/歯科インプラントとは

歯科インプラントの特徴

永久歯を失った場合、何らかの方法で補わなければなりません。入れ歯かブリッジかインプラントなどさまざまな方法がありますが、唯一健全歯に悪影響を与える事のない「歯科インプラント」について、わかりやすく解説したいと思います。

梅田 和徳

執筆者:梅田 和徳

歯科医 / 歯科インプラントガイド

歯科インプラントの歴史と方法

人工歯根を手術により顎骨に埋めこみ、骨結合(オステオインテグレーション)させ、その上に上部構造を固定する治療を「歯科インプラント治療」と言います。入れ歯やブリッジと比較して、天然歯に近い機能回復が得られる可能性が高く、周囲の歯に負担をかけずに失った部分を回復できます。

インプラント

インプラントのレントゲン画像。適合状態や骨吸収の確認を行う。

1952年にブローネマルク博士がチタンと骨が結合する事を発見し1962年から本格的にインプラント治療が始まり、1980年前後から歯科インプラントが積極的に行われるようになりました。近年、日本でもようやく欠損補綴のオプションの1つとして認知されてきています。歯科インプラントとは、実はこんなに長い歴史がある確立された治療法なのです。

歯科インプラントの10年生存率はおおむね95%以上と言われています。また、周囲の歯肉や上部構造が健全に機能している成功率も90%以上と言われています。ただし、術者の治療技術や考え方、インプラントシステム、患者様の環境によって大きく結果が異なる事も事実です。

何らかの理由で歯を失うことになったわけですから、歯科インプラントを支えるための十分な骨量が不足していることも多く、その場合は骨造成を行う事もあります。大きく不足している場合は、まず骨造成のみを行ってから改めて歯科インプラント埋入を別の機会に行うステージドアプローチで行います。また、条件がそろった場合には抜歯と同時にインプラント埋入をし、不足部分に同時に骨造成を行う抜歯即時埋入という方法も最近では増えてきています。

最近では、機能回復のための歯科インプラント治療だけでなく、審美的要求も高くなってきているために、周囲の天然歯との色や形態の調和が求められるようになりました。欠損部分の歯肉は痩せてしまうことが多いので、ボリュームアップのための軟組織移植を行う事も高いゴールを目指すためには必要不可欠となってきています。

歯科インプラントの一般的な治療の流れ

1.インプラント埋入
適切なサイズのインプラント体を顎骨に埋め込みます。完全に歯肉を覆い改めて貫通させるのを2回法、最初から貫通させる方法を1回法といいます。部位や個人で骨質に大きな違いがありますので、環境に合わせた術式が重要です。

2.骨結合(オステオインテグレーション)
チタンと歯槽骨は下顎で約2ヵ月、上顎で約3ヵ月で骨結合します。骨補填をした場合は更に数カ月待たなければならなくなることもあります。

3.上部構造の印象・咬合採得(型採りとかみ合わせ高さの決定)
インプラント体と上部構造をつなぐアバットメントを同時に製作する方法と、アバットメントを先に固定してから製作する方法があります。また、アバットメントとインプラント体が一体化している1ピースタイプもあります。

4.装着
アバットメントを適正トルクで固定し上部構造を接着剤で固定する方法と、ネジで固定する方法があります。また、アタッチメントと言われるものを装着して、着脱式の入れ歯に固定するオーバーデンチャーというタイプもあります。

5.予後メンテナンス
日常のセルフケアだけでなく、歯科衛生士によるプロフェッショナルケアを定期的に行う事をお勧めします。インプラントは天然歯にある歯根膜という緩衝材がないため、骨にダイレクトに荷重がかかります。また、天然歯の歯周病と同じようなペリインプラントタイティスという周囲組織の炎症も起きる可能性もありますのでメンテナンスはとても重要です。

口腔全体を診て歯科インプラントの治療を検討する

1本の歯を失ったまま放置しておくと、隣在歯は倒れ、咬み合う相手の歯は飛び出てきます。また、咬みやすい反対側に咬合負担が集中するために、そちら側にもトラブルが起きてしまう事もあります。常に歯は28本でバランスをとっているので、歯科治療は1本単位でなく一口腔単位の全体を診なければなりません。また、咀嚼と認知症との関連や、歯周病菌による全身への悪影響などが医師の立場からも意見されることが多くなってきました。

歯科インプラント治療だけで済む患者はどれだけいるでしょうか? 何らかのアクシデントで歯を失ったケース以外は、歯周病の進行によるものや歯根破折からの感染など、必ず原因があるはずです。そして口腔内全体を詳しく拝見すると、虫歯や歯周病はもちろん、かぶせ物や詰め物の不適合や不正咬合など、複合的な問題を抱える患者がほとんどです。

日進月歩で進化している歯科インプラントですので、骨結合までの期間や安定性、上部構造のマテリアルもどんどん向上しています。日本国内でもすでに80万人以上の人が歯科インプラント治療を行っていると言われております。ただし、安易に歯科インプラント治療を行う事も増えてきたので様々なトラブルが起きていることも事実です。歯科インプラント治療の費用も、一昔前に比べてだいぶリーズナブルになってきました。私が歯科医になったころは3本のセラミックブリッジの治療費の数倍である100万円近い費用がかかりましたが、今では簡単なケースならセラミックブリッジとあまり変わらなくなってきました。

患者ご本人が正しく歯科インプラント治療を理解し、快適な口腔環境を維持し、生活の質の向上に役立てるよう情報提供していきたいと思います。


【歯科インプラントの注意事項】
※歯科インプラント治療では外科手術を行います。妊娠中の方、糖尿病などの全身疾患のある方、顎骨の量が極端に少ない方、ヘビースモーカーの方などは、歯科インプラント治療を受けられない場合があります。
※歯科インプラント治療には健康保険の適用がありません。全額自己負担となるため、治療費は高額になります。
※ケースによって異なりますが、歯科インプラント治療には平均3~6ヵ月程度の治療期間がかかります。

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