慢性的な肩こり・腰痛…求められる神経障害性疼痛の治療薬
中高年層の増加とストレス社会。現代を反映する病気として、慢性の肩こりや腰痛に悩む方が増えています。最近では新聞やテレビでも、慢性の肩こりや腰痛の治療方法や治療薬情報が、数多く特集されています。今回は、神経障害性疼痛の治療薬であるプレガバリン(一般名リリカ)をご紹介します。痛みの種類
痛みには、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、心因性疼痛の3種類があります。痛みの種類によって治療薬も異なり、症状に応じていろいろな薬を組み合わせて治療します
■侵害受容性疼痛
刺激や炎症による痛みです。ケガをしたときに感じる痛みで、ケガが治ると痛みもなくなります。
■神経障害性疼痛
ケガや病気が原因となり、障害を受けた神経が興奮し続けた状態です。障害を受けた神経から、痛みを伝達する物質が過剰に放出されることがあります。たとえ痛みの原因や元の病気が治っても、痛みが長期間続きます。少しの刺激でも強い痛みを感じたり、天気の変化や、何もしていないのに痛みを感じることもあります。
■心因性疼痛
心がストレスを受けることで、痛みを感じるようになった状態です。
しかし、長い間痛みを感じていると、痛みも単純ではありません。3種類の痛みが深くからみ合った状態、すなわち混合性疼痛になっています。
侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛がからみ合った痛みが、混合性疼痛です
痛みの種類別治療薬
■侵害受容性疼痛一般的な消炎鎮痛剤である痛み止めが、第一選択薬です。一般名ロキソニンやセレコックス、ロルカム、ボルタレンなどが代表薬です。
■神経障害性疼痛
第一選択薬は、三環系抗うつ薬、セロトニンとノルアドレナリン再取り込み阻害薬、局所リドカイン、そして、カルシウムチャンネルに作用するリリカ。第二、第三選択薬は、麻薬、抗てんかん薬、NMDA(N-メチル-D-アスパラギン酸)受容体拮抗薬などが、追加投与されます。神経障害性疼痛には、一般的な消炎鎮痛剤は効きません。
■心因性疼痛
抗うつ薬や抗不安薬などが第一選択薬です。心理療法や行動療法、運動療法など、心療内科的治療を併用する場合が多いです。
リリカの作用機序
リリカは、痛みを伝える神経伝達物質の過剰放出を抑えることで、鎮痛作用を発揮します。リリカは、神経細胞のカルシウムチャンネルに結合します。神経障害性疼痛では、カルシウムチャンネルから侵入したカルシウムイオンにより、神経が興奮し、神経伝達物質が過剰に放出されます
リリカが結合した部位では、カルシウムイオンの神経細胞内への流入が低下します。カルシウムイオンが作用する神経内伝達が抑制され、興奮した神経伝達物質の過剰放出が低下します。その結果、次の神経に痛みが伝わりにくくなり、鎮痛作用が発揮されます。
リリカはカルシウムイオンチャンネルに結合して、カルシウムイオンの流入を低下させます。結果、神経伝達物質の放出が低下します
リリカの特徴
リリカは、痛い時だけ飲んでも効きません。これは、他の神経障害性疼痛治療薬にも当てはまります。神経障害性疼痛治療薬は、一定期間以上飲み続けることで、初めて効き目を発揮します。通常、効き目が現れるまで、数日から一週間は必要です。効き目が現れるまで、医師に指導された用法、用量を守りましょう。また、自分の判断で勝手に服用を中止してはいけません。急に服用を中止すると、せっかく治まっていた痛みが戻ってきたり、頭痛、下痢などの症状が現れることがあります。
リリカの副作用
リリカの主な副作用は、めまいや眠気、ふらつきです。リリカを服用した後は、車の運転や危険を伴う機械の操作は避けます。特に、高齢の方は、転倒の可能性があるため、十分な注意が必要です。また、アルコールによってリリカの作用が増強したり、抗不安薬や抗うつ薬の作用が強く出ることもあります。場合によっては、体重が増えることもあります。
服用は、医師とよく相談し、注意をよく守りましょう。