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毎朝5分で変わる!脳の力を高める朝絵日記の薦め

頭をよくする方法があれば、多くの人が知りたいと思うでしょう。年齢に関わらず、物覚えが悪くなった、人の名前が思い出せないなど、脳の力の衰えを心配する人はと多いものです。脳の力を効率的に鍛える方法を脳神経外科医の視点からご紹介します。

菅原 道仁

執筆者:菅原 道仁

医師 / 家庭の医学ガイド

鍛えるべき4つの「脳力」

物忘れ

「昨日あの店であの人に会ったよ。えーと…誰だったかな…名前が出てこないんだが…うーん……」

外来診療中、患者さんからは「最近、物覚えが悪くなった」「人の名前が出てこない」「いい企画が思いつかない」といった、頭の働きを心配する声を聞くことがあります。

誰でも頭はスッキリと、冴えたコンディションでいたいと思うもの。年齢や職種を問わず、もっと頭が良くなりたい、頭の回転をよくしたい、という思いは誰にでもあるものです。

いわゆる「頭がいい」とは、医学的にいうと脳の機能がしっかりと働いていて、その力が優れているということになります。脳の機能は実にさまざま。テストでいい点を取ること、記憶力が高いこと、仕事でアイディア豊富なこと、イチロー選手のように運動能力が高いこと、モーツアルトのようにあふれんばかりの音楽センスがあること……いずれも「脳の力が優れている」ことの結果です。
 

記憶・理解・思い出し・ひらめき…4つの脳力の重要さ

「頭がよい」と言われる脳力は、次の4タイプに分類できます。
 
  1. 記憶する力が高い
  2. 理解する力が高い
  3. 思い出す力が高い
  4. ひらめく力が高い

いずれかひとつが突出している場合もありますが、基本的にこれら4つの力がバランスよく備わっているのが理想的。それぞれの脳力について見ていきましょう。

1. 記憶する力
まず、何が何でも覚えること。最近はパソコンなど便利な道具が出現したおかげで、私達は覚えておかなくてもいい時代になりました。しかし覚えるということは私達の生活で非常に大事で、人の名前や電話番号などの単純な物覚えだけではなく、それらを自分に代わって記憶してくれるような便利な機械の使い方を覚えなくてはなりませんし、仕事のやり方も覚えなくてはなりません。単純なことを覚えられるからこそ、複雑な作業も覚えることができることを忘れないで下さい。

2. 理解する力
その次に大事な脳の力は、覚えたことを理解すること。一つ一つを丸暗記していくのではなく、覚えたことをしっかり理解することで、他への応用力も高まります。また、物事を機械的に覚えるよりも、理解してさまざまなことと関連付けながら覚えることで、1の記憶力もアップします。

3. 思い出す力
さらに、覚えたことを脳の中に溜め込むだけでは、覚えていないことと同じ。それらと適切に思い出しながら行動に移してこそ脳が働いているといえるでしょう。スポーツ選手がすばらしいパフォーマンスを発揮できるのも、練習したことを身体がしっかり思い出せるからこそなのです。

4. ひらめく力
そして、私達がさらに発展していくためには、創造性、クリエイトするということが大事なのはいうまでもありません。
 

4つの脳力を総合的に伸ばす早道は?

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日記には、昨日のことを分かりやすく箇条書きで書き出してみましょう。そして、絵を挿入するとさらに効果的です。

それでは、この4つの脳力を鍛えるためにはどういう訓練がいいでしょうか? 私がお勧めしたいのは、毎朝、絵日記を書くことです。朝5分だけ早く起きてみて、昨日のことを思い出し、絵日記を書いてみる。

物忘れで悩んでいる人のケースでも、実は記憶する力自体が落ちていることはあまりありません。ほとんどの人が、思い出す力が落ちているだけなのです。学生時代は、定期試験がありました。実は、この定期試験というものも、記憶を試されているだけではなく、思い出すことを試されていたのです。社会人になると、定期試験もないうえに、パソコンや資料を好きなときに確認できます。試験でいうなら、カンニングが許可されっぱなしのような環境なので、思い出す力は自然と低下してしまうことが多いのです。意識的に思い出す訓練をしていくことは大事です。

さっそく明日から、朝5分の時間を使って昨日起きたことを思い出してみましょう。なんでもいいのです。変わったことがなければ、食事のメニューでもいいのです。取り込んだ知識は思い出さなければ使えません。日常のできごとを思い出す作業を習慣化させてみましょう。

そして次に、それを人に教えましょう。人に教えるためには、日記に書いた事実を理解しなくてはなりません。ですから、難しく書いた日記ではだめです。いろいろ書き出すことはいいですが、それをシンプルに再構成する。たとえば、「去年が猛暑であったため、花粉の飛散量が増えた」というニュースを思い出したとします。この日記を「花粉が多い」と短くし、補足情報として「猛暑」と文章を分けて記載するのがコツです。文章を分けると、物事の関連性が理解しやすくなるので、覚えやすく、そして思い出しやすくなります。そして、余力があれば、なぜ猛暑だと花粉の量が増えるのかとか、去年はどれくらい猛暑だったのか、花粉症の薬の販売量が増えたかどうかなど具体的に知りたい事実をどんどん調べてみましょう。

文字だけではなく、絵日記として残すことにも意味があります。絵が苦手なら、地図でもいいでしょう。昨日訪れた場所の地図を書いてみることも空間認識能力を高めることにつながり効果があります。日記に絵や地図を挿入するということは、しっかりと覚えていないと描けません。実は、この翌日の日記に絵を書かなければならないと思う事が、前日の出来事を覚えようという気持ちに良い効果をもたらします。

そして、それを人に伝える。子供に教えるようにシンプルな日記にしなければ教えることはできません。それが朝5分の絵日記のコツです。習慣化されたこの日記を読み返すと、新たなことが関連付けられ、何かをひらめきやすくなります。ひらめきは、ゼロから生まれるものではありません。毎日のシンプルな日記の積み重ねによって得られた自分の知識を組み合わせることによって、初めて、ひらめくこと、創造性が生まれます。頭の中に書き溜めた日記がない状態でひらめこうと思っても、魚のいない釣堀で釣竿を垂らしているようなことで、けっして、アイディアはひらめきません。
 

明日から実践! 脳の力を鍛える「朝・絵日記」のポイント

  • なるべく簡潔な言葉で箇条書き
  • 絵や地図を一緒に記入しておくとさらに効果Up
  • 日記で解決した疑問を人に教えてみる
  • 2週間たったら、読み返す
脳の力を衰えさせたくない人は、まず毎朝5分の習慣からスタートしてみましょう。

 
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