予防接種・ワクチン/その他の病気の予防接種

B型肝炎ワクチン、赤ちゃんの予防接種スケジュール・副作用

【小児科医が解説】死亡率が高い劇症肝炎のリスクを持つ「B型肝炎」は、ワクチンで予防することができます。B型肝炎ワクチンは2016年より1歳未満の赤ちゃん・乳児に対し定期接種になったワクチンで、医療従事者、1歳以上では任意接種です。予防接種の対象年齢と接種スケジュール、間隔、副作用について解説します。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

B型肝炎とは……B型肝炎ウイルスが感染して肝炎を起こす病気

B型肝炎ワクチンの予防接種スケジュール・副作用

B型肝炎は、B型肝炎ウイルスによって起こる肝炎です

肝臓に炎症を起こすウイルスは数多くありますが、特に肝臓に感染しやすいウイルスを肝炎ウイルスと言い、種類としてA型、B型、C型、D型、E型があります。B型肝炎とは、B型肝炎ウイルスが主に血液や体液を介して感染して肝炎を起こす病気です。B型肝炎の基礎知識やB型肝炎ワクチンの対象年齢、接種間隔、副作用について、詳しく解説します。 

B型肝炎の症状や検査、治療法など、詳しい情報については「B型肝炎の症状・検査・治療」や「B型肝炎の治療法・薬・助成」を併せてご参照下さい。
 

B型肝炎の初期症状・予後・死亡率

肝臓

肝臓の図。肝臓は体の右側にあります

B型肝炎に感染すると、20から30%の人が急性肝炎と言って、黄疸や発熱、倦怠感などが見られます。多くは自然に治ってしまうのですが、約2%に肝炎が急速に進行し、肝臓が数日で機能しなくなる劇症肝炎があります。劇症肝炎になってしまうと死亡率が70%と重症な肝炎です。

肝炎ウイルスに感染した人の10~15%に慢性肝炎、肝細胞がん(肝がん)、肝臓が炎症で細胞が無くなって固くなる肝硬変になってしまいます。

B型肝炎ウイルスを持っている女性が妊娠、出産する時に、新生児にB型肝炎ウイルスが入ってしまい、ウイルスを持った状態になるキャリアーになってしまいます。キャリアーになってしまうと、感染力を持ち、自らも慢性肝炎、肝細胞がん、肝硬変になってしまう可能性があります。

キャリアー、劇症肝炎の予防として、ワクチンがあります。
 

B型肝炎ワクチンとは……定期接種の不活化ワクチン

B型肝炎ワクチンとは、B型肝炎の成分を使って免疫をつける不活化ワクチンです。免疫を高めるためのアジュバントという免疫増強剤にアルミニウム化合物を使っています。しばらくすると抗体が下がってしまうため、何回かワクチンをする必要があります。B型肝炎ウイルスを持った母親から生まれた赤ちゃんには保険診療で予防ができるようになり、1歳までは定期接種として接種できます。しかし、保険診療及び定期接種以外の医療従事者、1歳以上の子どもなどは任意接種として自費になっています。

医療従事者には、労働災害の観点から勤務先の医療機関負担で行っていることが多いです。私自身も研修医になった時に、ワクチンの接種を受けて、現在もB型肝炎の抗体の値を年に1回チェックしています。徐々に下がってきていたので、2015年は陰性になってしまい、1回追加接種しました。ただ、一度、陽性になれば、B型肝炎ウイルスに対する免疫力はあるとも言われていますが、絶対ではないので、免疫力である抗体価は上げておくほうが良いとも言えます。
 

B型肝炎ワクチンの対象年齢・予防接種スケジュール

■B型肝炎ウイルスを持った母親から生まれた赤ちゃん
母親と赤ちゃん

赤ちゃんにB型肝炎がうつらないように予防接種をします


赤ちゃんへのB型肝炎ウイルスの侵入を防ぐことが大切です。まずは、生まれてから生後5日以内に、望ましいのは生後12時間以内に、B型肝炎ウイルスに対する免疫グロブリン(抗HBs人免疫グロブリン)の1回目を注射します。2013年10月からスケジュールが変更になっており、生後すぐと、生後1カ月、6カ月の3回行います。生後12カ月時に免疫ができているかどうか確認します。接種量は0.25mlです。

定期接種(生後1歳まで)
2016年10月1日より生後1歳に至たるまでの間に乳児に対して3回接種することになりました。接種間隔は、1回目の接種から27日以上あけて2回目、1回目の接種から139日以上あけて3回目を接種します。標準的な接種方法は、生後2カ月、3カ月、7~8カ月の3回です。接種量は0.25mlです。

■医療従事者の予防および任意接種の場合
1回目接種後、4週間後に2回目の接種を行います。その後、6カ月後に追加接種を行います。接種量は0.5mlです。10歳未満の人には1回の接種量は0.25mlです。

B型肝炎ワクチンとは別のワクチンを接種するまでに空ける期間はなくなりました。令和2年10月1日から不活化ワクチンであるB型肝炎ワクチン接種後に別のワクチンをするまでの期間がありません。
 

B型肝炎ワクチンの副作用……だるさ、頭痛、腫れなど

副作用としては、接種を受けた10%程度の人に、打った後の体のだるさ、頭痛、注射部位が赤くなったり、腫れたり、痛くなったりします。
 

B型肝炎ワクチンの課題と解消

B型肝炎ワクチンは世界の多くの国では定期接種となり、WHO(世界保健機関)は1992年、B型肝炎の感染源の撲滅と肝硬変や肝臓がんなどによる死亡をなくすために、子どもたちに対して、生まれたらすぐにB型肝炎ワクチンを国の定期接種として接種するように指示しています。そして、ほとんどの国で定期接種になっていて、これを「ユニバーサルワクチネーション」と呼んでいます。

2015年までは日本は、B型肝炎の母親からの出生した赤ちゃんだけを対象にしていました。

様々な経路から侵入する可能性のあるB型肝炎を減らすためには、「ユニバーサルワクチネーション」が望ましく、B型肝炎を持っている人は日本では戦後の注射針の使い回しのため多く存在すると推定されていること、東南アジアではまだB型肝炎が見られることから、日本では定期接種化が望ましいとされていて、やっと2016年に10月1日から生後1歳までを対象に定期接種が始まりました。

しかし、定期接種でワクチンができてない世代については課題が残ったままです。日本では、約130~150万人(およそ100人に1人)がB型感染に感染していると推定されています。そして、B型肝炎にかかってから治ったと思われている場合でも、免疫抑制薬などを使用したときにB型肝炎が再活性化され、劇症肝炎を起こすこともあります。B型肝炎はワクチンでしっかりと予防していく必要があるのです。

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