脂肪肝とは
食事の欧米化により、現在は日本でも5人に一人は脂肪肝になっています。
全国の人間ドックの集計結果を見ても、1995年には肝機能障害が25%を超えるほど、つまり4人に1人以上に増加して、脂質異常の頻度よりも高くなり、異常所見としては最も頻度が高い項目になっています。そしてこの肝機能障害の大部分が脂肪肝なのです。
今では、生活習慣の欧米化に伴う肥満の増加により、脂肪肝は成人の約20%を占めるようになりました。一般に肥満の評価に用いるもので、BMI(body mass index)というものがあります。BMIは、体重(kg)÷身長(m)²という計算で算出し、25以下の場合は脂肪肝の合併率がきわめて低く、25を超えてくると約30%が脂肪肝となり、さらに30以上となると約80%が脂肪肝を合併していると考えられます。
脂肪肝の傾向・原因
脂肪肝の頻度は男女差があって、女性が男性に比べて低く、特に20歳代、30歳代の女性で低いことが特徴です。ただし、女性では60歳代をピークとして高齢になるほど脂肪肝の頻度は増えていきます。これは女性では閉経前までは皮下脂肪になる割合が高く、閉経後に内臓脂肪がつきやすくなってくることと相関しています。脂肪肝の主な原因は、大量飲酒と過栄養です。
■大量飲酒による脂肪肝
まず、大量飲酒とはどれくらいをさすものでしょうか。常習飲酒というのが、およそ純エタノール換算で20g/日以上の場合と定義されています。ビール500ml、日本酒1合、焼酎1合、ワイングラス1杯、ウイスキー1杯(ダブル)いずれかを習慣的に飲んでいるくらいが目安です。大量飲酒はおおよそこの3倍を飲んでいる場合を指します。この大量飲酒者では大部分で脂肪肝が認められます。
■過栄養による脂肪肝
一方で、アルコール性肝障害ではなく、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、自己免疫性肝疾患に関連しないと考えられる肝障害が、過栄養による脂肪肝と考えられます。また、血液検査で肝機能異常がなくともエコーやCTといった画像診断で脂肪肝を認めることもあります。これらを総称して「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」といいます。
以前はこういった脂肪肝は良性の病気で進行もしないと考えられていたため、軽視されていました。しかし近年このような肝障害でも、肝炎から肝硬変、ついには肝臓がんができてしまう例の報告が増加して、見逃せない病気としてとらえられるようになりました。こういった一群の病気は「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」と呼ばれています。これらについては、後で詳しく述べていきます。
脂肪肝の症状
自覚症状はないことが多いです。健康診断・人間ドックにおける血液検査や腹部超音波検査で肝機能障害を指摘され、再検査ないし精密検査を勧められて、病院受診がきっかけで見つかることがほとんどです。実際、うちのクリニックでもこうした健診での肝機能異常が来院の動機ということが、脂肪肝で一番多いと思います。脂肪肝の検査法
■血液検査ALT(GPT) やAST(GOT)、γGTなどが上昇することがあります。多くはALT>ASTの肝機能障害が起こります。ただし、肝機能が正常の脂肪肝もありますので、あくまでも診断の参考です。
■画像診断
・腹部超音波検査
健診や人間ドックで多く使われている検査で、かつ脂肪肝の診断をつけるのにとても有用な検査です。超音波では、脂肪肝の肝臓は普通よりも白く見えます。そのため肝臓に接している腎臓と比較してコントラストが強い(腎臓が黒くて、肝臓が白い状態)場合を脂肪肝と診断します。
・CT検査
CT検査も脂肪肝の診断に有用です。
■肝生検
肝臓の細胞を針を刺してとってきて、顕微鏡で観察する方法です。この顕微鏡で見て、肝臓の中の脂肪の割合を見て診断をつける方法がもっとも確実です。ただし、これは入院して行う検査になりますので、誰でも簡単に受けられる検査ではありません。
脂肪肝の治療法
■単純性脂肪肝これは、病気の進行も認めないため治療の必要はありません。ただし、単純性脂肪肝と、病気が進行する可能性がある非アルコール性脂肪肝炎(NASH)とを血液検査や画像検査で簡単に見分ける方法は今のところまだありません。よって、後述するように単純性脂肪肝もすべて非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)として対応する必要があります。
■アルコール性脂肪肝
これは、もう禁酒がすべてです。ただ、肥満による脂肪肝とアルコール性脂肪肝は相反するものではなく、共存していることもしばしばありますので、減量も重要になってきます。
次のページでは、大量飲酒などに関係なくおきる脂肪肝、NAFLD、NASHについて解説します。