インフルエンザ治療薬「イナビル」とは
H1N1ウイルス。多くのインフルエンザ治療薬は、ウイルスのウニのような突起部分にある物質を阻害することで、ウイルス増殖を防ぎます
それまで発売されていたインフルエンザ治療薬「タミフル」「リレンザ」「ラピアクタ」との違いも含めてご紹介します。関連する過去記事として「インフルエンザ治療薬「タミフル」とは」「インフルエンザについて」もあわせてご覧ください。
インフルエンザ治療薬の作用・効果
「イナビル」は、「タミフル」「リレンザ」「ラピアクタ」と同じ、ノイラミニダーゼ阻害薬の一つ。インフルエンザ治療に使われます。まず、インフルエンザウイルスの増殖過程を簡単に説明しましょう。インフルエンザウイルスは、ウニのような突起をもった構造をしていて、のどの粘膜などの細胞に入り込み、感染します。
細胞に入り込んだインフルエンザウイルスは、自分と同じウイルスのコピーを、感染した細胞内にたくさん作っていきます。これを「複製」と言います。その後、感染した細胞から複製されたウイルスが放出されて行きます。放出されたウイルスはさらに別の細胞に入り込んで感染します。そして、その細胞内で増殖し……というプロセスでインフルエンザウイルスに感染し、身体がウイルスと戦うための反応として高熱などの症状が出るのです。
「ノイラミニダーゼ」とは、インフルエンザウイルスの突起にある物質のこと。感染した細胞からウイルスが外に出るときに、感染細胞の膜を破る働きをします。
多くのインフルエンザ治療薬は、このノイラミニダーゼの働きを阻害し、インフルエンザウイルスが細胞の外に出ていかないよう、次々と他の細胞に感染してウイルスが増殖しないように作用するのです。
そのため、ウイルスが増殖する前である、症状が出てから48~72時間以内に投与する必要があります。
タミフル・リレンザ・イナビルの特徴・違い
主なインフルインザ治療薬について解説します。■タミフル
成人はカプセル、小児は粉薬(体重により量が変わります)。1日2回、5日間内服する飲み薬です。成人の5日分の薬価(薬剤のみの費用)は3,179円。
■リレンザ
成人、小児ともに、1日2回 10mg(5mgを2回)、5日間吸入して使う薬。呼吸器に入って効果を示す薬で、吸入薬が使える年齢である5歳以上が適応になります。口の中に残ったものは、消化液で分解されてしまうので効果はありません。5日分の薬価は3,470円。
■ラピアクタ
成人は、1回300mg(小児は体重で変わります)を、医療機関でインフルエンザと診断を受けた際に、約15分間かけて点滴していきます。1回だけの点滴による投与なので、飲み忘れを防ぐことができます。点滴用パック1回分の薬価は、3,338円(薬だけの代金です。診察費や処置料などは別途かかります。)
■イナビル
成人及び10歳以上の小児は40mg(20mgを2本)、10歳未満の小児は20mg(20mgを1本)を1回、吸入して使います。最初の1回だけ吸入すればいいので、こちらも飲み忘れを防ぐことができます。薬価は、成人の40mgで、約4,280円。
イナビルの使い方・吸入の仕方・注意点
イナビルは、吸入して使う治療薬です。まず、ボトルの下を軽くトントンと叩き、中の粉を拡散させます。そのあと、「1」と書いてある方を押し込んで、薬剤を充てんさせ、吸いこみます。吸い込む際に、底にある空気孔をふさがないようにしましょう。
次に「2」を押して、同様に吸い込みます。全ての薬剤を吸入するために、もう一度、「1」を押して吸入、「2」を押して吸入と繰り返します。成人と10歳以上の小児は、2ボトル分(計40mg)吸い込んでください。
口の中が気持ち悪かったら、水で飲みこんでもいいですが、このままでも大丈夫です。
上記のように、通常の投与量は、10歳未満は薬剤を1本(20mg)吸入(右と左で2吸入)、10歳以上は薬剤2本(40mg)を吸入(右と左で2本分の計4吸入)します。使うのは、処方されたその時1回だけの吸入となります。
インフルエンザの感染予防として使う場合には、成人及び10歳以上の小児ともに、薬剤1本(20mg)を1日1回、2日間吸入します(2日間で計2本吸入)。
イナビルの副作用・注意点・異常行動の可能性は?
イナビルの副作用として、治験の段階で一番多く報告されているのは、胃腸障害の下痢(4.7%)。タミフルの際の注意と同様、小児(10代ぐらいも)の服用に関して異常行動が完全に否定されているわけではありませんので、投与後2日ぐらいは、保護者が注意して見守るようにしてください。
■参考サイト
・イナビル吸入方法(第一三共 患者向けサイト)
・リレンザQ&A(GSK)