癌(がん)/白血病・多発性骨髄腫・悪性リンパ腫

悪性リンパ腫の検査・治療

「血液のがん」とも呼ばれる悪性リンパ腫。病気の性質としては悪性なので、診断が確定すれば早急に治療を始める必要があります。しかし、胃がんや肺がんなどと異なり、悪性リンパ腫の治療方針とその予後には大きな違いがあります。

狭間 研至

執筆者:狭間 研至

医師 / 癌ガイド

悪性リンパ腫の検査

悪性リンパ腫に対しても、一般の「がん」と同じような検査が行われますが、一部、独特な検査もあります。

悪性リンパ腫に対しても行われる、他のがん同様の検査。一部、独特な検査もあるのが特徴

悪性リンパ腫も他の「がん」と同様、本体の病巣に対する検査と全身への広がりをチェックする検査を行います。

本体の病巣に対しては、腫れているリンパ節を局所麻酔による手術で摘出し、顕微鏡で細胞を観察する「リンパ節生検」と呼ばれる検査を行います。

全身の広がりに対しては、CT、MRI、放射性同位元素というものを用いたシンチグラフィと呼ばれる検査やPETなどを行います。悪性リンパ腫はウイルスによる感染がきっかけで発症するものもあるので、血液検査でもチェックを行います。

これらの検査を行い病気の性質や進行度をチェックした上で、治療方針を決定します。
 

悪性リンパ腫の治療には、がんの「3大療法」があてはまらない

通常の悪性腫瘍は、手術・抗がん剤・放射線の「3大療法」を組み合わせて治療します(3大療法については「3大療法のポイント」で詳しく解説しています)。基本的には腫瘍が小さいときや腫瘍ができている部位が限られているときには手術が有効で、もともと腫瘍ができている箇所から血液やリンパ液の流れを介してがん細胞が全身に広がっている可能性があるときには、抗がん剤や放射線が有効です。

しかし、悪性リンパ腫は、もともとが全身を巡っているリンパ組織の悪性腫瘍であり、一部の臓器に限定される時期がありません。そのため、治療のために手術でどこかを切除するという選択肢は基本的にないのです(ただし、病理組織の確認のために腫脹したリンパ節を切除・摘出する場合や、消化管の閉塞症状を改善するために一部を切除することはあります)。同じく全身に放射線を使い続けることもできないため、3大療法の中でも「手術」「放射腺」という大きな選択肢が使えないことも悪性リンパ腫の治療の特徴です。
 

悪性リンパ腫に有効な治療と5年生存率

悪性リンパ腫に対する抗がん剤による治療は、一般的な癌に比べて、効果が高いと考えられています。

悪性リンパ腫に対する抗がん剤による治療は、一般的ながんに比べて効果が高いと考えられている

3つの武器のうち2つが使えないと落胆される人が多いかも知れませんが、よい情報もあります。悪性リンパ腫は、胃がんや肺がんなど一般的ながんに比べ、抗がん剤が非常に良く効くことが知られています。

リンパ組織以外で腫瘍が形成されている部位があれば、そこに放射線を照射して部分的に治療することもできます。血液に関わる病気なので、「造血幹細胞移植」という通常のがんでは行われないような移植手術が治療法が有効な場合もあります。

日本では悪性リンパ腫に対して専門家による最善の治療を受ける体制が整ってきています。がん治療の指標である5年生存率も、細胞の性質によって多少異なりますが、一般のがんと大差ないところまで来ています。適切な治療を受けるのを諦めてはいけません。


悪性リンパ腫の治療目的は「完全寛解(かんぜんかんかい)」

一般的ながんの場合、治療の目標は腫瘍がある部分の完全切除。早期発見・早期治療で腫瘍が小さいうちにしっかりと切除する、「絶対的治癒切除」を目指します。

悪性リンパ腫の場合は切除という選択肢がなく、最初に発見された状態ですでに体の一部だけに留まっている状態ではないため、通常のがんと同じ治療目標を持つことはできません。悪性リンパ腫の治療では、抗がん剤や放射線治療、造血幹細胞移植など様々な治療によって、体の中から悪性細胞をなくしてしまうことを最終目的とします。

がんの色々な症状や血液検査数値の乱れ、CTなどの画像診断の異常が収まることを「寛解(かんかい)」と呼びますが、悪性リンパ腫治療で目指すのは寛解状態に入ったあと、再発がない状態がずっと続く、「完全寛解」という状態です。この10年あまりの間に悪性リンパ腫の治療に関しても治療法は大きく進歩しています。

悪性リンパ腫は比較的まれな疾患ですが、早期発見・早期治療が重要なことは他のがんと同じ。もし気になる症状があれば、早めに近くの内科を受診してください。

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