キッチンデザインの第一人者が、キッチンの最新トレンドや最適なプランを語ります。
北欧好きが、愛用の北欧モノを見せ合うコミュニティ

玄関脇の漆喰壁に「京都生活工藝館無名舎」の看板がかかる。このお住まいを会場にした様々なイベントが年間を通して行われているそうだ。
一昔前まで「白生地屋」を営んでいた商家は、通りに面した間口が約4間あり奥の蔵まで一直線に大八車が出入りできたそうで、約1メートル50センチの通路幅がある。ここに玄関から待ち合いをかねた「通り庭」があり、引き戸で区切られた台所がある。玄関手前から井戸と炊事場の研出し流し台、ガス置き台、水屋の食器棚が続く。
上の写真で見ると左手前に「おくどさん」がしつらえられている。今は大竃と背面で飯炊き用の竃が連続して左端の煙突につながる。この大竃は今も無名舎でおこなわれる泊まりがけのイベントにも使われている。
その昔は、この大竃の右手に連続して日常使われる三連の竃があったそうだ。大竃は主にお祝い事に使われることが多く、年末の餅つきの蒸籠に使った後、正月には五葉松を飾ってお祀りしたそうだ。お祝い事のひとつである産湯を沸かすためにもこの大竃が使われた。大竃の平面は奥行き880mm×幅750mmで高さは800mm。この竃も手前が一段盛り上がっており高さは920mmある。ここには釜径550φの大釜が乗せられている。左の小竈の巾寸法は600mm、奥行きが600mm、高さは980mm。
奥には釣瓶(つるべ)が掛けられた井戸があり、手前にはテラゾーのシンクがある。井戸の大きさは奥行き870mm、幅900mm、高さ800mm。シンクの大きさは奥行き650mm、幅1780mm、高さ650mm。
井戸はもう使われていないので水道はあるが、給湯器がないためこの台所での水仕事は現代人には信じられないくらい厳しいものがあるという。京の町家の生活を実感するには、この薄暗い空間にさし込む一条の明かりが創る陰影を楽しむ心と、足元からじんじんと冷え込む京の冬の厳しさを味わう必要がある様だ。
流し横にあるガステーブルと七輪。壁には祭壇が祀られ、「阿多古祀符 火迺要慎」のお札がここでも見られる。
玄関側から奥庭を望む。見上げる台所の吹き抜け空間のダイナミックさは町家の窮屈な生活から救い出してくれる癒しの空間と見ることもできる。
タイトルに京町家のシステムキッチン「おくどさん」と書いたのには理由がある。京間という言葉で知られるように日本古来の住宅には,日本独自のモデュールが決められていた。京畳から始まって建具や置き家具そして火鉢等の建築構成部材は厳格なモデュールに則って作られていた。当然のように「おくどさん」にもモデュールがあり、これらの部材は他の住まいに持ち込んでもそのまま引き戸や格子戸が納まり、おくどさんや水屋に流しから火鉢までもが代々にわたって、近在の家に引き継がれサスティナブルな建築部材として再利用を続けてきたのだ。
まさしくこれからの住宅設備機器をはじめとする建築部材が進むべき指針を,京の町家が教えてくれているのだ。
お邪魔した吉田孝次郎氏と案内してくれた木村英輝君とのスリーショット。京町家の奥深さは短時間の見学だけではなかなか理解し尽くせない。
時間を作って再度訪問してみたいものだ。
突然の訪問にも関わらず親切ていねいにご案内してくださったお二人にこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。
(C)Nov. 2005 Copyright HIDEWO KURODA KITCHEN SYSTEM LABORATORY INC
北欧好きが、愛用の北欧モノを見せ合うコミュニティ