不動産売買の法律・制度/不動産売買の法制度

消費者契約法と不動産売買 1

2001年に施行された消費者契約法ですが、一般の認知度はまだ低い状況のようです。そこで、消費者契約法の概要と、不動産売買契約のなかでの適用などを3回に分けて説明します。(2014年改訂版、初出:2004年1月)

執筆者:平野 雅之

【ガイドの不動産売買基礎講座 No.84】

消費者契約法が2001年4月に施行されてからだいぶ経ちましたが、広く一般に知れ渡っているとは言い難い面もあるようです。そこで今回は消費者契約法がどのような法律なのか、主に不動産売買の側面からそのポイントをみていくことにしましょう。


消費者契約法とは?

事業者と消費者との間におけるすべての契約(労働契約を除く)について適用され、事業者の不適切な勧誘行為によって締結された契約は、消費者がこれを取り消すことができます。また、契約条項のうち消費者にとって不当(不利)なものは、その契約条項自体が無効となります。

契約トラブルの増加を背景として消費者保護の観点から、これまで民法や商法によって処理されてきた消費者の権利を明確にした特別法ですが、この法律自体は簡素なものであり、その解釈にあたっては判例の蓄積によらざるを得ない部分も多く残っているようです。


事業者とは? 消費者とは?

消費者契約法における「事業者」とは、法人(株式会社、有限会社、合同会社、その他の営利法人、財団法人、社団法人、宗教法人、医療法人、地方公共団体、その他法人格を有するもの)、その他の団体、事業として(または事業のため)契約の当事者となる個人のことをいいます。

したがって、たとえ個人であっても店舗や事務所の購入・売却や、アパート・マンション・ビル経営を行なう場合などには、消費者ではなく事業者に該当します。

「消費者」とは、不動産売買の場面で考えれば「自らの居住用住宅または土地を購入・売却する個人」です。自ら住まなくても親族を住まわせるなど、事業性がない場合には消費者となりますが、家賃を得て第三者に貸す目的の住宅であれば事業者とされます。

ただし、転勤などで住まなくなった住宅を一時的に貸す場合には消費者とする考え方が強いものの、1室のみの賃貸について「事業者」に該当するとした判例と、「事業者」に該当しないとした判例が混在する状況です。

消費者契約法自体がもともと不動産を念頭に作られた法律ではないため、定義があいまいな部分も多く、判断が難しいケースもあるでしょう。


消費者契約法が適用される不動産取引

不動産で消費者契約法が適用されるのは、売買契約・賃貸借契約・媒介契約・代理契約・建築請負契約・設計契約などすべての契約について、「事業者と消費者との間で締結される契約」(消費者契約)です。そのため、事業者同士の契約や、消費者同士の契約には適用されません。


宅地建物取引業法との関係

宅地建物取引業者が売主、宅地建物取引業者でない者が買主となる契約では、もともと宅地建物取引業法が適用されることになっています。

そして、宅地建物取引業法が適用される契約において消費者契約法と異なる規定(瑕疵担保責任損害賠償額の予定など)がある場合には、消費者契約法よりも宅地建物取引業法が優先して適用されます。

それ以外にも個別の法律があって規定が異なるときは、消費者契約法よりも個別の法律が優先されます。ただし、民法および商法との関係では消費者契約法が優先されるため、十分に注意しなければなりません。

その一方で、消費者契約法では事業者が宅地建物取引業者であるかどうかを問いませんから、たとえば一般の法人が社宅として所有していたマンションの1室を消費者である個人が購入する契約でも、消費者契約法が適用されることになります。

また、消費者が購入する立場の場合だけでなく、たとえば消費者である個人が所有していた住宅を、宅地建物取引業者が購入(買取り、下取りなど)する契約でも、同様に消費者契約法が適用されます(この場合は売主保護となります)。

なお、宅地建物取引業法は一定の禁止行為に対して宅地建物取引業者を監督処分したり罰則を課したりすることが主眼であり、禁止行為があったからといって売買契約の効力そのものがなくなるわけではありません。

それに対して消費者契約法では、契約の取り消しができることを定めている点が宅地建物取引業法と大きく異なるところです。


【消費者契約法と不動産売買】
1 消費者契約法の概要
2 契約を取り消せる場合と行使期間
3 無効とされる契約条項


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