昔から言い伝えられている食べ物と病気の関係。先日、その中でも代表的な「ネギは風邪にいい」がマウスを使った研究により、科学的に正しいことがわかったそうだ。発表したのは富山大大学院医学薬学研究部の林利光教授。すぐに風邪に効くというわけではなく、インフルエンザウィルスなどに対する体の備えを強化する働きがネギにはあるようだ。では、他の言い伝えはどうなんだろうか。数ある知恵袋的な食物と健康の関係、実証されてるもの、あやしいものを「食と健康」ガイド、南恵子氏に解説してもらった。
今回の発表に対して、南氏の見解はこうだ。
「私も今回のニュースには注目しました。これまでもネギは風邪にいいと言われていましたからね。今回の発表では特定の成分は報告されていませんでした。もしかすると新しい発見もあるのかもしれませんが、これまでもネギ類になどに含まれる硫化アリルが風邪の症状改善に役立つと言われていました」
ちなみに硫化アリルというのは、タマネギなどに含まれる刺激物質で、みじん切りにしたときに涙を出させる成分である。どうやって食べると効果的なのだろうか。
「ネギの白い部分に硫化アリルが多く含まれています。硫化アリルは熱に弱く水に溶けるので、あまり加熱しすぎないほうがいいですね。例えばお味噌汁ができ上がって最後にたっぷり刻んだ白ネギを入れるといいですね」
ネギ以外にも昔からの言い伝えで、風邪にいいとされる食品はいくつもある。卵酒、生姜、ニンニク、梨、りんご、ニラ、みかんなどあげればキリがない。こういった言い伝えはどのように生まれてきたのだろうか。
「昔は、医療も発達していませんでしたし、庶民がお医者さんにかかるというのも経済的にたいへんだったんですね。だから、手近にある食べ物で手当していこうというとしたんではないでしょうか」
これらは民間療法といわれているが、南氏は昔の人々がどうやって病気と食物の関係を見つけてきたのか解説する。
「あれは効いた、これは効かないという試行錯誤もあったでしょうし、動物がある物を食べるのを見て、人間にも応用してみたっていうこともあるんですよ」
今回のネギのように民間療法が正しいということが科学的に実証されたが、その他のものも鵜呑みにしても大丈夫なのだろうか?
「中には、贅沢を戒めるものや信仰的な意味のものもありますから、全てが科学的に正しいとは言えません。けれども、長い間言い伝えられてきた民間療法や食べ合わせの中には、理にかなっていて見習いたいものがたくさんあります。ただし、今回の報告ではネギの抽出物についての実験で、食べ物として食べる場合は、薬のような効き目を期待しすぎないことです」
長い歴史のなかで、科学的な考察も重ねることで、間違った言い伝えは淘汰され、有効なものが残っていく。おばあちゃんの知恵袋ではないが、年長者にこれまでの民間療法をもういちど詳しく聞いてみたくなってきた。
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