卓球/卓球関連情報

世界卓球選手権大阪大会ルポ 練習会場から見える風景(18)

連載ルポルタージュの18回目。高島氏へのインタビューの最終回。

執筆者:壁谷 卓

日本チームが今大会に臨むにあたり、私には気になったことがひとつあった。男女合同で合宿をしたのが、1月の5泊6日の1度きりだったことである。

混合ダブルスは、各国ともほかの種目にくらべて強化がおざなりになりがちであり、それゆえ「狙い目」の種目ともいえる。今回に限らないのだが、もう少し強化の時間を費やしてもいいように思えたのだ。かりに練習時間がさほどとれないにせよ、「2人の呼吸」次第で1プラス1の値が変化するダブルスにおいて、さらには総合力が試される団体戦を戦ううえでも、ともに合宿をする意味はけっして小さくないはずだ。

そんな素人の戯言を、私は高島氏にぶつけていた。「そうですね」とあいづちを打ちながら聞いていた高島氏が口を開いた。

「男女をセパレートしてやるというもの、それはそれでひとつのやり方だとは思うんです。それはそれで悪くはないんですが、僕がナショナルチームをやってるときは『連合艦隊』を組まなきゃいけないと。日本の全体の力を結集して、サポートしてくれる人はどんどん取り入れましょうという感じでやってましたからね」

そして、ふと思いついたように切りだした。
「あの、今大会のまえに松下浩二が電話してきて、『なんともならないんで、見てくれませんか』と言うんです」

1975年カルカッタ大会の男子シングルスで3位になり、全日本選手権でも3度優勝した高島氏は、日本が生んだ卓球史上屈指のカット型選手として知られ、「ミスター・カットマン」とも呼ばれる。おなじスタイルの松下浩二は、折にふれて高島氏のもとを訪れるようになっていた。

当然、このときも高島氏は了承した。
「でも、あなたひとりで来たって、僕はカット打ちできるわけじゃないから、トレーナーを連れてこなきゃできない。どうせやるんだったら、直前ミニ合宿という形をとって、若手の木方とか、倉嶋とか、三田村とか、代表メンバーでカットをがんがん打てるのを連れてきたらどうだ。それには前原君の許可がいるだろう。あなたからお願いすれば、うんと言うんじゃないか」
わかりました、と松下は答えたという。
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