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縮まる距離、WWEのネット戦略(2ページ目)

2006年9月21日、世界最大のプロレス団体WWEの日本語オフィシャルサイトがオープン。このサイトがもたらす変化やメリットを、サイト運営を手がける日置貴之氏に話を聞いてみた。

執筆者:川頭 広卓

やると決めたら一気にTOPへ WWEの凄みとは?

日置氏の隠れアイテム。WWE愛を感じるワンポイント?
日置氏:WWE自身がテレビやPPVで育った団体ですから、彼らにとってはネットの優先順位がそこまで高い訳ではなかったんです。

ガイド:そんなWWE体質を動かした要素は?

日置氏:そこがWWEのWWEたる由縁なんですよ。2004年になって、WWEに新しい事業部隊が生まれ、徐々に稼動していったんです。彼らはやると決めたら、チョコチョコとやるのではなくて一気にトップへともっていきますので、人材も増やしてニューメディアを事業の柱として据えたんですね。

ガイド:そのあたりは、さすがWWEという感じですね。

日置氏:そこで彼らは、24/7というサービスを作って、過去のアーカイブを一気にデジタル化する作業を始め、インターネットでしか見れないコンテンツをドンドン作っていった。パワー25という選手の週変わりランキングであったりとか、FANTASYとか、今ではお馴染みのサービスコンテンツなんかもあります。

ガイド:FANTASYの様に、実際のストーリーと連動する仕組みは魅力的ですね。

日置氏:そうですね。一番大きいのは、WWEがストーリーの中にネットを組み込み始めたことです。RAWの中で「ネットでこんなことが出ていたんだけど本当か?」みたいに、選手の掛け合いが始まったりすることもありました。サイトをストーリーやイベントのリカバーとして利用するのではなく、WWEを形成する機能の一部として組み込んだんですよ。

ガイド:ある意味、WWEにとっても企業としての転換期だった訳ですね。

日置氏:はい。そこから一気に自分達の提案が現実味を帯び始めて、話を進めることができました。

ガイド:日本語サイトの展開で、目指しているものはなんでしょうか?

離れているファンへ、帰り道を作る

日置氏:まず、本国に比べて全体のパイが小さいですから、マーケットの掘り起こしというか、元々のWWEファンにもう一度今のWWEを観てもらいたい、戻ってきてもらいたいと考えています。

ガイド:昔のファンを呼び戻す?

日置氏:ロック世代、ホーガン世代、ブレット世代であったりと、時系列によってファンのニーズが違ってしまうのはあまりいいことではありませんよね。今のファンは、当然、“今”から入って「昔はどんなレスラーがいたんだろう?」というように“過去”にも目がいきます。でも“過去”を知る場所がなければ、それを見にいくことができないだけではなく、逆をいえば“過去”のWWEファンにとっては、“今”に辿りつく道がない状態なんですよ。

ガイド:確かにおっしゃる通りですね。

日置氏:わかりやすくいうなら、僕はアメリカンフットボールが好きだったんです。でも、数年間観てなかったら、今のチームや選手が分からないじゃないですか。過去にフットボールを観ていた頃から、現状についての橋渡しをするものなり情報があれば、ブランクを埋めるだけではなくて、過去のファンが今のファンにも成り得る。ケーブルテレビとかでも、過去のスーパーボウルの方が視聴率がいいというケースは、結構あるんです。僕らは「スリーパー」って呼んでいるんですが、眠っている人たちを起こす。それはイコール、新しいファンを集めていることにもなります。

ガイド:なるほど。よく理解できます。

日置氏:とにかく大事なのは、時系列を取っ払って過去も現在も共存させる。テレビは現在しか観ることはできませんが、インターネットではそれが可能になります。ここが(日本版サイトの)核となるのではないでしょうか。
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