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新日退団 成瀬昌由、その沈黙を破る(3ページ目)

新日本プロレスは、2006年1月の契約更改で例年以上となる多くの退団選手を出した。成瀬昌由もその一人。依然として沈黙を守っているが、今、成瀬昌由は何を考え、何をしているのだろうか?

執筆者:川頭 広卓

「痛みは体に記憶される。試練に耐えてこそ、強くなれる」

護身術の中にも、「使える」という本質を基本にして教えてくれた
ガイド:成瀬さんの精神基盤は武士道や歴史上から形成されたところも多いですよね?もちろん、リングス時代の過酷な日々も……。

成瀬選手:歴史オタクですから(笑)。でも、心の鍛錬なんかは意識してやったところもありますね。

ガイド:心の鍛錬ですか?

成瀬選手:僕は今まで3回全身麻酔の手術をしているんですが、2回目が腰の手術だったんです。これが大手術で、僕の人生の中で最大の痛みだったです。手術ってされたことあります?

ガイド:いや、私はないんですよ。

成瀬選手:外科手術って身体を切るから熱を持つんですよ。で、麻酔が切れた後っていうのは、痛いは熱は出るわで、点滴の中に鎮痛剤が入っていたり、経口薬や座薬で痛みを和らげるんですけど、腰の痛みとか半端じゃなくて、寝返りもできず、30分毎にナースコールして、後は痛みにのた打ち回っている。

ガイド:想像を絶しますね……。

成瀬選手:実は、僕は当時の自分を恥じてるんです。「武道家という観点から見てもみっともなかったな」と。

ガイド:いや、それは仕方ないですよ!

成瀬選手:だから、3回目の肩の鍵盤を手術した時は、術後、痛みを限界まで我慢して、出来る事なら座薬や痛み止めの経口薬を飲まないようにしてみようかなと……。そしたら、我慢できちゃったんですよね。痛いし、熱も出たんですけど、腰の時程ではなかったので。以前、ムエタイの先生がいってたんですが、ボディに喰らう痛みとかってのは、身体にメモリーされるそうなんですよ。だから、ボディでKOされる時というのは、その痛みを超えた時だと。なので、自分にとっては痛みが腰の時よりも強くはなかったので、のた打ち回らずに、じっと我慢できたんだと思います

ガイド:常人なら絶対無理ですね。

成瀬選手:ちなみに手術は、1回目が内側靭帯で、2回目が腰。3回目が肩だったんですが、1回目の時に、身体に負担は掛かるんですけど、せっかく全身麻酔かけるんで勿体無いから、ねずみ(※)もとって貰おうと思って二箇所同時に手術をお願いしたんですよ。先生も「成瀬さんの体力なら大丈夫だろう」って。

ガイド:既に1回目の手術から試練に挑んでいたのですね……。

成瀬選手:実は、3回目の手術の時も、肩の鍵盤と肘のねずみの手術を同時にしてもらったんです。先生は「またかい?」って(笑)

ガイド:前田道場からプロになるだけでも、その精神力は尋常ではないと思いますけど、さらに心の鍛錬をしようと思い立ったのは?

成瀬選手:昔、勝海舟が9歳の頃、読書の稽古の帰りに野犬に急所を噛まれて、血だらけになって家に戻り、勝海舟の親父がその傷を見て「手術しなきゃダメだ」ってなって、外科医を呼んで手術をしたんです。当時は麻酔もないし、多分焼酎ぶっかけて(手術を)やったと思うんですけどね。その時、勝海舟が痛みで振るえ泣き叫んだら、親父が刀を畳に刺して「侍の子の癖に泣くな、武士として恥を知れ」といったら、勝海舟は耐え抜いたらしいんですよ。

ガイド:それはそれで凄い親ですね……。

成瀬選手:でも、それを聞いて、人間やろうと思えば何でもできるんだな。俺もやろうかなって。

ガイド:成瀬選手の強靭な精神力のルーツが分かりました。

成瀬選手:変に受身でいると、気がついたら流されていたってこともありますし、やっぱりそうではなくて、何でも自分のモノの捉え方一つ。日本人っていうのは、たかだか160年前に日本刀差して、ちょんまげ結って、その辺を闊歩していた。当時の江戸というのは欧米列強から比べると、文明的に劣っていたと思われがちですが、実は人口からいっても世界で三本の指に入るほどの大都会で、学問や芸術といった文化は、同時代のロンドン、ニューヨークと比べても、勝るとも劣らなかったであろうと言われています。その後、変に西欧化したというか、文化を求めていったというのもありますけどね。日本人は、文明的にも水準は高く、精神的にも本当に強かった。そういうモノを置き忘れないようにというか、大事にしたいんですよ。

ガイド:成瀬選手なら、思い描いたことを必ず実現してくれますね。年内の発表も楽しみにしています!

※遊離軟骨の通称。格闘技であれば、打撃の衝撃等で骨の一部が欠け、体内に残ってしまうケースも多い。

右:成瀬選手、左:ガイド。ガイドが着用しているのは成瀬選手の“心・技・体”Tシャツ!
■プロフィール:成瀬 昌由

昭和48年3月15日生/O型/東京都杉並区出身。
高校から空手を始め、1991年、前田日明が主宰するリングスへ入門。翌年5月、有明コロシアムでデビューを果たし、1997年にはリングス中量級王座決定戦「トーナメント21」に優勝。新日本プロレス移籍後には第40代IWGPジュニア王者に輝き、2003年には大晦日の格闘技イベント「Dynamaite!!」に出場、K-1の大巨人ノルキヤを秒殺、2004年には、アジアタッグ王座を戴冠した。今年に入り、自らの夢のため、新日本プロレスを退団。今後の活躍が期待される。愛称は“自由人”。

趣味:読書・流離いの旅(史跡探訪)・サーフィン・オートバイ・酒
特技:一輪車・裁縫
ブログ:自由人ブログ
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