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K-1 Maxにまで飛び火したボクシング対抗戦 「魔裟斗ついにボクサー戦へ」(2ページ目)

ボタ、タイソンに続いて「K-1vsボクシング」の構図は、ついにMaxに飛び火することになった。受けて立つ魔裟斗は本当に天才ひしめくこの階級で、世界の檜舞台で栄光をつかむことが出来るのだろうか。

執筆者:井田 英登

スカー・デ・ラ・ホーヤの先日のショーン・モズリイ戦のファイトマネーが、約20億円といわれる世界。まさにスポーツビジネスのトップ中のトップ。仮に東京ドームを舞台にしたところで、ハウスショーの興行だけではこのギャランティーをまかなうことはできない。それだけのバリューと歴史のあるボクシング界が、いわば新興スポーツでしかないK-1との「対等外交」に応じるわけも無い。

実際、鋭いビジネスセンスとジャパニーズマネーを武器に石井館長がアタックをかけてもびくともしなかったボクシング界の厚い壁は、そう簡単には動きはしないだろう。タイソン個人は、破産宣告という例外的な背景もあってK-1とのマネージメント契約に応じたわけだが、あくまで北米地域でのボクシングビジネスにはタッチできない契約であったことも無視できない。
ボクサー達もバカではない。実際、自らのキャリアの可能性の中に、少しでもボクシング界に居残る芽が残っていれば、彼らは迷うことなく名誉とビッグマネーの約束されたボクシング残留を選ぶはずである。今のところ、K-1はまだまだ引退直前の「お小遣い稼ぎ」の場でしか無いということになってしまう。

追い上げるK-1側とすれば、そうした引退前のボクサー達を釣り上げてでも、確実にそれをモノにし“企業戦争”を形にしていかねばならないわけで、フィリップス獲得だけでもかなり頑張ったと言いたいところではあろう。そして、往年の名ボクサー達が、K-1ファイターに倒される姿を見せ付けることで、ソフトとして優位性を一個一個証明し、この遠大な“下克上”を成し遂げなければならないわけだ。

だがそれは口で言うほどたやすいチャレンジではない。
このところK-1ファンを嘆かせ続けてきた「プロレス交流」とは、スケールもそして覚悟も全く違う、とんでもないチャレンジになのだ。そのことを、どれだけ主催者側が理解しているかどうかが、本当のキーになるような気がする。これはリングの上だけではない、フロントもファンも、下手をすればアメリカという国のメジャースポーツに対する、アイデンティティを問う国家間の戦争にも等しい戦いになりかねない。ただ話題になれば十分という中途半端な姿勢で始めるなら、ボクシングという歴史あるスポーツに対しても失礼であるし、意味のないちょっかいにしかなならないということだけは、指摘しておこう。

当にボクシング界と全面戦争に入るつもりなら、旗頭となる魔裟斗だけでは絶対にコマが足りないし、対戦相手ももっとグレードをアップさせて、話題が渦巻く世界にしていかなければならないはずではないか? 今の現有戦力でボクシングと事を構えようというのはあまりにも無謀な気がする。ビジネス面での市場調査や資金確保がどこまでできているかも、はなはだ疑問だ。本来ボクシング界全体がビジネス交流に傾くぐらいのスケールでの、切込みを見せなければ、この話は誰の心にも火をつけない。仮に中途半端な‘ちょっかい’でおわるとなると、全米のケーブル市場やラスベガスの興行筋が、逆に“信頼できないスポーツ”としてK-1を敵視し、締め出すぐらいのことはやりかねないということなのである。


何度も言うようだが、選手のピックアップにしても、まだフィリップスでは物足りない。同じ全盛期を過ぎた選手でも、デ・ラ・ホーヤとボロボロになりながら12回を互角に打ち合った、ガーナの野生児アイク‘バズーカ’クォーティーあたりをピックアップしてくれれば、ボクシングマニアでも少し身を乗り出すようなカードになった気がする。(余談ながら、クォーティーというのは、やはり90年代後半のライト~ウェルターシーンで、爆発的な右を武器に暴れまわったミニタイソンともいうべき、ラッシャータイプのハードパンチャーで、フィリップスなどは96年4月に、たった3RでKOされていたりするのである。)。実際、彼のマッチメイクを仕掛けにアメリカにわたった、ジョー小泉氏があまりの高額のファイトマネーに手を焼いたという話も聞いたことがある。それぐらいボクシングビジネスというのは難攻不落の城であり、また、それを取り崩せるぐらいのコネクションや交渉力がなければ、ボクシング対抗戦というのは、手をつけてはいけない「禁断の果実」のはずなのだが。
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