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石毛宏典氏の四国独立プロ野球リーグ構想を検証 「四国独立リーグ構想の成算」(4ページ目)

元西武・ダイエー選手で元オリックス監督の石毛宏典氏が掲げた、四国独立プロ野球リーグ構想。四国各県1チームずつの4チームで来季からのリーグ戦実現を目指すが、果たしてその成算はどうだろうか。

執筆者:コモエスタ 坂本

独立リーグあれこれ

ここで、四国独立リーグとの比較検証のために、他の様々な独立リーグの運営例を挙げてみよう。まずはアメリカンフットボールだ。アメフトはラグビーを変形したアメリカ独特のスポーツで、アメリカ国内のみにおいて既存のプロリーグ(NFL)が興行的に成功を収めている。NFLは積極的な戦力均衡策や地域との連携、またわずか16試合しかないシーズンゲームを逆手にとったレア化に成功し、スポーツビジネスの一つの成功モデルと言われている。

当然のことながら、NFL以外でアメフト人気にあやかろうと独立リーグを設立するという構想は何度も持ち上がり、実際にWL、XFL、AFLなどの団体ができた。WL(ワールドリーグ)はヨーロッパを巻き込み、アメリカのチームと大西洋を股にかけたリーグ展開だったが、91・92年とわずか2シーズンでリーグは解散した(現在はNFLヨーロッパに継承されている)。

XFLはアメリカのプロレス団体、WWF(現WWE)がNBC放送と組んで設立した団体だ。NFLのオフ期間をシーズンとし、エンターテイメント性を売りにしたが、これも2001年、1シーズン限りで大赤字撤退。無理に作り上げたリーグの脆弱さが現れた格好だ。

一方、アメフトのライト化とNFLとの完全な差別化で成功しているのがAFL(アリーナフットボールリーグ)だ。AFLは8人制の室内アメフトで、NFLのオフがシーズン。チケットもNFLに比べると安く、87年設立以来18シーズン続いている。

アメフトから野球に目を向けると、アメリカの野球独立リーグも一応の成功はしている。これはMLBとの差別化というよりも、MLB傘下のマイナーリーグと同レベルのチームをうまくリーグ化できたということだろう。四国独立リーグもこのモデルを参考にしていると思われる。

日本でも独立リーグがなかったわけではない。マスターズリーグはプロ野球OBによるリーグで、今年4シーズン目を迎える。これは選手の知名度による集客能力やスポンサーシップも大きいが、選手が他の仕事(野球関連や一般社会人)を持ち、副業的に携わっているという点もリーグ存立という点では重要だろう。

最後に、四国独立リーグに比較的近いモデルと思われる、台湾大リーグ(台湾大連盟)という野球リーグの話を書いておこう。97年に誕生し、03年に既存の中華リーグに吸収されるまでの6年間の話だ。

台湾大リーグの6年間

台湾リーグ(台湾大リーグ、台湾大連盟)は、台湾既存のプロ野球リーグである中華連盟に起こった八百長騒動などの激震のさなか、放映権争いを巡って誕生した新リーグだった。球界激震の状況で誕生したという点も四国独立リーグに類似しているが、4チームでシーズン96試合(当初)だったこと、1チームの背景人口が200万人程度だったこともよく似ている。

台湾リーグは台湾を北から4つのエリアに分け、フランチャイズ制を明確にしたが、やはり選手のレベルと、中華リーグとの非交流(両リーグでのシリーズ戦すらなかった)などによって、興業としての盛り上がりに欠けたのだ。初期こそ中華リーグから呂明賜(元巨人)や陳義信(元中日)らのスター選手や強力外国人助っ人を強引に引っこ抜いて盛り上がりはしたが、すぐに人気低下→予算削減→選手レベル低下の負のスパイラルに陥った。その後元々のスター選手も高齢化し、肝心の本土選手(台湾人選手)の海外流出(日本・アメリカ)も進み、リーグを立て直すことが不可能になった。

そこで歴史的な大和解により、03年中華リーグに合流した。その際、4つあったチームは2つに削減され、中華リーグの4チームと合わせて6チームとなったが、それでも元台湾リーグの2チームは下位に低迷している。

この事例をすぐさま四国独立リーグにあてはめるのは相応しくないかもしれないが、他のリーグと比較してあまりにもレベルの低い興業・地域密着策の不振などが重なれば、観客動員は目に見えて落ちるのだ。四国独立リーグも800人という低い観客動員目標だと、下手すると誰も見ないものに陥る可能性もある。スモールモデルのリーグ運営はいいのだが、積極的な興業振興策を取らない限り、リーグの存続は難しいだろう。野球王国四国の野球人気頼りだけでは、甚だ心もとないのだ。


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