「失火法」が適用されないケースで役に立つ
「爆発事故」を起こすと被災世帯への賠償責任が生じる
一方、これがうっかりミスではなく、誰もが注意すべきところで重大なミスを犯したため起きた火災なら話は別。こうした重大な過失(「重過失」といいます)による火事ですと、失火責任法は適用されません。こうなると延焼先への賠償責任が生じ、本当に大変なことになります。
延焼先が「火災保険」に加入していれば、保険金はまずそこから支払われますが、そうはいっても賠償義務を負うのはあくまでも火元。となりますと、延焼先が契約している保険会社は、延焼先に支払った保険金の範囲内で、火元へその分を返してくれるよう、求めてくる可能性もあります。そこで、重大な過失による損害賠償責任を負った場合、「個人賠償責任補償」の契約があれば、支払うべき損害賠償金について、そこから補償を受けることができるのです。
重大な過失による火災事故のほか、ガス爆発事故も補償対象。火災が発生しなければ失火責任法の適用外となるため、被災世帯への賠償責任が生じるのです。
また、マンション住まいの場合、うっかり水道を出しっぱなしにするなどで水濡れ損害を起こし、階下の家財等に損害を与えてしまうこともあります。こうした場合も補償されますから、備えあれば憂いなし、ですね。
自転車による交通事故もOK
自転車事故の経済的リスク、実は大!
自動車やバイクであれば、自賠責保険や任意自動車保険でカバーされる交通事故も、自転車はそのいずれのカバーもなされません。
最悪の場合、死亡事故も発生しかねない交通事故。自転車ドライバーにも何らかのカバーは必要といえますが、こちらも個人賠償責任補償でカバーされます。
自転車の運転によって人にけがを負わせたり、人のモノを壊した場合、被害者に対する損害賠償金をカバー。さらに裁判になった場合の争訟費用や臨時費用もカバーされます。
また、ペットブームが続く中、飼っている犬が他人を噛んでケガをさせたとか、ホームパーティで食中毒発生、といった事故もOK。さらに同居の家族(下宿している子どもも含む)が起こした事故であれば、補償を受けられますから、幼児がいたずらをして他人のクルマを傷つけた、妻がショッピングセンターでガラス製品を落として割ってしまった、といった場合もOKです(なお、契約によっては同居の親族や別居の未婚の子どもは、「同一生計」という条件がつく場合があります)。
知らないで契約していることも。要チェック!
知らないで契約しているかも。ぜひ確認を!
大変な事故のときにこそ心強いこの補償ですが、保険料は低廉。商品により異なりますが、保険金額1億円の場合、保険料は年間1000円(東京都/保険始期日2017年10月1日/保険期間1年/セゾン自動車火災「じぶんでえらべる火災保険」の場合)です。
まあ、それだけ事故も少ないということでしょうが、損害の規模がどの程度になるのかは予測がつかず、また相当な損害規模になる可能性もあるのが賠償事故。発生頻度からみれば頻繁ではありませんが、家計貯蓄では到底対応が不可能なこうしたリスクこそ、保険のしくみを利用して備えるのが合理的といえるでしょう。
以前は単品商品の個人賠償責任保険として販売されてもいたのですが、現在では、火災保険や自動車保険などに特約としてセットするのが一般的です。
また、マイホーム世帯のほか、賃貸世帯では賃貸借契約の際に合わせて火災保険の契約をしますが、たいていの場合、それには個人賠償責任補償がセットされています。このように、あまり認識のないうちに契約していることもありますので、確認してみましょう。
名誉棄損や、プライバシーの侵害などは、NG
仕事上の事故や人格権侵害などは対象外!
わかりやすい例で言いますと、蕎麦屋が出前のために自転車に乗っていて、誤って人にぶつかって第三者にけがをさせたり、衣服を汚したりといった場合は個人賠償責任補償では対象となりません。あくまでも暮らしの上での賠償責任が対象となるのです。
また、名誉毀損やプライバシーの侵害などでも保険金が支払われません。つまり、実際に他人のモノやカラダに損害が発生していることが、保険金が支払われる条件になるということです。
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