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名作『ボヴァリー夫人』が映画化(2ページ目)

名作『ボヴァリー夫人』が鬼才ソクーロフによって映画化! 原作の魅力をご紹介します。

石井 千湖

執筆者:石井 千湖

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ストーリーではなく描写を読む楽しさ

ボヴァリー夫人 (河出文庫)
<DATA>タイトル:『ボヴァリー夫人』出版社:河出書房新社著者:ギュスターヴ・フローベール価格:1,155円(税込)こちらは森茉莉の息子、山田ジャク訳。
実際に読んでみると驚くでしょう。(以下、引用は山田訳より)

僕らは自習室にいた。

という一文で、本書は始まります。この「僕」、ロジェ君の視点で、のちにエンマの夫になるシャルル・ボヴァリーの少年時代のエピソードが語られるのです。ヘンテコな帽子をかぶっていたこと、自己紹介に失敗してからかわれたこと、先生に〈私は道化者です〉と二十回書かされたこと。

帽子の細かな模様まで正確に描写していく文章を読んでいると、不格好な少年の姿を、具体的に思い浮かべずにはいられません。言葉だけで見知らぬ人間の存在が立ち上がる面白さ、人物批評の面白さを感じさせる冒頭です。

シャルルは猛勉強して医師になり、親のすすめで年上の女性と結婚しますが、患者の娘エンマの虜になっていきます。まじめで良い人なんだけどね……という感じのシャルルに対して、エンマは実に魅力的です。例えば、エンマがシャルルにリキュールをふるまい、自分も少しだけ飲む場面。

ほとんど空なので、彼女はのけぞるようにして飲んだ。あおむいて、唇をとがらせ、頸をのばしても口のなかに何も感じないのを笑っている、その美しい歯並みのあいだから舌の先が延び、グラスの底をちろちろ舐めた。

エロいですねえ。陰では黒く、日なたでは濃い青色に見える大きな目にも惹かれます。前妻の急死を機に、シャルルはエンマにプロポーズ。ふたりは結婚するのですが、詩や小説に描かれているような情熱的な恋や、豪奢な貴族の生活にあこがれていたエンマは、素敵なもの全般に興味がないシャルルにがっかり。日々、不満を募らせていくのです。

「悲劇」と紹介されることが多いですが、可笑しいシーンもあります。
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