東野圭吾『聖女の救済』『ガリレオの苦悩』

映画「容疑者Xの献身」もヒット中。東野圭吾のガリレオシリーズ最新刊が2冊同時に刊行された。その内容とは？　警視庁の刑事・草薙俊介と物理学者にして名探偵の湯川学のコンビに、新人女性刑事・内海薫を加えた3人が難事件に挑む。

ガリレオシリーズ最新長編『聖女の救済』

＜DATA＞タイトル：『聖女の救済』出版社：文藝春秋著者：東野圭吾価格：1,700円（税込）

直木賞受賞作『容疑者Xの献身』の刊行から3年。ついにガリレオシリーズの長編第2弾が上梓された。タイトルは『聖女の救済』だ。

本書はある夫婦が別れ話をするシーンから始まる。IT企業社長の真柴義孝とキルト作家の綾音だ。義孝にとって結婚は子どもを持つための手段。1年経っても綾音が妊娠しなかった場合、離婚するといっていた。冷酷に期限が来たことを通告され、妻は決意する。

私はあなたを心の底から愛しています。それだけに今のあなたの言葉は私の心を殺しました。だからあなたも死んでください――。

そして義孝が毒殺される。自宅でコーヒーを飲んでいて倒れたのだ。綾音は土曜日の朝に実家のある北海道へ発ち、義孝が死んだのは日曜日の夜。彼は土曜の夜と日曜の朝にも同じコーヒーを飲んでいて、そのときは無事だった。強い動機はあるものの、綾音の犯行は不可能と思われた。しかし綾音に疑惑を抱く内海は、湯川に協力を要請し毒物の混入方法を解き明かそうとするが……。

湯川が出した結論は「虚数解」。シンプルかつ盲点を突かれるトリックが実に面白い。ドラマと映画で湯川を演じたあの人の名前もちらっと出てくる。

次ページでは同時刊行の短編集をご紹介。