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第139回直木賞候補作その2

第139回直木賞の候補作、新野剛志『あぽやん』と山本兼一『千両花嫁―とびきり屋見立て帖』をご紹介! その職業だからこそ遭遇する事件+αの工夫が読みどころの2冊だ。

石井 千湖

執筆者:石井 千湖

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第139回直木賞の候補作、新野剛志『あぽやん』と山本兼一『千両花嫁―とびきり屋見立て帖』をご紹介! その職業だからこそ遭遇する事件+αの工夫が読みどころの2冊だ。

新野剛志『あぽやん』

あぽやん
<DATA>タイトル:『あぽやん』出版社:文藝春秋著者:新野剛志価格:1,890円(税込)
『あぽやん』の“あぽ”とはAPO(空港の略称)のこと。そこで働く旅行会社のスタッフが“あぽやん”なのである。本書は空港所に配属されたばかりの遠藤慶太の視点で“あぽやん”の活躍を描く連作だ。

舞台は成田空港。海外旅行がメインだけに、トラブルが多い。たとえば、再入国ができなくなるのを知らないまま出発しようとする日系ブラジル人少女がいたり、パスポートを忘れて親に置いて行かれた子どもがいたり、予約のデータが消えて旅立てない新婚夫婦がいたり。“あぽやん”たちはどうやって事件を解決し、旅客を笑顔で送り出すのか? 

あまり実情が知られていない職業にスポットライトを当てる、というのはよくあるパターン。そこに世代論を絡めているところが本書の特色だと思う。主人公は就職氷河期世代で、先輩はバブル世代、所長は団塊世代というふうに。各世代のメンタリティと仕事への向き合い方が結びついているのだ。女性キャラも自分探しで習い事を山ほどしていたり、やや類型的なのだが、働く人に普遍的な悩みを描いているので共感を呼びそうだ。

次ページでは山本兼一『千両花嫁―とびきり屋見立て帖』を紹介。

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