歌舞伎/歌舞伎関連情報

「歌舞伎に恩返ししたくて」 イヤホン解説・おくだ健太郎さん(2ページ目)

歌舞伎初心者の強い味方、イヤホンガイド解説者のおくだ健太郎さん。NHKの歌舞伎解説でもおなじみです。「歌舞伎には並々ならぬ恩がある」というおくださんへインタビュー。

執筆者:五十川 晶子

役者とのコミュニケーションも必要

舞台の上の役者にとっては、どんなふうに解説されるのか、どんなタイミングで言われるのか、気になるところだろう。役者によっては解説原稿を前もって見せることもあるそうだ。逆に全くノータッチの役者もいるし、キューのタイミングなど、一緒に考えてくれる役者もいるという。いずれにしろ、解説者と役者とのコミュニケーションは欠かせないと思うのだが。
「正直、それは今現在十分とはいえないですね。コミュニケーションが必要かどうか人によるのでしょうが、お互い介入する・介入しないではなく、どんな風に考えているかを交換する機会はいると思うんです。そてに僕としては、お客さんはもちろん、役者も、そしてイヤホンを使っていないお客さんにとってもトータルにバランスのいいガイドを目指したいと思うんです。ガイド解説の影響で、ある時点で聞いているお客さんがどっと笑うことがありますよね。聞いていないお客さんは気になります。そういうことにまで気を回して作るようにしたいなと。だって劇場全体の雰囲気に関わりますからね」。


アナウンサーのようなしゃべり方はNG?
ガイド解説者にもいろいろな語り口があり、スタイルがあり、解説内容も人によりかなり色合いが違う。だがどの解説者の声もすっと耳になじむような気がする。やはりアナウンサーのように渇舌良く、通りのよい声がいいのかとおもいきや。
「いえ、逆です」ときっぱり。
「イヤホンの場合は、あんまり前に出るような声はだめなんです。何気なく始まり何気なく終わる。ピアノのソフトペダルを踏んでいる状態とでもいえばいいかな。声を張らない、でも伝わらなくちゃいけないという微妙なところです。あくまでも主人公は舞台の役者ですからね。立ち回りのような場面では、多少ハキハキ目でも大丈夫なんですけどね」。

このように、「何をしゃべるか」と同時に、「どのようにしゃべるのか」、声の出し方、テンポなどをメを台帳やノートに書き込んでいく。解説そのものの原稿よりもこの作業が非常に面白いとおくださんは語る。
「イヤホンはあくまでも舞台というメインを見るために聴くもの。でもお客さんにとって、舞台を観ながら解説を聴くというのは結構大変じゃないですか。どういう内容や、しゃべり方だったら気持ちよく聞いて貰えるのか。お客さんの状態を必死に想像しながら、まず前もって自分なりに「作る」んです。解説者によっては、舞台稽古を見ながら直接しゃべって録音するという方法の方もいる。でも僕は、テンポやしゃべり方まで前もって作りこんでおくというこの作業がとても好きですね」。
想像力を働かせ、解説原稿を片手に同時にしゃべり方のスタイルも作りこむ。それが舞台稽古やそして初日本番で、見事ピタッとはまったとき、「醍醐味ですね、この仕事の」とにこりと笑う。
これぞまさに職人技。なるほど歌舞伎はどの局面から見ても、プロの職人達が時間をかけて作り上げ練り上げてきたエンタメなのだと納得してしまう。

若い世代の解説者にも期待
「以前は、軽いカタカナや外来語を使って、時代ものなどの用語を言い換えたりしていたんですね。あえてそういう解説をしたかったこともあります。若かったしね(笑)。そんな軽薄な(!)解説者がいれば、初めて観ようとする若いお客さんにとっては入りやすくなることもあるだろうと。でも、その必然性が自分自身になくなってきたので最近はやらなくなりましたね」。
おくださん目下の悩みは、「下の世代」の解説者がなかなか定着しないということという。
「自分のフォームを作り上げるのに時間がかかるということもあるでしょう。また、積極的に自分から歌舞伎を観続けてきた人は、えてして、アンチ・イヤホンガイドとなりやすいようです。でももし今のガイド内容に疑問や不満があるのなら、それを超える解説をしてやろうという人が出てくればいいなと僕は思っています」。
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