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幼児期にも発症する睡眠時無呼吸症候群 寝る子は育つ:眠れないT君の話

睡眠時無呼吸症候群。主に成人の間で問題にされることの多かった、不眠の原因となる病気だが、これが幼児期にも発症するケースがある。そしてなんと、成長を阻んでしまうというのである……。

河崎 環

執筆者:河崎 環

子育てガイド


眠れない子

小学校3年生のとき、T君はお母さんにこう訴えた:「ぼく、寝ても寝た気がしないんだよね」

学校でも疲れやすく、家にいるときもずっとだるそうに横になっている。お母さんはT君が不眠症なのではないかと思い、大学病院の小児科に受診した。入院も含め、数日にわたる精密検査を経た末の診断名は、「睡眠時無呼吸症候群」だった。

睡眠時無呼吸症候群:Sleep Apnea Syndrome (SAS)。数年前から、主に成人の間で問題にされることの多かった病気である。口蓋や扁桃腺の形状、または肥満などが原因となって、気道に何らかの障害が出、睡眠中の呼吸が正常にできない。1時間に5回以上(成人の場合)無呼吸の状態に陥り、睡眠が分断される。

その結果、日中に居眠りしやすくなったり、疲れやすかったり、注意力が散漫になったり、さらには高血圧や狭心症、心筋梗塞などを引き起こすこともあったりと、影響は大きい。居眠り運転の一因ともなるため、数年前には北米でこの病気の認知度を上げるべく、キャンペーンも張られたほどだ。


成長が阻まれる

そしてこれが、幼児期にも発症するというのである。睡眠中の呼吸が止まる原因としては、アデノイドや扁桃腺が大きかったり、舌の構造が気道を塞ぎがちであったり、また、その舌を格納する顎が小さかったりということがあるようだ。

しかし無呼吸になったとしても、すぐに覚醒して呼吸を開始するため、直ちに死に至ったりということは少ない。乳幼児突然死症候群(SIDS)との関わりも論じられることがあるようだが、これはまだ断定されていない。

しかし、子供を育てる者としては見逃せない、重大な影響をもたらす。第一に、日中の注意力散漫を引き起こし、コンスタントな学校生活を難しくすることがある。そして第二に(これが大問題)、成長ホルモンの分泌を阻んでしまう。

T君は、現在小学校5年生になる。身長と体重の関係を見ると、5年生にしては太め。普段の生活では低カロリー食を心がけているのにも関わらず、だ。「基礎代謝が低いということらしいです」と、お母さんは言う。成長ホルモンというのは、睡眠中に分泌される。そして、これが正常に分泌されることで毎晩200キロカロリーが消費される。

「寝る子は育つ」というのは医学的に正しくて、正常な睡眠をとることで、子供は縦の方向に育つようになっているのだ。大学病院に検査のために入院した晩、T君の頭には器械が取り付けられ、睡眠中のホルモンの分泌を計測された。そしてやはり、ホルモンの分泌量は標準値を下回っていた。


治療法は?

治療法としては、上気道を拡張するためにアデノイドを切除するなどの外科的手段、また、足りない分の成長ホルモンの投与などがあるという。成長ホルモン投与は最近になってやっと保険治療の範囲内になったので、医療費もかなり楽になる、とT君のお母さんは言っている。

T君は時々眠そうにしている事があるが、原因が分かったのでお母さんも気が楽になった。T君は感受性が鋭く、ファンタジーを創るのが大の得意で、人の気持ちもすぐ分かる。だからそんなT君が寝ているときにしばしば呼吸が止まってしまうのも、個性の一つなんだと、周りのみんなは納得している。

睡眠時無呼吸症候群は、ただのいびきとして見逃されている事が多いが、社会生活に与える影響は大きい。もしあなたのお子さんにも、睡眠時に呼吸が止まっていることで説明されるようなできごとや症状の心当たりがあれば、一度この病気を疑ってみてもいいかもしれない。


乳幼児の睡眠時無呼吸症候群
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