男の靴・スニーカー/カジュアルシューズ

大技小技が冴える、マークブラドックの靴

名シュープロデューサー・長嶋正樹氏が手掛けるマークブラドックの靴は、「使われ方」を知り尽くしているからこそ発揮できる、あっと驚く工夫のオンパレードです。その最新作をたっぷりご覧いただきます!

飯野 高広

執筆者:飯野 高広

靴ガイド

普通に街歩きできるドライビングシューズ!

タウン・ドライビングシューズ
「ダグマークソン」レーベルで2008年春に発売されたヴァンプモカシンスタイルのタウン・ドライビングシューズです。ヒールとソールがしっかりあるのが、他社のものとの決定的な違いです。


日本におけるシュープロデューサーの第一人者・長嶋正樹氏。名前を直接は知らなくても、「三陽山長」や先月ご紹介した「トレーディングポスト」など、この人が立ち上げたブランドやお店は、紳士靴にちょっとでも興味がある方なら間違いなくご存じでしょう。今回はそんな長嶋氏がプロデュースする技アリブランド「マークブラドック(Mark Bladog)」の最新作を、たっぷりご覧いただくことにします!

まずは上の写真、鮮烈な赤色が目に飛び込む「ダグマークソン(Doug Markson)」レーベルのタウン・ドライビングシューズから。ヴァンプモカシンを現代的にロングノーズとしたスタイルは、このカテゴリーの正に王道。どんな車に乗っていようとも、これでアクセルを吹かせばスポーツカー的気分に浸れることは間違いありません。

このドライビングシューズでは、昨今主流のものとは決定的に異なる点があります。ズバリ、底面にアウトソールとヒールが付いているのです。この種の靴では底面にそれらを付けない代わりに、内側から幾十ものゴム突起が飛び出るだけのものをイメージしがちですよね? しかし、そうであるがゆえに底面の減りが圧倒的に早く、また重心が通常よりも後ろに感じて疲れやすいなど、これらは見た目こそ大変スポーティなものの、街履き兼用の靴としてはかなり無理のある構造であることが否めないのです。さらには底面の張り替えも実質不可能なので、ある程度以上ダメージが出てしまったら使い捨てにせざるを得ない、いささか経済的でない靴でもあります。

この靴ではアウトソールとヒールを土踏まず部で完全に分離させて取り付けることで、実用性・経済性と見た目の軽快感の両立という難題に応えたわけです。街履きとしても全く不都合のない構造となっていると同時に、アクセルやブレーキペダルへの食いつきを良くするため、アウトソールにはデッキシューズのスペリーソールと同様の細かい波状の切れ込みを施し、踵の後部には上述のゴム突起を残すなど、ドライビングシューズとしての性能の維持も、もちろん忘れていません。肝心の底付けもマッケイ製法ですから底の張り替えは容易ですし、ライニングもこの手の靴には珍しくフルレザー仕様なので、お手入れ次第では比較的長期間の愛用も可能ですよ。

何気ないけれど大変丁寧な、つま先のモカシン縫いにも注目したいところです。もちろん全て手縫い、しかも針穴を実際に縫う時初めて開けてゆく通称「オンザラスト(On The Last)」です。現在、大概のモカシン構造の靴は、針穴を革の裁断の時点で既に機械的かつ一斉に打ち抜く「プリパンチド(Pre Punched)」と呼ばれる方式を採りますが、前者の方が当然ながら技術的には難易度が遥かに上。しかも一針一針毎に革と相談しながら繊細な手加減で縫えるので、綺麗なだけでなく縫い口が開きにくい丈夫な構造にもなっているのです。

いやー、それにしてもこの赤、鮮烈です。前回のトレーディングポストの記事で、「メンズの『赤い靴』は、スニーカー系以外ではこのデッキシューズしか考えられませんよ!」って書いてしまったけど、しまった、ドライビングシューズなる一手もあったか(恥)……

【Doug Markson/タウン・ドライビングシューズ】
■色・素材 : 赤、それ以外には黒・茶・白・紺(全てキップ・スムースレザー)
■サイズ : 6 1/2~9 0.5サイズ刻み
■価格 : \26,250(税込み)
■販売店舗 : 大丸(東京店・札幌店・梅田店・神戸店・博多店)

アウトソールの溝
レザーのアウトソールに施された細かい波状の切れ込みです。ごくごく目立たないディテールですが、これがあるのとないのとでは、底面のグリップ力がまるで異なります。




次のページは、シンプルで活用範囲の広そうなレザースニーカーをご紹介!
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます