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2020年には500万台が走る? 燃料電池自動車の実現性は?

メタノールなどから水素を改質し、その水素を元に電気自動車を走らせるという燃料電池自動車。ガソリンエンジンの代替燃料として期待されている、この燃料電池車だが、一般的に普及するまでには、まだまだ時間がかかりそうだ。専門家の目から見た、燃料電池自動車についての現実的な問題点と、今後の可能性について迫る!

国沢 光宏

執筆者:国沢 光宏

車ガイド

最近よく燃料電池についての報道を見かける。「2003年に販売される」という記事さえあるほど。そんなことから「間もなく実用化される新世代の画期的なエネルギー」という認識を持っている方も多いのではなかろうか。つい先日、資源エネルギー庁長官が持っている『燃料電池実用化戦略研究会』なる私的研究会も「2020年までに燃料電池で走る自動車を500万台普及させる」という報告書をまとめていた。しかし専門家は「実現性が薄い」と評価している。以下、なぜ19年後に500万台の燃料電池車を走らせることは困難なのか、しっかり解説してみたい。

燃料電池の本体(スタックと呼ばれる)そのものについての技術的問題は、間もなく解決すると思う。2~3年後に『コージェネ』と呼ばれる家庭用の燃料電池が実用化されると予想されているほど。家庭用の燃料電池ならガスパイプで燃料を供給可能。燃料電池本体と改質機(都市ガスなどから水素を取り出す装置)の技術は比較的容易だ。しかし自動車に積むとなれば、そう簡単ではなくなる。決定的なネックになっている「水素をどう運ぶか?」については後述するとして、次なる問題が「クルマの重量をどうするか?」ということ。自動車は一般の家庭と違い、加速時に大量のエネルギーを必要とする。逆にブレーキ時はエネルギーの使用量ゼロ。

こういった変化に燃料電池は追いついていけない。そこでバッテリーを搭載し、ある程度電気を貯めておかないとダメ。つまり電気自動車を作り、そこに発電所として燃料電池を搭載するというクルマになる。ここまで書けば解ると思う。電気自動車自体、すごく高額だし重くなってしまうのだ。カローラクラスの電気自動車を考えると、必要最低限のバッテリーを積み(燃料電池はスイッチ入れてもすぐ発電しない。技術の進化を見込んで10分間後から発電するとしよう。その間、走れるバッテリーが必要)どんなに軽く作っても1200?。そいつに燃料電池本体と、メタノールかガソリンから水素を作る装置を載せれば、1500?にはなる。電気自動車が150万円。燃料電池と改質機150万円として300万円だ。重くて高価な燃料電池車がわずか19年で500万台?ちなみに年間50万台も販売して10年分です。

また純粋な水素を燃料としない場合、メタノールやガソリンから水素を作りながら走るしかない。その際、二酸化炭素を排出する。しかも熱効率(燃料から取り出せるエネルギー)は理論値で40%。ハイブリッドなら理論値35%くらいに達する上、車重は燃料電池車よりずっと軽く、排気ガスも大気レベルのクリーン度が可能。純水素を燃料にすれば熱効率70%くらいになるのだけれど、これは技術的に最も難しい。気体の状態だと量を運べず、液体ならマイナス250度以下に冷やさねばならないからだ。いずれも漏れて引火すれば爆発するという危険を伴う。そんなことから燃料電池車の実用化(量産されるという意味)は早くて30年後、というのが最近の定説である。
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