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住宅ローンの新しい保険【モーゲージ保険】(2ページ目)

アメリカでは一般的な住宅ローンに関する保険(住宅ローン信用保険:Mortgage Insurance = MI)の取扱が日本の一部の金融機関でもスタートしています。その保険はどのような内容であるか解説します。

村元 正明

執筆者:村元 正明

住宅にまつわるお金ガイド

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住宅ローンを借りる人にとってのメリット

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日本での住宅ローン信用保険の普及はこれからですが、いろいろなメリットもあるのでその内容を理解しておきましょう。
金融機関の立場から考えると、担保価値は住宅ローンの残高の50~60%といわれているので、担保物件を処分しても回収ができない関係で、住宅ローンの借入可能金額が物件価値の80%が上限としている金融機関があります。

しかし、この保険を活用することにより金融機関は回収不能リスクを軽減できるので、住宅ローンを借りる人は物件価格の100%まで借入が可能となります。たとえば、次の図のように、物件価格の15%にモーゲージ保険を掛けることによって、95%を住宅ローンとして組むことができるようになり、自己資金は5%で済むようになります。
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モーゲージ保険(MI)をつけた場合には、自己資金を減らすことができます。

また、万が一、住宅ローンを借りている人が返済不能となると、金融機関は担保物件を競売することにより、住宅ローンの残債を回収しようとします。一般的に住宅ローンの残債が競売価格よりも多くなるので、自宅を競売によって売却されたとしても、住宅ローン自体の返済が残る場合がほとんどです。よって、自宅を失ったあとも返済が続き、引越し後の家賃と返済により結局自己破産してしまうケースがほとんどです。しかし、この保険に加入していれば、金融機関は保険カバーの範囲まではモーゲージ保険により住宅ローンの残債を回収できることになるので、住宅ローンを借りた人も、担保物件を処分されたあとも返済が軽減されることになります。

住宅ローン信用保険と保証会社による信用保証制度の違い

ここでもう1度、アメリカで一般的な住宅ローン信用保険(モーゲージ保険)と日本で一般的な保証会社による信用保証制度の比較を行ってみます。

■住宅ローンを借りる人が支払う保証料
住宅ローン信用保険による保険料も、保証会社による信用保証制度による保証料も、住宅ローンを借りる人が負担する金額は、一般的には大きくは変わりません。

■住宅ローンの返済が不能となった場合
返済が不能となった場合、通常は保証会社に住宅ローンの求償権が移り、金融機関からではなく保証会社から返済を催促されることになり、最終的には担保物件である自宅が競売(或いは任意売却)にかけられることになります。

ここまでのところは、住宅ローン信用保険と保証会社による信用保証制度には大きな違いがありません。大きく違うのは、競売が終了したあとです。

通常は、(競売価格)<(住宅ローンの残債)となることが多く、(競売価格)=(住宅ローンの残債)×50~60%となることが多く、せっかく担保である自宅を処分したとしても、住宅ローンの返済自体は続ける必要があるのが実態です。

先に見たように、競売価格が700万円、住宅ローンの残高が811万円とすると、保証会社による信用保証制度では、差額の111万円については引き続き返済する必要があります。現実的には、自宅を失ったため、その後は賃貸の家賃を支払う必要が出てくるので、家計がとても苦しい状況になってしまいます。よって、自己破産する可能性がとても高まります。

一方、住宅ローン信用保険の場合は、競売後に残った住宅ローンの残高は、保険カバーの範囲内で保険会社から信用保証会社に対して保険金として支払われるので、住宅ローンの返済が不能になった人は返済が軽減されるため、競売後に自己破産する可能性は大幅に低下します。

住宅ローン信用保険は日本に普及するのか?

現在、住宅ローン信用保険を取扱っている保険会社は日本にまだ1社しかなく、住宅ローン信用保険を活用している金融機関も数社に限られます。

ただし、住宅ローン信用保険は金融機関にとっても回収不能リスクを軽減でき、住宅ローンを借りる人も、万が一、住宅ローンを返済できなくて担保物件である自宅が競売にかけられたあとの残債についての返済は確実に軽減されるというメリットがあるので、アメリカと同じように普及する可能性があります。実際に「大手行、地銀等の間で急速に浸透しつつある」(米国の大手モーゲージ保険会社ジェンワース・モーゲージ・インシュアランス日本支社)という話もあります。

これから住宅ローンを借りる予定の人は、金融機関が住宅ローン信用保険に加入しているかどうか確認してみることをお勧めします。
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